【寄稿】肱川に安全で安心な暮らしを―― 国土交通省 四国地方整備局 鹿野川ダム改造事業国土交通省 四国地方整備局 山鳥坂ダム工事事務所
1.はじめに
しかしながら、肱川流域では近年においては平成7年7月洪水をはじめ、平成16年8月、平成23年9月などに家屋浸水や河川の氾濫など甚大な被害が発生しており、地域住民は早急な治水対策を強く望んでいます。 また、肱川の水は流域の水道水や農業用水等に利用され、日常生活に大きく寄与すると共に、大洲市の鵜飼い、カヌー駅伝等に代表されるように人々に潤いを与えています。しかし、昭和30年代以降の平水時の流量が減少していることや渇水時の流量が少ない時期もあり、利用水はもとよりアユをはじめとする動植物の生息や生育などの水環境対策が望まれています。 2.鹿野川ダム改造事業の目的
(治水) 大洲地点における戦後最大洪水5,000m3/sに対して既設ダム及び鹿野川ダム改造、山鳥坂ダムの建設で1,100m3/sの調節を行い、肱川下流全川に渡り洪水位の低下を図ります。 (環境) 既設ダム及び鹿野川ダム改造、山鳥坂ダムの建設を行い、動植物の生息・生育や良好な水質の確保など流水の正常な機能を維持するため、必要な流量として大洲地点において冬期以外は概ね6.5m3/s、冬期は概ね5.5m3/sを確保します。
3.鹿野川ダム改造事業のメニュー
・治水機能の増強:トンネル洪水吐きの新設、クレストゲートの改造 ・流水の正常な機能の維持:選択取水設備の設置 ・貯水池及び放流水の水質改善:曝気循環装置の設置 3.1.クレストゲートの改造
改造前のクレストゲートはゲート高が洪水時満水位より低い構造であり、洪水調節時にゲートを越水する恐れがあったため、ゲートの老朽化による更新に合わせ扉体を嵩上げし、洪水時満水位より高くして今までより細やかな洪水調節が行えるようにしました。(平成22年度完成)
3.2.曝気循環装置の設置
3.3.トンネル洪水吐きの新設
鹿野川ダムの治水機能を増強するためダムの貯水容量を再編し、発電容量、死水容量を廃止し一部を洪水調節容量に振り替え、併せて洪水調節の開始水位を下げることにより洪水調節容量を現在の約1.4倍に増強することとしています。しかし、鹿野川ダム天端に設置されている既設の洪水用ゲート(クレストゲート)は標高が高く、洪水調節を開始する水位まで下げても洪水調節容量増強の効果を発揮できないため、低い標高部にトンネル洪水吐きを新設することにより放流能力を上げ、洪水調節容量の効果的な活用を図るものです。
4.おわりに本事業は、平成27年度の完成に向けて無災害を目標に頑張って行きます。工事途中においては、ダム湖上の大規模な仮設構台や、大断面のトンネル掘削など種々の特徴がありますので、一度現場見学に来られますようお待ちしております。 |