建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2012年11月号〉

土木の日に寄せて ――北海道の安全・安心な国土づくり


 国土交通省 北海道開発局

 局長 関 博之
 せき・ひろゆき
 出身(本籍) 北海道
 昭和30年 2月22日生
 昭和53年 3月 北海道大学工学部卒業
 国家公務員上級甲種(土木)
 昭和53年 4月 北海道開発庁採用
 平成 元年 6月 同 北海道開発局留萌開発建設部留萌ダム建設事業所長
 平成 3年 6月 同 北海道開発局石狩川開発建設部計画課長
 平成 5年 4月 同 北海道開発局建設部河川計画課長補佐
 平成 8年 7月 同 北海道開発局建設部河川計画課流域対策官
 平成 9年 6月 同 北海道開発局石狩川開発建設部千歳川放水路建設事務所長
 平成10年 6月 同 北海道開発局建設部河川計画課河川企画官
 平成11年 7月 同 北海道開発局網走開発建設部次長
 平成13年 1月 国土交通省北海道局水政課企画官
 平成14年 4月 同 北海道開発局建設部河川管理課長
 平成15年 8月 同 東北地方整備局岩手河川国道事務所長
 平成17年 8月 同 北海道開発局建設部河川計画課長
 平成19年 10月 同 北海道局水政課長
 平成21年 7月 同 東北地方整備局副局長
 平成22年 8月 同 大臣官房審議官(北海道局)
 平成24年 9月 同 北海道開発局長

 北海道は、地理的、地形的、気象的条件等から、古来より地震・津波、火山及び台風、水害、土砂災害、豪雪等の多くの災害に見舞われており、これらの災害に対処しつつ現在の生活と産業・経済活動を築いてきました。今後もこれら活動を充実・発展させていくためには、東日本大震災の教訓や近年の豪雨・豪雪等に関する知見を踏まえ、災害に対する各般の対応を講じていく必要があります。

大災害の教訓

 東日本大震災は、既往の設計値を上回る規模の津波により、広い範囲で甚大な被害が生ずるとともに、首都圏をはじめ、震源から離れた地域での交通機関等の都市機能障害、地盤液状化、超高層ビルへの地震動の影響が発生しています。一方で、橋の倒壊など揺れによる構造物の甚大な被害は、平成7年兵庫県南部地震に比較すると少ない点が指摘されています。防災対策上の総合的な視点からは、「災害を完全に防止する」という考え方から、「人命第一・被害最小化」へ転換し、「減災」の考え方を取り入れること、設計値を上回る外力に対し、粘り強い構造を取り入れ、技術の限界を明確にすること、ユーザーの視点を踏まえた災害の予測・警報を行うことなどの必要性がクローズアップされています。

北海道の災害:豪雨

▲南利根別川周辺浸水状況(岩見沢市)
 近年、我が国では、時間100mmを越える豪雨が増加傾向にあり、稠密な土地利用を背景に、浸水被害や土砂災害が繰り返し発生しています。
北海道においても、気候変動による集中豪雨の増加や活火山、地震・津波など自然災害のリスクを常に抱えており、昨年9月には、台風12号や前線の影響により本道各地で豪雨災害に見舞われました。本年9月の岩見沢市を中心とした集中豪雨による浸水被害も記憶に新しいところです。
 これらの自然災害に備えるために、治水対策を着実に推進するとともに、日頃から自治体等と連携した防災訓練、防災情報ネットワークの強化等に取り組んで参ります。具体的には、千歳川流域の治水対策や夕張シューパロダムの建設等の根幹的な治水施設の整備を引き続き進めるとともに、今年度から北海道の社会、経済の中枢を形成する道央地域や食料供給基地である空知地方を洪水被害から守るため北村遊水地の整備に着手します。
 ソフト対策についても新たな取り組みをはじめています。今春から、NHKと連携し地上デジタル放送の画面上で降水量や河川水位の情報を提供しています。さらに、ゲリラ豪雨などに対応するため、既存のレーダーと比較し高分解能の気象レーダー(XRAIN)の整備を進めています。

北海道の災害:豪雪

▲岩見沢市の豪雪の状況
 昨冬は、石狩、空知、渡島等を中心に全道の広い範囲で積雪深が平年値を上回る状況で、特に岩見沢市内では、市内中心部に降雪が集中し、市民生活を直撃しました。昨年12月中旬の大雪以降、岩見沢市内の国道12号では、連続した新雪除雪や、降雪後の拡幅除雪と運搬排雪により、車道幅員を確保しました。こうした昨冬の大雪では、北海道開発局から北海道や市町村へリエゾンを派遣し、除雪状況や通行止状況に関して、きめ細やかに情報交換を実施し、また、関係する道路管理者が連携体制を確認する会議の開催や、雪捨場の相互利用・新たな雪捨場の提供、除雪機械の貸出し等を緊密な連携により迅速に実施しました。

北海道の災害:斜面崩壊

 昨冬は、豪雪だけでなく、例年に比べ寒冷でしたが、4月中旬以降、急激な気温上昇による融雪と降雨により、4月中旬に後志利別川で地滑りが発生し、4月末に国道239号苫前町の霧立峠で地滑りが、5月上旬に国道230号札幌市定山渓の中山峠で地滑りと盛土崩壊が発生しました。道南と道央圏を結ぶ大動脈である中山峠では、建設機械を集中投入して24時間体制での工事実施により、被災から19日間で片側交互通行を開始し、その3日後に対面通行を開始しました。霧立峠、中山峠とも、再度災害を防止するため、現在も復旧作業は継続しておりますが、このような大規模な自然災害に備えるためにも、融雪期や大雨時の早期事象発見に努めるとともに、災害が発生した際には、速やかな復旧に努めて参ります。
▲国道239号 霧立峠の地滑り

安全・安心な国土づくり

 ▲道路ネットワークの段階的啓開ルート(例)
 北海道開発局では、総合的な治水対策や安全で信頼性の高い道路ネットワークの構築、港湾空港施設の耐震化、積雪寒冷地特有の災害への対応など、東日本大震災の教訓を踏まえて災害に強い社会資本整備を引き続き推進していきます。
 また、災害が発生した場合においても国民生活や経済社会活動に深刻な影響を生じさせないためには、ハード・ソフトの様々な対策を組み合わせて被害を最小化する「減災」の考え方に基づく対策を進めていくことが必要です。このため社会資本整備と合わせて、自助・共助・公助のバランスの取れた地域防災力の強化を図る取組として、市町村長との意見交換会(トップセミナー)や住民参加の防災訓練の実施など、自治体との連携強化と地域住民の防災意識を高める取り組みを積極的に推進していきます。
 さらに、災害発生時において、組織が有する現場力、統合力、即応力を最大限発揮するための危機管理体制の構築などに重点的に取り組んでいます。具体的には、災害対応訓練の高度化や緊急災害対策派遣隊(TEC-FORCE)の隊員増強等に取り組んでいます。
 安全・安心な国土づくりを進めるためには、自治体、地域住民、産学官の関係機関など多くの主体による一層の連携強化が不可欠です。関係各位のご協力を引き続きお願いいたします。

災害対 応訓練


11月18日は「土木の日」
北海道の土木事業に貢献します
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