建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2012年11月号〉

学生時代は土木作業の現場でアルバイト

── 民間のトンネル現場を経験後道庁の技術者に【前編】

宗谷総合振興局(建設管理部担当)
副局長 宮�ｱ 義彦 氏

──土木との最初の接点は

宮�ｱ　私が北大に入学したのは昭和50年で、54年に卒業しました。2回生の後半から、教養学部より工学部に学部移行し、卒業論文は土質をテーマとするものでした。家業は農家でしたが、近所では河川工事や道路工事をよく目にしており、砂利道が突然に舗装道路へ変身するなど、当時は画期的だと感じました。建設重機も興味深く、学生時代はアルバイトで土木作業ばかりに従事していました。

──行政職を選択した理由は

宮�ｱ　一度は間組に入社し、横浜支店に赴任しましたが、当時の世相は公務員志向が主流でした。半年間、勤務した後に前年度に受験した採用試験の結果により、道へ入庁することになりました。

──間組ではどんな現場を経験しましたか

宮�ｱ　伊東温泉のトンネル現場を経験しました。建設が始まって2年目の頃で、飯場に泊まり込みでした。大規模な工事で、間組のスタッフは10人ほどでしたが、下請けや孫請け企業の人員も含めると100人以上でした。温泉地ですから、温泉を飯場に引いていたり、夕食もけっこう豪勢で毎晩刺身が出ていました。収入も道職員の3倍以上という時代でした。
　親の意向で早々とUターンすることになりました。その当時は、道では人員が不足していたため、民間から招聘しており、親元にも連絡があったことから、親としては私を地元に戻す好機なので、戻れるならすぐに戻るように言われました。

▲今年から通年通行を開始した道道稚内猿払線

──入庁して最初に着任したポストは

宮�ｱ　昭和54年10月に入庁し、旧札幌土木現業所の事業課に着任して、河川整備を担当しましたが、56年に石狩川などが氾濫し、札幌市の新川方面や茨戸方面で大水害が発生しました。今後もその規模の水害が発生するかどうかは分かりませんが、札幌市内の中小河川は、まだゲリラ豪雨には対応できないので不安があります。

──印象深い現場はありますか

宮�ｱ　江別市の早苗別川で、放水路を掘削する事業現場を初めて担当しました。地質が泥炭だったので、掘削しても滑って河川がなくなってしまうので、事前にセメントで固めるなど地盤改良を施す工法を採用していました。地層が30mにも及ぶ泥炭層ですから、杭打ちをしても、杭が沈んでいく状況だったのです。
　この早苗別川も56年に氾濫しましたが、放水路が完成し、国が千歳川にポンプ場を整備して治まりました。その当時はほとんどが農業用のポンプで、河川用のポンプは無かった時代です。この結果、周囲は住宅街へと変化しました。

──その後、平成17年に稚内土木現業所の企画調節室長に就任しましたね

宮�ｱ　その頃は建設業の経営効率化が業務課題でした。行政側の設計変更の後れや技術者の質の低下などの問題によって、企業が効率よく収益を上げられない状況だったので、その対策が求められていました。企業側の現場代理人は、遠慮してなかなか問題点を言わないので、クレームはできるだけ伝えてもらうことにし、解決するように努力した結果、改善に向かいました。この取り組みは建設専門誌でも取り上げられ、北海道は全国でもトップの評価でした。

──この稚内管内の土木の特徴は

宮�ｱ　漁港整備では、日本海側は冬場には荒れるので施工できず、オホーツク海側も流氷が着岸するので、夏場施工に限定されます。今年は工事も順調に推移していますが、台風などの影響で荒れると工期もかなりずれ込む可能性もあり、大変なことになります。

──最北端という地勢的な特徴はありますか

宮�ｱ　稚内建設協会が、ワッコルという企業体を組織して、ロシアに技術支援しています。また、海外での受注や異業種進出にも意欲的に取り組んでいます。（以下次号）

▲南浜湿原から見る利尻富士