建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2013年7月号〉

【ZOOM UP】

産・学・官一体で“水産・海洋都市構想”の実現へ

―― 地域の学術、教育、産業の発展と「海」と「科学」に触れ合う施設目指す

函館市 国際水産・海洋総合研究センター新築工事

外観完成イメージ

1.施設設置の背景および目的

 函館市は、周辺海域に対馬海流・リマン海流・親潮(千島海流)の3つの異なった海流が流れ込む地理的・自然的条件に恵まれた地域であり、また、水産・海洋に関する数多くの学術研究機関や関連産業が集積している。
 このような地域資源やポテンシャルの活用により「国際的な水産・海洋に関する学術研究拠点都市」を形成し、革新技術・新産業の創出による地域経済の活性化などを図るため、平成15年3月に「函館国際水産・海洋都市構想」を策定し、地域の産学官が一丸となって構想の推進に取り組んでいる。
 本センターは、この構想の実現に向けて、水産・海洋に関する先端的で独創性の高い研究開発を支援し、学術研究機関、研究者および企業の間の連携および交流を促進することで、地域の学術、教育、産業の発展を図ることを目的として設置するものである。

2.設計における基本的な考え方・特色

 本センターの建設地は敷地の三方を海に囲まれているため、水産・海洋に関する研究開発に必要となる新鮮な海水の確保が容易であり、また、隣接する岸壁には各研究機関が保有する調査研究船の接岸も可能なことから、水産・海洋に関する学術研究機関等の集積を図るうえで、極めて優れた条件を有している。
 このような敷地の環境条件と施設の設置目的を踏まえ、本センターの設計にあたっては、「国際的な水産・海洋に関する学術研究拠点都市」のシンボルとして、様々な学術研究機関や企業が集積・連携して取り組む多様な研究内容に対応できるよう、柔軟性と拡張性に富み、研究者同士の交流が促進される研究環境を提供するとともに、多くの市民や観光客が「海」と「科学」にふれあうことができるよう、見学・展示機能や体験学習機能なども併せ持った、広く開かれた新しい形の研究施設とすることを基本的なコンセプトとした。
 具体的な施設の特色としては、本センターは入居型の貸研究施設であり、学術研究機関や企業の入居スペースと、入居者が共同で利用する共用実験施設(生物・化学系ラボ、海水取水施設、飼育実験水槽室など)や共同利用施設(会議室、実習室など)のほか、一般の市民も利用可能な情報提供施設(ギャラリー・展示スペースなど)などを整備するものである。
 主要設備となる海水取水施設は、最大で毎時120トンの取水能力を持つことから、現状の試験研究規模から大きくスケールアップした、新鮮な海水を常時大量に利用した研究開発も可能になるものと期待され、また、容量300トンの大型実験水槽は、一般来館者も見学可能なエントランス部分の展示ロビーに面して設置することで、市民や観光客が本センターの研究活動内容や、水産・海洋に関する先端科学の一端にふれることができるよう配慮した。


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