建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2012年12月号〉

利尻島の桃岩トンネルは平成29年の開通予定

── 映画「北のカナリヤたち」で冬の観光に期待【後編】

宗谷総合振興局(建設管理部担当)
副局長 宮�ｱ 義彦 氏

──その後22年に全道の沿岸整備の海岸担当課長に就任しましたね

宮�ｱ　海岸事業については全道から要望が多いのですが、予算規模が小さくすべてに対応できず、費用対効果の問題もあるので、人家や工作物のある箇所が優先されます。それでも農地であれば農業、道路であれば道路の分野で独自に対策するよう分散するしかありませんでした。そのため、今後に向けては北海道独自の費用対効果の基準作りを目指しています。

──その後23年は、道開発局の苫小牧港湾事務所長で出向しましたね

宮�ｱ　苫小牧港は全道で最大規模の港湾で、東北震災後は東北管内の貨物が集中したので、昨年は活況となっていました。震災を受けて、今までは一つしかなかった耐震岸壁も二つ目を整備しています。

──宗谷管内には稚内港もありますが、今後の展望は

宮�ｱ　稚内港は北の玄関口として、フェリー埠頭が更新され、公園も整備してイベントが行われるなど活発です。特にヨーロッパから北極海を渡ってカムチャッカへ至る北極海航路には期待が寄せられています。これによってヨーロッパが近くなるので、その航路の利活用が始まれば、今までスエズ運河を廻っていた船舶が、稚内と接続する北極海航路も利用されるようになります。すでに試験運行が一度は行われており、今後の温暖化で氷が減少していけば、定期航路が確保できます。

▲利尻ふれあいサイクリング

──宗谷管内の利尻島、礼文島は、映画「北のカナリヤたち」のロケ地に選ばれたので、今後の波及効果も期待できますね

宮�ｱ　私もロケの最終日には見物に行きました。11月3日に封切りになりますが、こちらでは10月7日に先行上映されました。先行上映には、主演女優の吉永小百合さんの舞台挨拶があったので鑑賞券はくじ引きでした。撮影は冬期間に行われましたが、撮影のセットなどはそのまま残っていますから、それを利用した冬の観光が期待されます。

──島の観光としてのインパクトは大きいですね。観光インフラもさらに必要になるのでは

宮�ｱ　利尻島の桃岩の裏側では落石が頻発しており、危険なのでトンネルを通すことになりました。これまでは6kmだった道のりが、1.5kmと4分の1に短縮されるので、歩いて島の裏側へ行けるようになり、大きな効果が期待できます。これまでは曲がりくねったルートで、しかも上り坂もあるので、人が歩いている状況は見られませんでした。
　開通は29年の予定で、工事は両サイドから掘削すれば早く終わりますが、裏側には敷地がないために片側掘削で進めるので、完成までには時間はかかります。

──その他、土木技術者として、印象に残っていることはありますか

宮�ｱ　この管内で最も要望があるのは、施設の維持管理や除雪で、4月には猛吹雪により、すべての道路が通行止めとなって陸の孤島となりました。私が着任して早々のことで、その時に酪農家からは、搾乳した生乳を工場へ搬送できないので早く開通して欲しいと言われました。
　また、オホーツク側は漁港の町が多いのですが、漂砂で埋まって出漁できなくなるので、常に浚渫が必要とされています。オホーツクのホタテは、昨年から生産が伸びていますから、特にメンテナンスへの要望は強いのです。その要望に応える体制を確保するためにも、きちんと予算確保していきたいものです。

▲礼文北のカナリア撮影現場