建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2013年1月号〉

新政権下での新年度予算編成

── 北海道価値を最大限に活かした政策を展開


北海道知事
 高橋はるみ 氏


──いよいよ政権交代となり、政府の政策も大きく変化しました。北海道の財政や政策にも少なからず影響はあるものと思われますが、新年度予算はどのような政策が反映されますか
高橋 平成25年度の道の予算編成は、昨年3月に策定した『「新たな行財政改革の取組み」(改訂版)後半期(H24〜H26)の取組み』に基づき、持続可能な財政基盤の確立に向け、確かな道筋をつける取り組みを着実に推進していくことを基本に編成することにしています。
 そこで歳入面では、国の動向に十分留意しつつ道税収入の確保や、新たな財産収入の確保に努め、歳出面においては本道が抱える構造的・緊急的課題に対応するため、より効果的な施策体系の確立、政策評価と連動した継続事業の徹底した見直しを行うなど、限りある財源と人的資源を効率的に配分する「選択と集中」に最大限努めることとしています。
 次に政策についてですが、我が国は厳しい経済・財政状況の下で、急がれる震災からの復興、新たなエネルギーの模索など、多岐に渡る課題を抱えています。北海道においても加速する人口減少・少子高齢化や公共投資の大幅な削減といった社会構造的な問題を抱えながら、厳しい雇用情勢や地域経済に影響の大きいTPP問題や、総合的な防災体制への対応など、様々な緊急課題に直面しています。
 このように極めて厳しい状況にある北海道が、自立型経済に転換し、「安全・安心」な社会づくりを目指すためには、食や自然といった北海道の優位性すなわち北海道価値を最大限に活用していくことが、何より重要と考えています。
──どのように形にしていくかが問題ですね
高橋 今はまだ小さいかもしれませんが、私は大きな可能性を秘めた『地域の新たな「芽」』にも注目しています。北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区という「エンジン」を活かした食クラスターの推進や、広大な土地を利用したメガソーラーの立地、冷涼な気候を活かしたデータセンターの設置など、これらの「芽」を大事に育て、北海道価値をさらに高めてまいります。
 このため平成25年度は、3本柱を軸に重点政策に取り組んでいきます。1つ目は北海道の強みである食や自然を活かした、食産業立国に向けた基盤強化や魅力あふれる観光の創造など『北海道価値の戦略的活用による「地域経済」の活性化』です。
 2つ目は豊富な再生可能エネルギーを活用した、北海道ならではのエネルギーの地産地消や環境との調和を目指した新しいライフスタイルの確立など、『持続可能な「環境先進地」北海道の実現』です。
 そして、3つ目は災害に強いまちづくりを目指した防災体制の強化や、地域を支える医療対策の推進など『次代につなぐ「安全・安心」実感社会の構築』です。
 これらの政策を力強く展開していくことで、この厳しい難局を乗り越え、北海道の確かな未来へつなげていけるよう、全力で取り組んでいく決意です。
──太平洋沿岸部の津波予想は、地元関係者にとって大きな衝撃となりましたが、有効な対策はありますか
高橋 東日本大震災を踏まえて昨年6月に公表した太平洋沿岸の津波浸水予測図の内容は、これまでの想定を大幅に上回るものとなりました。今回想定したような最大クラスの津波を、全て施設整備などのハード対策で防ぐことは困難ですから、避難を軸にした総合的な対策が必要です。
 このため、市町村における津波避難計画の策定、津波ハザードマップの作成などの対策を推進するため、道では浸水予測図の説明会、避難計画策定のための研修を実施するなどして、市町村の取り組みを支援してきたところです。
 また、さらに総合的な防災対策をソフト・ハードの両面から推進するため、道の関係部局が連携して市町村の相談支援に当たる「地震・津波等災害対策推進地方本部」を各振興局に設置し、地域の状況に応じた防災対策の推進に向けて取り組んでいます。
 なお、太平洋沿岸に次いで、現在は日本海沿岸の津波浸水予測についても点検・見直しを進めているところです。
──昨年夏に続き、今冬も節電が求められ、本格的な電源対策が求められていますが、泊原発の再開の展望と、事故時の対策は万全ですか
高橋 泊発電所を含め、今後の原子力発電所の安全確保については、原子力規制委員会において、何よりも安全性を最優先に、その専門的な知見に基づき、それぞれの原発ごとに厳正な審査が行われるべきものと考えています。
 道としては泊発電所についても、まずはこの委員会において、その安全性をしっかり審査、確認していただきたいと考えています。
──デフレ不況があまりにも長引いており、北海道は沖縄に次いで生活保護受給者が多く、しかも最低賃金が支給額を下回るなど、道民の勤労意欲に悪影響をもたらせる状況も見られます。道としてできる景気対策はありますか
高橋 道内の景気は、全体としては概ね横ばいの動きとなっているものの、生産活動は弱含みの傾向にあり、失業率も高止まりで推移しているほか、観光などにおいては尖閣諸島問題の影響が見られるなど、景気の先行きは未だ不透明な状況にあります。
 全国的に見ても11月に内閣が発表した7-9月の国内総生産・速報値でも、年率換算でマイナス3.5%となるなど、内需、外需ともに悪化している状況です。
 道ではこうした状況を踏まえ、全国知事会などを通じ、中小企業の振興や雇用確保に配慮した追加対策の実施を国に要望したところで、引き続き本道の厳しい経済・雇用情勢に対処するため、公共事業などの早期発注や中小企業者などに対する受注機会の確保、国の経済対策を踏まえた対応など、道内経済の活性化に向けて、切れ目なく取り組んでいく考えです。
 特に昨年末は衆議院解散・総選挙もあったところで、25年度予算を含めその負の影響が生じないよう、国の動きも注視しながら必要な要請を引き続き行っていきます。



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