建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2013年10月号〉

【連載シリーズ 第2回】

国交省の広報戦略

―― 大衆へのPRとイメージアップで建設業の再評価へ

国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課


3.建設産業における広報の現状

 担い手確保・育成に向けた取組により、社会保険等への未加入や賃金の低下をはじめとする処遇の問題を改善していくこととあわせて、若年就業者の確保に向けては、若者のものづくり離れや、建設業界に対する世の中一般のネガティブなイメージを払拭していくことが車の両輪として重要です。
 まずは、若者自身が建設業に魅力を感じてもらうようにすることが必要です。また、若者がその気になっても、若者の両親や周りの関係者が建設産業への誤解により、若者を説得して他産業に就職させてしまうといったことが現実に生じており、そのような若者の周りの関係者の理解が深まるようにすることが必要です。
 特に、建設業界のイメージについては、大手出版社の調査によると、建設業関係者と一般回答者の間に認識の大きなギャップがあることが明らかになっています。業界自体が世間一般からネガティブなイメージでとらえられ、更に建設産業に携わる人々も、ネガティブにとらえられて報道されており、一方でこのような状況に建設業界関係者は大きな不満を抱いている・・・といった構図が見受けられます。東日本大震災において、建設産業は、自ら被災しながらも、道路の啓開や早期の復旧に大きな役割を果たしましたが、こうした建設産業の貢献が、報道を通じて一般市民にはあまり伝わっておらず、必ずしも高く評価されていないために、建設産業のイメージ改善に結びついていません(図3参照)。

【図3】建設業界のイメージ調査結果

4.建設産業の魅力を発信するために

 今後取り組むべき方向
(1)基本的な考え方
@課題と反省
 建設産業における広報は、これまでも、各団体や企業がそれぞれ創意工夫をしながら様々な取組を実施してきたところであり、その取組については一定の効果があったものと考えられます。街中の工事現場の仮囲いに子ども達の絵やポスターがデザインされ、仮囲いの外から作業が見られるウィンドウを設置している現場を目にするなど、身近な生活の場での取組も行われています。
 しかしながら、建設産業に関心を示す若者が大きく減っていること、世間一般と建設業関係者との認識に大きなギャップがあることなどを踏まえると、これまでの多くの建設産業の広報は、情報を理解してほしいマスコミや世の中一般の受け手に届けるという意識が必ずしも十分ではなく、広報を出すことで満足してしまい、受け手に十分届いていなかったのではないかということをこの際省みることが求められるのではないでしょうか。大手マスコミに代表されるように、建設産業に対する世間のイメージは、依然としてあまり高いものではなく、むしろ厳しいものになっていることを直視して対応を考える必要があります。
 現在の認識ギャップに表れているように、各種発行・発信しているものが本当に読んでほしい人によく届いていないとすれば、もう一度基本に戻って、
1).現状分析
2).具体的な目標設定と伝える内容の設定
3).適切な方法による受け手への発信
4).成果の把握と目標達成度合いの評価
5).取組の改善
といった課題を踏まえた上で、一連の対応を戦略的広報として打ち出していくことが必要です。
A戦略的広報を進めるねらい
 新規高卒の入職者が、平成4年の3.4万人から平成23年には1.4万人へと60%減少しているほか、新規大卒・院卒等の入職者が2.9万人から1.8万人へと37%減少しており、工事現場を支える技能労働者・技術者の入職者が激減しています。また、学生への意識調査の結果や高校・大学における土木学科が大幅に減少してきていることなどからも、建設産業への就業が期待される学生に建設産業の魅力が伝わっておらず、学生の関心が建設産業に向けられていないことが危惧されます。また、昔ながらの3Kというイメージが払拭できていないのではないか、ということも懸念されます。
 一人前の技能労働者を養成するのには10年かかるとも言われる中で、推計では少なくとも今後10年程度以内に、技能労働者の不足が恒常化することが懸念されます。また、今後10年の技能労働者の退職者が52万人に上ると予想されていることからすれば、入職促進の積極的な推進は待ったなしです。
 そのためには、若年技能労働者の入職促進のために就労環境の改善に向けた様々な取組を行うことはもちろんですが、そういった取組と合わせて、入職が期待される高校の生徒や専門学校などの学生、あるいは高校や専門学校等の教員、そして生徒や学生の周りの保護者や地域の一般市民の方々が建設産業に魅力を感じ、従来のマイナスの受け止め方をプラスの理解へとつなげるような広報を戦略的に進めていくことが必要です。そのためには、“良好な関係づくりのために必要な双方向コミュニケーション”という広報の基本に立ち返り、取り組んでいくことが重要です。(第3回へ続く)


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