建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2012年6月号〉

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大詰めを迎えた払川ダム建設

── 震災の影響を乗り越え打設完了し今秋から試験湛水

宮城県 気仙沼土木事務所 払川ダム

▲再開後の本体築造(コンクリート打設)状況

 平成21年3月から本体工事が進められていた払川ダムは、東日本大震災の影響により一時中止していたが、この5月で本体のコンクリート打設を完了し、いよいよこの秋から試験湛水を迎える。
 この払川ダムは、二級河川「伊里前川水系伊里前川」の宮城県本吉郡南三陸町歌津字払川地先に建設される多目的ダムである。
 伊里前川流域は昭和52年9月の台風11号により、浸水家屋6戸、浸水農地3.19ha。昭和56年9月の豪雨では、浸水家屋48戸、浸水農地30.7haで、被害総額は1億1,350万円となった。
 このため、払川ダムは洪水時3のダム流入量70m3/秒のうち52m3/秒をダムに貯留し、残りの18m3/秒を放流すことで、伊里前橋地点の洪水流量を200m3/秒から150m/秒に低減させることになる。
 また、水の正常な機能の維持に向けて、既得用水の補給を行うなど、流水の正常な機能の維持の増進を図る。
 伊里前川は古くから水利用されてきた。特に沿線に点在している耕地のかんがい用水として重要な水源となっており、25.1haの耕地に対し22ヶ所の取水施設により、最大0.192m3/秒の取水が行われている。
▲外観完成イメージ
 そこで、払川ダムから計画的に放流することで、伊里前川に生息しているアユ・ヤマメ等が生息できる最低限の河川流量を確保するほか、橋などの構造物から人目に触れる場所では、視覚的に水量感を感じられる河川流量を確保するなど、河川の環境保全を目指す。そのためには、中在橋地点で0.8m3/秒を確保する。
 その他、水道用水として南三陸町に1,000m3/dの水道用水の取水を可能にする。南三陸町歌津地区(旧歌津町)は、給水人口が減少しているが、井戸水から町水道への転換、生活様式の向上、下水道の整備、第1次産業から2次・3次産業への転換等により、水需要の増大が予想されており、現在の施設能力では賄いきれず、新たな水源確保が急務となっている。
 そこで、旧歌津町地域では、平成25年度に給水人口5,080人、1日最大2,900m3の給水目標を計画しており、この水源の一部(日量1,000m3)を払川ダムによって確保する。



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