建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2013年3月号〉

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学年毎のワークスペース併設良好な学習環境づくり

── 日射負荷を最小限とする建物配置と将来のレイアウト変更がしやすい計画

東京都財務局 都立第五商業高校校舎棟改築工事

完成イメージ(正面)

 東京都が新設する都立第五商業高校は、校舎を小さなボリュームに分節化し、ヒューマンスケールな景観を形成し、色彩や仕上材、デザインモチーフに自然素材を用い、緑豊かな周辺住宅街との調和を図るとともに、陰影の深い表情で、品格ある学校の顔を創出することを基本コンセプトとして建設されている。
 この基本理念に基づき、「省エネ東京仕様2007」の標準適用項目を着実に実行し、さらにオプション項目やその他の提案項目について、費用対効果を検証し、積極的に導入している。
 配置計画としては、各教室や体育施設は南側採光を基本とし、日射負荷の大きい西側からの採光を避けることにしている。また、階段と便所を隣接させ、各教室を連続配置し、教室間の間仕切り壁は乾式壁を採用することで、将来のレイアウト変更や改修に対応しやすい構造としている。特に授業環境の変化が発生しやすい商業科教室は3階に集約配置し、レイアウト変更等に対応しやすい計画としている。
 自然採光とともに、自然通風を確保するため、中庭や五商プロムナードをゆとりある間隔で配置し、同時に片廊下やアルコーブなどを配置することで、施設全体に風通しがよく、明るい空間が確保されている。南側の中廊下形式のエリアでも、廊下の突き当たりやアルコーブからの採光・通風が確保できる計画とし、さらには階段室を利用して階段室型チムニー(上部に換気口を設け、ドラフト効果による自然換気)も検討している。

完成イメージ(鳥瞰)
 外観デザインに当たっては、分節化とヒューマンスケール化を目指し「階を分ける、面を分ける」ことを基本に、2階-3階でデザインを切り分け、建物全体を低く見せるよう工夫されている。柱型、壁面のセットバックとセットフロントで、外面が分けられている。また、長大な面にはスケールの小さな部材を合わせ、面を細かく演出している。
 そして、正門のある東側に特徴的な表情をつくることで、学校の「顔」としている。校内への主動線となる通りは、「顔」のデザインを受継ぎ、学校のメインストリートと位置づけられている。特徴的な表情には、緩やかな曲面を用い、品格のある洗練された印象を持たせている。

 周辺は緑豊かな住宅街であるため、それに調和させるとともに、「木立ちと木漏れ日のモチーフ」を演出している。そこで、垂直方向を強調するデザインで、周囲の木立ちと同調させ、有孔素材やスリット採光を取入れ、木漏れ日のような効果を実現させている。また、配色はアースカラー系とし、グラウンドの土や周囲の樹木と馴染ませている。
 周辺の住環境に配慮するため、法55条の高さ制限内に、余裕を持っておさまる断面計画としている。そこで、建物高さは約12〜13mに抑え、セットバックすることで周辺と調和した計画とする。
 北側住宅地にも配慮し、北側に配置される弓道場・駐輪場は平屋とし、北側住宅地への日照を確保すしている。体育館棟と格技棟は、建物高さ12〜13m程度となるが、北面はGL+10m程度に統一し、北側住宅地に配慮した計画となっている。


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