建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2012年9月号〉

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首都・東京都の東部地区の医療拠点「墨東病院」が増築

── 感染症など高度救急医療センターとして機能を充実

東京都立墨東病院増築及び改修工事

▲外観完成イメージ

 東京都立墨東病院の増築及び改修工事が進められている。墨東病院は区東部医療圏において最大規模の都立総合病院で、三次救急医療を含む「東京ER・墨東」や周産期医療など複数のセンター的医療機能を担い、区東部保健医療圏を中心とする区部を対象に、基幹的な医療機関としての役割を果たしている。また、重点医療としては、感染症医療、難病医療を始めとする「行政的」医療を担ってきた。
 しかし、さらに感染症医療、救急医療などのセンター的医療機能の充実・強化を図るとともに、これを補完する総合診療基盤の充実を図ることで、区部における医療ニーズに応え、高度・専門的な医療の提供が可能となるよう、機能の高度化を目指して施設整備されることとなった。
 事業計画としては、医療機能の的確な拡充に向けて、『地域から選ばれる病院』を目指し、十分な感染症対応機能を備えるとともに、地域ニーズ・将来ニーズに合致する医療機能・規模を確保する。
 病院収支の徹底改善のため、『自己収支の高い病院』を目指し、病棟再編など既存の医療資源の抜本的な見直しも視野に、全体収益を最大化・費用を最小化させる。  地域医療連携の強化のため、地域医療機関との役割分担を明確化し、限られた資源で新興感染症等パンデミックにも対応可能な強靭な地域医療体制を確立することを目指している。
 これらの課題を改善するため、「第二次都立病院改革実行プログラム」に基づき、再編整備と医療機能の強化を、施設整備の中心的なコンセプトとしている。また「東京都地域医療再生計画」に準じた「新型インフルエンザ等の新興感染症に対する医療」として整備される。
 そこで施設の構成と概要は、新興感染症の発生や感染症の大規模発生(パンデミック)など、高まる感染症への脅威に備えるため、入院・外来ともに他機能と『独立』させる。
 感染症外来を設置し、第一種(2床)・第二種感染症指定病床(8床)、感染症緊急対応病床(30床)、陰圧対応の腎センター(人工透析室)、救命救急病床(一部)、パンデミック時に病床を設置できるフリースペースという構成になる。
 また、ERの特性を踏まえた診療体制の充実を図るため、「トリアージ機能の向上」、『区東部保健医療圏最後のとりで』として、救急診療の受け入れ能力の強化のため、救命救急特定集中治療病床の強化(6床⇒12床)、脳卒中ケアユニット(SCU)の新設(6床)、ハイケアユニット(HCU)の新設(20床)、CCU特定集中治療病床の増床(6床)、高気圧酸素治療室が設置される。
 総合医療センターとしての診療基盤の強化に向けては、『区東部基幹病院』として、高齢化や医療需要の増大に対応できるよう、東京都認定がん診療病院の認定取得、外来化学療法の段階的拡充(4床⇒(10床)⇒20床)、腎センターの段階的拡充(8床⇒(20床)⇒30床)、日帰り手術センターの開設、ハイケアユニット(HCU)の新設(20床)などが整備される。
 この計画に基づき設計に当たっては、外観は既存の診療棟及び病棟の統一された外観デザイン・使用材料を継承し、まとまりのあるビル群を形成することを基本としつつ、周辺環境と調和し景観に配慮したデザインとした。
 6階から12階までの看護師宿舎部分は、宿舎や対面するマンションの居住環境(プライバシー確保)を配慮し、また道路斜線規制と併せて高層部の圧迫感を低減させるため、北側にセットバックさせる。
 外壁は5階までの低層部と、6階以上の高層部の仕上げに変化を持たせ、ボリュームを二分化することにより威圧感を低減し、ヒューマンスケールなボリューム感に抑えた。
 外壁の色彩は、基本的に景観条例に示される色調とするが、ER玄関等の庇幕板は、患者にとってのわかりやすさに配慮し、視認性を高めることができるカラーとした。  断面計画としては、増築棟は1階から5階の病院用途部分で、診療棟及び病棟と合計7本の渡り廊下で接続する。地下階も含め、診療棟と病棟は同じ階高となり、増築棟もバリアフリーを徹底し、渡り廊下がスロープにならないよう、原則として既存2棟と同じ階高とする。
 5階感染症病棟は、診療棟側にも病室を配置するが、この診療棟を改修する時期は下階の救命救急センター(病棟)は運用中であること、感染症特殊排水などを必要とすることから、診療棟の感染症エリアを既存5階レベル+150mmの二重床とした。
 そして仕上げにおいては、外部仕上げは、外壁は、低層部と高層部の仕上げに変化を持たせ、低層部は金属製パネルとする。高層部は50二丁磁器質タイルで、下地は既存外観デザインの継承、イニシャルコストの観点から、耐火成型板横張とする。
 内部の仕上げについては、病院用途部分は各室に要求される機能、性能を満たし、かつ、メンテナンス性の高い材料を選定。第T、U種感染症エリアは、「新しい感染症病室の施設計画ガイドライン」に示された基準に準拠する。看護師宿舎用途部分は、既存宿舎や他都立病院の看護師宿舎と同等レベルのものとする。
 また、建築物の熱負荷低減のため、開口部、屋根、外壁の遮熱性能を強化する。



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