建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2012年8月号〉

岩手県における東日本大震災津波からの復旧・復興について


岩手県における東日本大震災津波からの復旧・復興について

岩手県 農林水産部 技術参事 兼 漁港漁村課
総括課長 大村 益男

5.これまでの取組と課題

(1)産地魚市場の再開
 本県は、13の産地市場(港湾に立地する3市場含む。)があるが、全ての産地市場において被災を受けたところである。最も早い所では、3月下旬に再開したところもあり、平成24年3月末現在においては、12市場が再開し、地域の活力の源となっている。  残る1市場についても、平成24年度に再開する見通しとなっている。
 発災当初は、漁船・漁具等が被災を受け、漁業者は将来に不安を感じていたところであったと思うが、関係各位の協力のもと、市場再開は地域にとって明るいニュースとなり、復興の第一歩を歩んでいると感じている。
 平成23年1月1日〜12月31日の産地魚市場の水揚げ状況は、水揚量は約9万トン(対前年比54.6%)であるものの、水揚金額は高単価の影響等により約160億円(同68.4%)となっている。
 今年度は、産地魚市場の本復旧に向けて、地域の復興シンボルとして関連設備の復旧・整備等に努めていく所存である。

▲写真-10   岸壁嵩上げによる産地魚市場の再開

(2)養殖業の再開
 今回の震災は、国内観測史上最大のマグニチュード9.0と大きな地震であったことから、県全域にわたり地盤沈下が確認され、高潮時になると岸壁や背後用地が浸水し、漁業作業が困難な状況にあった。
 そのような中、漁業者等のニーズに対応し岸壁の嵩上げなどを進め、漁業者が養殖資材の準備作業などを行っているのが垣間見えた他、天然ワカメが水揚げされた地域もある。
 このことが、復興へ着実に前進している証拠であり、我々が行っている漁港施設の復旧が、少しでも漁業者のやる気の下支えになっていると考えると非常に励みであり、今後も早期の復旧を着実に進めていく原動力となった。  また、1年間で収穫できる養殖ワカメの再開に向け、必要な漁港施設の復旧を進めていくことが最優先事項として位置付けており、漁業活動が早期に再開できるような岸壁の嵩上げが至上命題であったことから、それらの復旧を着実に進めた結果、平成24年3月末時点において、約6割の漁港で潮位に関わらず一部の岸壁等で陸揚げ可能となるとともに、約3割の漁港で潮位に関わらず全ての岸壁等で陸揚げ可能となり、盛漁期である2〜4月で全ての漁業協同組合(養殖ワカメを実施している19漁協)で再開するなど、我々の取組が漁業再開に一助となっていることをうれしく思う。

▲写真-11 天然ワカメの収穫(平成23年5月)

(3)災害査定の結果
 本県における災害査定は、平成23年6月27日から12月28日にかけて14回(延べ35班)実施され、1,392件で3,012億円余の決定をいただいた。
 被災施設は、約2,000箇所あったが、被害の甚大さに鑑み、査定の効率化から施設を大くくり化し1,392件となったが、それでも件数は非常に多かったこと、地盤沈下により単純な原形復旧ができないといった大問題を抱えており、全ての箇所で測量や安定計算が必要であるなど、今回の災害査定は過去の例とは全く異なりその経費と労力は莫大なものとなった。

▲写真-12 養殖ワカメのボイル作業

(4)復旧工事の実施に向けた課題
 平成24年度から、本格的な復旧工事を実施することになるが、以下の課題を抱えている。
ア.膨大な復旧工事を迅速かつ計画的に実施するための技術職員が不足していること
イ.甚大な被害であるにも関わらず非常に短期間で災害復旧事業を実施すること
ウ.コンクリートや石材といった工事等に必要な資材不足が懸念されていること
 上記の課題に対応するため、計画的・効率的な実施を検討するとともに、地域の実情を国へ要望するなど、国と地方公共団体と一体となって復旧・復興に向けて取り組んでいくことが必要である。 (以下次号)



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