建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年12月号〉

interview

建設業は地域の経済や雇用を支える基幹産業

――新分野進出業務を建設部に一次元化〔後編〕

北海道 建設部 部長 武田 準一郎 氏


――建設行政の課題−災害時の危機管理体制・インフラの老朽化など北海道建設行政の執行に当たっての課題をお聞かせください
武田 建設部としては、道路、河川、砂防施設などにおいて地震や豪雨、火山噴火など、災害への対応が喫緊の課題と考えています。
 あわせて、高度経済成長期に集中して建設された既存施設の長寿命化の推進が必要となっておりますが、現在あるストックを適切に維持管理していくための費用の確保が地方公共団体では大きな課題となっているのが現状です。
 多様な交通ネットワークに支えられた持続可能で活力ある地域づくり、ゆとりと安心を実感できる暮らしの形成、個性豊かで国内外を魅了する地域づくり、環境への負荷が少ない持続可能な社会の構築、人と自然の共生を基本とした環境の保全と創造など、北海道の課題に取り組み、大災害など、万が一の場合でもリダンダンシー(補完性)が保たれる社会資本整備も検討してまいります。
▲旭川駅舎外観
――今後の入札契約制度については
武田 建設部技監の頃、地域の建設業界の方々から、入札契約制度について、「競争すればするほど、底が抜けたような価格になる競争の場はいかがなものか」、「過剰な競争により良質なものを造る会社がなくなるのではないか」など、様々な意見を伺いました。
 いうまでもなく、本道の建設業は、災害時の復旧・復興や土木施設の維持・管理、除雪など、地域住民の安全・安心な生活の担い手であります。このような建設業が、地域からなくなることのないよう、地域重視の考え方など様々な検討を重ね、今年度からAクラスの中にA1、A2という二つの格付けを設け、新しい制度をスタートさせました。
 先般、建設部では、様々な地域の建設業協会の皆様からご意見を伺ったところであり、入札契約制度では、誰もが満足するような完全な制度というのは、なかなか難しいことと思いますが、よりベターな制度に近づくよう、絶えず現地を見たり、ご意見に耳を傾けながら、より良い制度の改善を図っていかなくてはならないと考えております。
▲JR函館本線(野幌駅付近)連続立体交差事業
――建設業の経営状況悪化・若年技術者の減少などについて、どう考えていますか
武田 本道の建設産業は、社会資本の整備などを通じ、安全・安心な地域づくりに貢献していただいており、生産額、従業員数とも道内全産業の約1割近くを占めるなど、地域の経済や雇用を支える基幹産業です。
 しかし、道内建設業の経営環境は、国や地方の財政が一層厳しさを増すなか、長年にわたる公共事業費の縮減により、大変厳しい状況が続いており、道では、国の投資減退の影響が最小限となるよう単独事業予算を追加計上したところです。
 また、建設業の抱える課題を道庁全体でサポートしていこうと、建設部に「建設業サポートセンター」を設置し、相談対応や情報提供を行ってきておりますが、今年度からは、これまで以上に、建設業界の悩みに一緒になって取り組むことができるよう、新分野進出業務を建設部に一元化しました。
 毎年実施している建設業者の皆様へのアンケート調査の結果を見ると、本業を強化していきたいとする企業が多く見られますが、公共投資の増加が見込めないなか、今後とも地域の基幹産業として地域の経済・雇用、更には安心・安全を守っていくためにはどのような経営方針で望んでいくことが必要かを真剣に考えていかなければならない時期を迎えていると思います。
 こうしたなか、道内の建設業者や団体の中には、サハリンやモンゴルへの進出やバイオマスプラント事業化の検討など、新分野進出や海外への販路拡大等、様々な動きが出てきており、これまで培った優れた技術力を活かし、経営基盤の強化に向けた取り組みが拡がっていくことを期待しているところです。
 また、建設業の担い手確保というところについても真剣に考えていかなくてはならないと思っております。経営環境が厳しさを増すなかで、若年技術者の減少による年齢構成のアンバランスやそれに伴う技術力承継問題など、多くの問題が山積しておりますが、私どもとしては、技術と経営に優れた建設業が今後とも地域の中で発展を続けていくことができるよう、人材の育成はもとより、新分野進出や技術力の向上、本業の強化など、建設業の皆様をサポートしてまいります。
▲道州制北海道地域連携モデル事業(網走川)

武田 準一郎 たけだ・じゅんいちろう
昭和28年9月20日 門別町出身
室蘭工業大学 工学部土木工学科 卒業
室蘭工業大学大学院 修了
昭和54年10月 北海道庁採用(土木部管理課)
平成 9年 6月 函館土木現業所事業第一課長
平成10年 4月 建設省建設経済局建設機械課課長補佐
平成12年 4月 建設部道路計画課長補佐
平成15年 6月 室蘭土木現業所事業部長
平成17年 4月 建設部道路計画課長
平成18年 4月 函館土木現業所長
平成19年 6月 建設部技監
平成21年 4月 網走支庁長
平成22年 4月 オホーツク総合振興局長
平成23年 6月 現職

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