建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2012年6月号〉

建設業は税金を元にして形にするので一円たりとも無駄はできない

── 工事現場は地域の人達の願いを創る

留萌建設協会 副会長、株式会社石山組 代表取締役社長
石山 雅博 氏


──50年代といえば地域づくり、国土づくりが盛んに行われていた時代でしたね
石山 その頃は公共事業に積極的な市町村が多く、各町村会事務局にも開発期成会があり、どこの首長も地域の将来のために、政府に予算付けしてもらおうと必死でした。
 公共事業というのは、市町村の住民が安全で安心して暮らすために行われるものです。それを実現するためにも市町村議会議員に要望し、市町村議会で協議して首長が都道府県に陳情し、さらに地元選出の国会議員にも協力を要請しつつ中央の諸官庁など関係機関に説明をするという流れで、本当に気の遠くなるような膨大な資料を準備し、何日もかけて練り上げた陳情書を国会で審議してもらうのです。  建設業は、そうして予算配分された税金を元にして形にするのですから、一円たりとも無駄にはできません。
 そんな中で私も父の秘書として陰ながらその一旦に参加し、北海道の将来をどう描くを模索しながら、全道を走り、汗をかいたものです。
▲故 石山直行氏
(H8年勲四等瑞宝章受章時)
──先代が道議を引退した後は、どんな様子でしたか
石山 父が道議を辞めた後は、石山組の経営に専念していました。私も公共事業の大切さを父と一緒に学んできたので、それを大切にしていく会社にしたいと考えていました。社是は「和而不同」で、これは「子曰く、君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」という論語の一節です。
 会社組織の中で一人ひとりが主体性をしっかりと確立し、協調性を発揮すれば本物の「和」が生まれる。
──そうして、平成16年に社長に就任しましたが、それまでに会社の体制も紆余曲折がありましたね
石山 平成13年に、札幌本社の石山組が経営不振に陥ったので吸収合併しました。そして、平成16年に社長を拝命し、会社のトップとして会社の経営状況を把握しましたが、この肥大状態では生き残れないと判断し、その後4年を掛け再構築や部門・拠点の統廃合を重ねスリム化と経営改善を進めてきました。
 そして20年には「新設分割」という方式で、社名を「株式会社IYG」に商号変更する一方、新たに「株式会社石山組」を設立し、建設業に関する全ての権利義務を継承しました。
──政府も自治体も世論に圧されて公共投資予算を削減してきましたが、まさにそうした建設業受難の時代を象徴するような事例ですね
石山 IYGとなった旧石山組は、私が社長に就任した当時は民需を柱にした拡大路線へ方向転換を図っていましたが、一方では公共事業の縮小が進み、コンサルタント会社に依頼して経営改善を進めてきたのです。しかし、公共事業だけでなく民需までもが予想を超えて激変したのです。
 そこで債権者の了解を得ながら、不動産部門を旧石山組に残して売却等の処理をする一方で、健全な本業の資産や債務、雇用契約は新会社に移すことで立て直しを図ったのです。そうして新生石山組には、旧石山組の役員と60人の従業員をそのまま継承することで、活路を見出すことができました。
▲施工事例:公営住宅(仮称菊水上町団地2号棟B工区)新築工事 ▲施工事例:古平神恵内線 No.17 スノーシェルター
──公共事業予算の削減はなおも続いていますが、現況はいかがですか
石山 新会社としては、受注比率を公共6、民間4で維持し、35億円程度の受注を維持していこうと考えています。幸いにして、23年度は公共工事予算の大幅削減や入札制度の複雑化、過剰な入札競争にも関わらず、完工高目標を第三四半期で達成できました。厳しい時代ですが、社員が誇りを持ち、良い仕事をしてこそ会社は成り立ちます。それによって、社員の家族も幸せになることを祈りながら日々を大切にしています。
▲施工事例:札幌競馬場 ▲ロクシナイ川における清掃活動(天塩町)
──平成22年には、地域貢献活動功労者として表彰されましたね
石山 全国建設業協会では全国での建設業が行っている災害時の応急復旧や河川・道路の美化などの社会貢献活動についての表彰ということで、今回当社の留萌管内で行っている河川清掃活動やイベントの参加及び支援また、災害時の応急復旧活動の社会貢献が対象となり栄誉を受けました。
 このほかに当社としても毎年札幌市では、アダプト制度による道路清掃活動や支笏湖国有林内の清掃活動も展開しており今後も継続して地域に貢献できる会社としてあり続けたいと考えております。
▲建設業社会貢献功労者賞 副賞の壁掛け(純銀製ふくろう)
「ふくろう」は福徳をもたらし不老長寿・学問の神・商売繁栄の「不苦労」と言われている。
──今後の運営に向けての課題は
石山 一つの工事現場は、地域の人たちの願いが構造物として現われます。ですから施工に当たっては、発注者と受注者が工事着手前によく話し合える環境作りが大切だと思います。たとえばお互い負担し合ってですが飲食を伴った場所でお互いの本音で良いものを創る意欲を高めあったり出来たら良いと思います。
 この伝統的なコミュニケーションは、近年周囲の誤解や不信感が重なり出来ずらいが、メール交換だけの無味乾燥な希薄さより濃厚な想いが交換できる関係を作りたい。
 一方、会社経営においては厳しい受注競争の中、国交省では新たに二段階選抜方式の入札が施行せれ、技術者のヒヤリングも含めより技術者個人の表現力等の力量が試されます。
 また他方最近のコンプライアンス、過度な要求と提供により繁忙のあまり過重労働等によるメンタル面での問題も顕在化しておりさまざまな課題はありますが、社員一人ひとりが「より強く・より臆病に・そして大胆に」という意識のもと、さらに安全意識の高い・厳しきも笑顔のある社員であってほしいと考えています。

石山 雅博 いしやま・まさひろ
天塩町出身、昭和26年生
拓殖大学経済学部 昭和48年3卒業
昭和49年 3月 石山組入社
昭和55年 4月 常務取締役
平成 5年11月 取締役副社長
平成13年10月 代表取締役副社長
平成16年 7月 代表取締役社長

▲本社社屋

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