建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年10月号〉

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知的障害部門と肢体不自由部門の独立性を確保しつつ地域交流に配慮した施設設計

――多摩産材を用いて環境対策

東京都 都立板橋学園特別支援学校(仮称)改築工事


▲外観完成イメージ

東京都立板橋学園特別支援学校(仮称)は、「特別支援教育推進計画第二次実施計画」に基づき、旧都立志村高等学校跡地に計画された肢体不自由教育部門と、知的障害教育部門を併置する新設学校ととして計画された。知的障害教育部門24学級、肢体不自由教育部門28学級の都内でも最大級の特別支援学校となる。
 今回の改築では、知的障害教育部門は高等部を設置し、軽度の知的障害の生徒を対象とし、将来の職業的自立に必要な専門的な教育を行う。また肢体不自由教育部門は、小学部から高等部までを設置し、個々の障害の状態等に応した各教科や自立活動の指導等の専門的な教育を行う。
 設計に当たっては、明快なゾーニングと単純なプランにより、知的障害部門と肢体不自由部門の独立性を高めると共に、分かりやすい動線を確保し、働きやすく管理しやすい諸室計画とした。また、普通教室をグラウンド及びプレイグラウンドに面した南面配置(一部東面配置)として計画。体育館を地域開放に対応できる計画とした。
 これに基づき、配置計画・動線計画の考え方としては、建物はグラウンドに面した中央棟、西棟、敷地北側の北棟、正門付近の実習棟の大きく4つの建物から構成されるので、北棟は敷地の高低差を利用し、半地下形状の地下1階を設け、そこに厨房、食堂を配置し、1階部分に体育館、第2体育館、屋内プールなどの大空間を配置した。これは北側の都道、高速道路からの騒音を抑え、児童・生徒の居住空間の環境を確保するための工夫である。


▲プレイグラウンド ▲交流スペース

また、南向きの教室を確保するため、中央棟と北棟の間にプレイグラウンドを設け、プレイグラウンドを囲む1,2階に肢体不自由部門を配置。知的障害部門は西棟1,2階及び中央棟の3階に配置し、また知的障害部門の就業訓練が行われる実習棟を校門付近に配置することにより、地域交流が可能な計画とした。
 学校正門は現状の位置に計画し、正門を入った位置に正門広場を配置した。そして、正門広場から校舎へとアクセスした位置に、肢体不自由部門が利用するバス降車場を配置し、建物外周には外周路を設け、緊急車両が通行できる計画としている。
 平面計画においては、玄関から南北に伸びる廊下を境として東側の1〜2階に肢体不自由部門、西側の1〜3階に知的障害部門を配置し、極力、動線が交わらない計画とした。また、各部門では各学年ごとに同一フロアにまとめることにより、ゾーニングを明確化した。
 一方、各棟の普通教室と特別教室の間には、交流スペースまたはスロープ空間を配置し、採光と通風を確保している。上下動線は階段のほかに、EV(3基)及びスロープを配置し、EV及びスロープは肢体不自由の児童・生徒の移動を考慮し、肢体不自由部門を中心に分散配置している。その他、環境対策としては、厚い断熱材の使用、ペアガラスの採用、屋上緑化の実施など、省エネ東京仕様2007を採用する。また、資材は多摩産材を利用する。
 周辺への配慮としては、建築基準法の日影規制を大幅にクリアする計画とし、周囲への日影に配慮した。また、建物高さが高くなる体育館を北側に配置することで、南側住宅への圧迫感を抑えた。敷地南側には板橋区に開放する開放スペースを配置し、地域のイベントや地域住民のコミュニテイ形成促進に対応できる計画とした。
 施工に当たっては、西側区道においてよう壁の解体から新設までの間、敷地内に工事車両通路を設置することにより、安全に十分留意し、近隣への影響を最小限に留めることにしている。





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