【寄稿】 特異な地形に位置する生活貯水池 西紀ダム―― 地元住民の期待を背負って兵庫県 丹波県民局 丹波土木事務所
1.はじめに
この滝の尻川は、ダムの位置する篠山市栗柄から丹波市春日町野瀬の竹田川合流点までの約3kmとなっていますが、大昔は、宮田川に合流し、篠山川、加古川を経て瀬戸内海へと注いでいました。ところが、約一億五千万年前の氷河期に河川争奪が行われ、丹波市側へと流れを変えて由良川に注ぐ現在の滝の尻川となり、宮田川との間に谷中分水界(こくちゅうぶんすいかい)が形成されたと考えられています。(谷中分水界:浸食の進行に伴って、隣接河川の形成する谷の中に奪う側の谷頭が入り込んでしまう分水界の形) この滝の尻川では、昭和58年災害で見られたように、ひとたび大雨が降れば下流域の丹波市はもとより、分水界を越えて篠山市の宮田川においても洪水が発生することがありました。また、平成2年や平成6年などには渇水被害にもみまわれ、流域に住まいの方々を随分と悩ませてきました。 このため、地域住民の大きな期待を背負い、抜本的な治水対策と上水や農水の安定した水源確保を目的として、平成6年度にダム建設事業に着手しました。 2.事業の経過
平成6年度の事業着手以降、地元の栗柄地区や共同事業者の篠山市などと、説明・協議・交渉を重ね平成12年3月に共同事業者である篠山市と基本協定を締結し、平成16年度までに用地買収を完了させることができました。
3.現在の状況
予定している11月からの試験湛水開始に向けて、ダム堤体建設工事、取水放流設備工事、管理設備工事の各受注者が堅実な連携で順調に作業を進めてきましたが、9月初めに累計300mmの豪雨を受け、更に約10日後の台風18号で、またも累計300mmの豪雨に襲われました。この2回の豪雨で工事に手戻り等が生じましたが、各受注者の懸命の復旧作業により、11月中に試験湛水が開始できる運びとなりました。
4.おわりに
平成6年度に事業着手して以来、既に19年が経過し、ようやく最終段階を迎えているところです。この間、地元の方々には多大なご迷惑をおかけしましたが、大きなトラブルなくここまで来られたのは、ダム建設に対する地元住民の期待の現れによるものでなかったかと考えています。竣工式を迎えるその日まで、関係機関や関連業者の協力を得ながら、更に気を引き締めて事業進捗に取り組んでいきたいと考えています。 |