建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2013年10月号〉

【特集】 東北復興に向かう力強い槌音

仙台湾南部海岸堤防復旧事業

―― 沿岸地域の復興促進に大きな期待

 国土交通省 東北地方整備局 仙台河川国道事務所


写真-1 海岸被害状況(山元海岸)

1.はじめに

 平成23年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」による地震・津波で仙台湾南部海岸では全ての区間で津波が海岸堤防を越流し、押し寄せる津波や引き波によって堤防裏法尻の洗掘・裏法被覆工の流出などが発生、海岸堤防は全域で流出又は全半壊と甚大な被害を受けた。(写真-1、2)
 今回の災害復旧事業実施にあたっては、仙台湾南部海岸の被害の大きさに鑑み直轄工事区間に加え、宮城県管理区間についても宮城県知事からの要請を受け「東日本大震災による被害を受けた公共土木施設の災害復旧事業等に係る工事の国等による代行に関する法律」に基づき国土交通省直轄工事で実施することとなった。(図-1)
写真-2 海岸保全施設の被災状況

図-1 仙台湾南部海岸位置図

2.海岸堤防復旧の概要

 仙台湾南部海岸の海岸堤防復旧については、応急復旧工事及び本復旧工事の二段階で実施した。応急復旧工事は、背後地の復旧を妨げないよう、高潮(近年最大)への対応を平成23年6月末までに、台風などによる高波(近年最大)への対応を本格的な台風期となる平成23年8月末までに段階的に行い、発災後約半年間で約20kmの応急復旧を完了。その後、本復旧工事に着手し、仙台空港及び下水処理施設(重要公共施設)を保全する堤防約5kmを平成25年3月に完成。今後、平成27年度までを目標に仙台湾南部海岸約30kmの整備を完了させる。

3.海岸堤防復旧の高さ・構造の設定

 仙台湾南部海岸における海岸堤防の高さ・構造の検討にあたっては、「平成23年東北地方太平洋沖地震及び津波により被災した海岸堤防等の復旧に関する基本的な考え方」(H23.11.16「海岸における津波対策検討委員会」の提言)を基に検討を実施。
(1)海岸堤防復旧の高さの設定
 海岸堤防の高さについては、「比較的頻度の高い津波」及び「台風・低気圧に起因する波浪・暴風により発達する高波、高潮」に対して、海岸堤防等で防御することとし、計画堤防高をT.P.+7.2mに設定した。
(2)「粘り強い海岸堤防」
 海岸堤防の構造については、施設設計対象の津波高を超える巨大な津波が来襲し海岸堤防の天端を越流した場合でも、堤防の破壊・倒壊までの時間を少しでも長くし避難時間を確保、及び堤防が全壊に至る危険性を低減させる減災効果を目指して検討し、最終的に国土技術政策総合研究所による模型実験を基に、粘り強く効果を発揮する構造上の工夫を行っている。(図-2)

図-2 粘り強い海岸堤防構造概要図

@裏法被覆工の補強:表法被覆工と同等の厚み・重量の確保、ブロックの連結は法面上下方向にかみ合わせ構造(浮き上がり防止)
A天端被覆工の補強:表法被覆工と同等の厚み・重量の確保、空気・水抜き孔の設置
B法留コンクリートの補強(法面部からの連続化):最も弱点となる箇所を一体構造とすることで補強
C裏法尻保護:地盤の基礎処理による補強
 法面の勾配については被災の状況を調査し、最も被災の少なかった2割勾配とした。

4.おわりに

 東日本大震災により壊滅的な被害を受けた海岸堤防の復旧は、沿岸自治体の復興まちづくりにおいて、「多重防御」の第一線堤として位置づけられていることからも、今後の復興に大きな役割を果たすものであり、被災された地域の方々が安心して日々の生活を取り戻すためにも、一日も早い海岸堤防全区間の完成に向け更なる事業促進を図っていく。(写真-3)

写真-3 完成した海岸堤防(着工前の状況) 海岸堤防完成


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