建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2013年3月号〉

国土交通省 東北地方整備局 津軽ダム建設事業

【寄稿】「津軽白神湖」が人々の暮らしを守る

 国土交通省 東北地方整備局
 津軽ダム工事事務所

 所長 谷田 広樹

1.はじめに

 津軽ダムは、岩木川水系岩木川の青森県中津軽郡西目屋村に建設が進められている重力式コンクリートダムであり、60m直上流にある目屋ダム(昭和35年完成。建設省直轄施工)の再開発として位置づけられている。
 洪水調節、流水の正常な機能の維持、かんがい用水、水道用水及び工業用水の供給、発電を目的とし、総事業費1,620億円で平成28年度完成を目指して、平成24年度末現在、堤体打設量48万立方b(計画71.7万立方m。67%)の進捗となっている。(図-1、図-2参照)

図-1 津軽ダムの目的 図-2 津軽ダム計画概要

2.津軽ダム建設事業によるフロー効果

 地域の首長、経済界等からダム工事は東京の大手ゼネコンを潤すのみであり、地元には恩恵が全くなく、地域経済を上昇させる効果がない…等の声が強くあがっていた。この懸念、不安を払拭するため、ダム本体工事を契約した平成20年度から毎年度、地元への経済波及状況を検証するとともに、検証結果を地元首長等へ説明し、記者発表を行ってきている。
 具体的には、当該年度に津軽ダムから受注した全ての業者を対象に、資機材の調達先、調達額、職種毎の元請け、下請け人員の所在地、賃金等を把握、集計し、総支払額と地元(西目屋村、弘前市)への支払額を比較し、地元への波及効果として提示している。あわせて、地元会社(弁当屋、コンビニ等)へ経済効果の実感の聞き取り調査結果も提示している。
 平成23年度は総支払額が89億円(表の@)に対して、地元(西目屋村、弘前市)への支払額が37.4億円(表のB)、地元以外の会社が受注し地元から資機材調達、雇用等で9.9億円(表のE)、合わせて47.3億円(表のG)が西目屋村、弘前市の企業の売上向上効果となる(53%の地元還元)。平成20年度から平成23年度までの平均で53%と、支払額の半分以上が地元へ還元されていることがわかり、地元紙の社説欄でも、経済波及効果の大きさを評価するとともに必要な公共事業の津軽ダム建設推進を掲載して頂くなど、好意的に受け止められている。

3.津軽ダム完成後を見据えて

 津軽ダム建設のため179世帯の移転が必要であった。このうち61世帯は目屋ダム建設で一度移転をされ、津軽ダムで再度の移転という苦しい選択をして頂いた。先祖伝来の貴重な用地を提供して頂き、ダム建設推進のご協力に篤く感謝を申し上げたい。
 この移転により消滅した、西目屋村の2集落(砂子瀬、川原平)の農業と林業を複合的に行うことで生計をたてる山村民俗の文化を後世に伝えていく考えである。ダム建設工事最盛期の平成24年度に湖の名称を「津軽白神湖」と命名した。
 ダム完成後を見据え、水源地域の活性化、流域の連携と交流、流域の発展のため、早期に社会実験の手法を用いて具体の行動計画策定し活動を定着していく予定である。

図-3 津軽ダム・ダム湖名の統一ロゴ

4.おわりに

 津軽ダム建設を早期に完成させ、幾久しく「津軽白神湖」が、大雨の時には雨水を貯めて洪水被害の恐れをなくし、日照りが続く時には水田を潤し、作柄の心配なく安心して暮らせる湖となることを目指して努力していきたい。



堤体コンクリート打設計画(H24.4.26撮影)


HOME