建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2012年3月号〉

ZOOM UP

名古屋の顔となる東山動植物園がリニューアル

――歴史と文化に育まれた人と自然のミュージアム

名古屋市 東山動植物園再生事業

▲全体図

名古屋市は、なごや東山の森とその中央に位置する東山動植物園の整備を進めている。これは東山動植物園再生プラン新基本計画に基づくもので、これまで平成18年6月には、動植物園の役割や使命の変化を考慮して「人と自然をつなぐ懸け橋へ」をテーマとした基本構想を策定。そして19年6月には、展示等の基本的な考え方や施設整備の方針などを示した基本計画を策定した。
 さらに、その後の社会情勢の変化に対応するとともに、新たに「現存する歴史文化的施設や樹木、景観に配慮する」「市民により一層楽しんでいただく」といった2つの視点を加え、新基本計画を策定した。

▲オセアニアゾーン ▲アジアゾーン(アジアゾウエリア)

この東山動植物園は総面積60ヘクタールで、動物園32ヘクタールと植物園28ヘクタールで構成されている。主なゾーンの特色を見ると、アジアゾーンのアジアゾウエリアは、世界的にも貴重種のアジアゾウが、群れで生活する姿を見ることができる。また、ゾウの訓練を通して、人と動物の密接な関係などをで学ぶことができる。オセアニアゾーンは、コアラ、カンガルー、エミュー、ウォンバットなどの動物を間近で観察することで、独自の進化をとげたオセアニアの動物の形態的特徴(有袋類等)を知ることができる。アフリカゾーンのアフリカの森エリアでは、多様な霊長類や森林性の草食動物を見ることができる。また、チンパンジーが道具を使う様子などから、知能の高さを知ることができる。一方、アフリカゾーンのサバンナエリアでは、草を食べるシマウマやカバ、木の葉を食べるキリンなど、草食動物の棲み分けと、その草食動物を捕食するライオンなどの肉食動物を見ることができる。

 魚類、両生・ハ虫類ゾーンは、メダカ館(魚類)では、田んぼの風景を再現し、そこに生活するニホンメダカの生態などを見ることができる。自然動物館(両生・ハ虫類)では、陸上のカメとしては最大のゾウガメなどを間近で体感できる。アメリカゾーンでは、積極的な保護策によって絶滅の危機から救われた、北米大陸のアメリカバイソン、ハクトウワシ、シンリンオオカミと、カピバラ、オオアリクイ、ヤブイヌ、ジャガーなど、南米大陸の多様な動物を見ることができる。
 日本ゾーンは、奥山の生息環境を模し、生き生きと活動するニホンザルが見られるとともに、四季折々の花と緑の中で、ヤギやモルモットなどの生きた動物に直接触れることのできるエリアも設けられている。世界の植物と文化ゾーンでは、地形の高低差を生かした立体的な幾何学式庭園と、かつて東洋一の水晶宮」と謳われ、国の重要文化財である温室をその周辺施設も含めて修復し、それを背景に「オープンカフェでミニコンサートを聴く」といったイベントも開催できる。

▲星が丘門エントランスゾーン ▲アジアゾーン(熱帯雨林エリア)

星が丘門エントランスゾーンでは、市民がデザインする立体花壇・イングリッシュガーデンや、オープンカフェなどが利用できる。日本の里ゾーンでは、森とくらしに焦点を当て、木曽、飛騨、三河遠州のモデル林や湿地などから、東海地方特有の景観が形成されている。また、季節ごとに、田植え、稲刈り、餅つきなどの体験が出来るイベントを実施するほか、ヤギ、ニワトリ等の小動物ともふれあうことができるなど18ゾーンの計画となっている。
 整備期間は平成48年度(100周年)までの約25年間を想定し、原則としてゾーンやエリア毎に整備していくことになっている。全体事業費は約350億円を想定しているが、事業の遂行にあたっては、概ね5年毎に事業計画の見直しを行っている。
 これに基づき、アジアゾーン(アジアゾウエリア)の工事は25年までとし、それ以降は施設の状況、利便性等を勘案しつつ順次整備する計画である。



HOME