建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2013年3月号〉

特集「東京外環の現在」

【寄稿】首都圏の交通混雑を緩和し、円滑な道路ネットワークを構築する「みどりの道」
 ―― 東京外かく環状道路(千葉県区間)の整備に全力

 国土交通省 関東地方整備局
 首都国道事務所

 所長 山田 哲也

外環全体図
 首都国道事務所は、一般国道6号、14号、298号(東京外かく環状道路の千葉県区間)、357号(東京湾岸道路)の改築事業を推進しています。その中から今回は、首都圏を変える「3環状」の一つである「東京外かく環状道路」(外環)を中心に、当事務所の取り組みをご紹介します。
 外環は、政府の「都市再生プロジェクト」の中で、首都圏における国際交流と物流拠点機能の強化や、新たな都市拠点の形成を通じた都市構造の再編の促進を図るものとして位置づけられるなど、大変重要な路線となっています。
 都心から半径約15kmの地域を環状に結ぶ幹線道路で、全体延長約85kmのうち、東京都世田谷区から千葉県市川市に至る約67kmが都市計画決定されています。
 このうち埼玉県和光市から千葉県市川市までの約44kmの区間については、国道部4車線(国道298号)と、高速道路部4車線(自動車専用道路)を併設する計画となっています。
 都心部から伸びる放射道路を相互に連絡することで、都心方向に集中する交通を分散するとともに、都市部の通過交通をバイパスさせるなど、首都圏の渋滞緩和に大きな役割を果たす道路です。
 当事務所では、このうち千葉県側の松戸市小山から市川市高谷に至る延長約12.1kmの区間をネクスコ東日本 関東支社 千葉工事事務所とともに担当しており、平成27年度の開通を目標に整備を進めています。この地域は南北方向へアクセスする道路が少なく、慢性的な渋滞が発生しています。また、渋滞を避けようとする車が生活道路などに入り込んで、事故を増加させるなど、交通環境の悪化が問題となっています。外環はこれらの問題を解消する松戸市・市川市の中心的な道路としての役割が期待されています。
 千葉県区間は当初高架構造で計画されていましたが、平成8年の都市計画変更により半地下構造となり、あわせて環境施設帯も設置されることとなりました。

矢切函渠工 現場写真

利便性の向上、交通安全度と防災機能を高め、ゆとりある都市景観を形成

 外環整備によって、各地への所要時間が大幅に短縮され、行動範囲も広がります。例えば、市川市役所から埼玉スタジアムまでの移動時間は、現在75分を要しているのが35分に短縮、松戸市役所から東京ディズニーリゾートまでは、70分から40分へと短縮されると試算しています。
 また、生活道路の安全性向上も期待されます。これまで、生活道路にまで進入していた通過車両が外環へルート変更されるので、交通事故の減少が期待されます。そして、外環の持つ広い道路空間そのものが、地震などの災害時の避難路や緊急輸送路、火災の延焼防止など防災空間として機能するので、地域の安全性の向上に貢献します。
 道路の地下部分には、電気、電話、ガス、上下水道などの「ライフライン」を収容する空間を設けるため、広い自転車や歩行者道を確保することが可能となり、歩きやすく、まち並も美しく生まれ変わります。さらに道路沿線には植樹帯を設けるため、みどり豊かな道路空間を創造します。

地域とともに緑地保全を考え斜面林を復元

地元との連携によって復元される矢切斜面林
 外環整備に当たっては、自然保護にも取り組んでおり、例えば松戸市区間の矢切斜面林では、工事により一部撤去された斜面林の環境保全方法や、蓋掛(ふたかけ)構造部の地域の取り組み方法について、地域の皆様と意見交換会を行いました。地元との連携により、斜面林の復元はスムーズに進行するものと期待しています。
 さらに、矢切斜面林の復元や蓋掛構造部の上部には、地域の皆様が利用できる森や広場を計画しており、現在、松戸市や地域の皆様とともに検討中です。
 また、地域住民のため「外環相談所」も松戸市内に1箇所、市川市内に2箇所設置しており、毎日市民の皆様に利用して頂いています。

外環以外の取り組み

 外環の他にも、当事務所は国道357号新木場地区の立体化を担当しています。この立体化は東京湾岸道路の慢性的な交通渋滞を緩和することを目的としており、平成25年度の完成を目標に整備を進めています。
 また、国道6号では、葛飾区新宿2丁目から葛飾区金町6丁目間までの延長約2.1kmの拡幅・立体事業を担当しています。金町地区(約1.2km)は立体事業としてすでに先行整備を行っていますが、まだ4車線のままとなっている新宿地区約0.9kmについても、上下線とも慢性的な交通渋滞が発生しており、現在拡幅・立体化に向けて事業に取り組んでいます。
 さらに、国道14号については、亀戸小松川立体事業を担当しています。これは国道14号の江東区から江戸川区の交通混雑の緩和、交通安全の確保、沿道環境の改善を目的とした江東区亀戸9丁目から江戸川区大杉1丁目までの延長約2.5kmの道路拡幅等を行うものです。亀戸小松川立体事業のうち、当事務所は江戸川区松島1丁目から大杉1丁目間の区間(延長約1.2km)を担当しています。


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