建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2012年2月号〉

interview

3.11は建設業のBCP「事業継続計画」の必要性を実感させた

――災害時にいち早く応急復旧活動にあたるのは建設会社〔後編〕

北海道 上川総合振興局 副局長(建設管理部担当) 矢野 明夫 氏


──地域防災力を向上させるためにどういう取り組みをされましたか
矢野 一つ目は、国の出先機関と自治体といった防災行政機関相互の災害時の連携強化があげられます。
 2009年に国土交通省は防災施策として災害緊急対応事業を創設しましたが、災害の形態によっては、この活用は自治体にきわめて有効な施策でしたので、この事業をはじめ、排水ポンプ車など国の災害対策機械・資材の貸与、リエゾン派遣などの自治体からの支援要請の枠組みを定め、2010年度当初には、道内のすべての市町村と災害時の応援協定を締結しました。道と札幌市相手にはすでに協定がありましたので協定変更を行いこの施策を盛り込んだところです。
 すべての市町村と災害時応援協定を結ぶことは、全国でも例が無く、一番早い取り組みであったと記憶しています。
 二つ目は、自治体の首長を対象とした防災力向上のためのトップセミナーを始めたことです。
 基礎自治体において、避難勧告や災害対応の陣頭指揮を執るのは市町村長であり、地域住民の生命・財産を守る自治体トップの果たす役割はきわめて重要と言えます。セミナーは災害対策基本法の重点事項を中心とした講義や災害対応上の各種施策の紹介の他、学識経験者からの基調講演、討論をセットにし、第1回目は、2011年1月22日に釧路市で開催しましたが、評価は上々で、今後も多くの首長さんたちのセミナー参加を期待するものです。
 三つ目は、建設業界におけるBCPの導入です。私の在任中は、まだ導入計画立案のステージであり、北海道建設業協会や各団体にBCPの必要性などのご説明に廻っていた段階でした。
 企業BCPは、災害時にいち早く応急復旧活動にあたるという建設業の社会的使命を果たすため、災害時において自社の被害を最小限に抑えるとともに、事業の中断期間を出来る限り短縮できるよう、企業活動が円滑に継続できる体制にするために重要なものです。
 現時点での取り組み状況は承知しておりませんが、行政機関のBCPもそうであるように、作成することに意味があるのではなく、BCPの真髄は、「定着と検証」にあると言えます。不断の見直しにより、企業環境の変化に即応してBCPのスパイラルアップを図っていくことが重要であると思っています。
▲氷点橋

矢野 明夫 やの・あきお
昭和31年4月生まれ 函館市出身
昭和55年3月 北海道大学 工学部 卒業
平成 5年4月 北海道 札幌土木現業所 当別ダム建設事務所 技術第1係長
平成 7年6月 北海道 室蘭土木現業所 治水課 河川係長
平成 9年4月 北海道 東京事務所 主査
(財団法人リバーフロント整備センター 研究第1部 主任研究員)
平成11年4月 北海道 総務課 主査
平成11年5月 北海道 建設部 河川課 治水係長
平成13年4月 北海道 建設部 河川課 ダム室 ダム計画係長
平成15年6月 北海道 函館土木現業所 事業部 治水課長
平成17年4月 北海道 建設部 河川課 主幹
平成19年6月 北海道 室蘭土木現業所 事業部長
平成21年4月 国土交通省 北海道開発局 事業振興部 防災課長
平成23年4月 北海道 建設部 砂防災害課長
平成23年6月 北海道 上川総合振興局 副局長


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