建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年10月号〉

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築16年を迎えた東京ビッグサイトが本格的に大規模改修

――「機能劣化の回復」、「社会的要望の反映」、「利用者需要の向上」が改修のポイント

東京都 東京国際展示場設備改修工事


1995年10月に完成し、オープンした東京国際展示場(東京ビッグサイト)は、竣工後約16年が経過し、建物部位・部材はもちろん、設備機器においても不具合が各所に発生している。
 また、時代の経過に伴う社会的機能の劣化や、展示機能という視点から見ても、いくつかの検討すべき問題点を内包している。
 さらに、建物財産としての価値の確保も望まれており、今後の使用環境や維持保全費の効率化を図ることが必要となっていた。これらの理由から、いよいよ本格的な改修工事に着手した。
 改修のポイントは「機能劣化の回復」、「社会的要望の反映」、「利用者需要の向上」の3点で、「機能劣化の回復」に向けては、経年による材料・機器の不具合が発生している箇所の改修を計画。「社会的要望の反映」に向けては、ユニバーサルデザインの対応や、環境に配慮した改修を計画。「利用者需要の向上」に向けては、利用者要望に適格に対応した改修計画を立案した。
 これに基づき、実施に当たっては休館期間を改修工事の前提とし、高層棟とレセプションホールについては休館期間を利用。その他の改修箇所については、営業運用と並行しながら改修に当たることにしている。
 このため、高層棟(6〜8階)の施工期間は、平成22年8月16日〜8月27日(12日間)と、平成22年11月20日〜23年1月18日(64日間)としている。
レセプションホール(1階)については、平成23年10月29日〜平成24年1月16日(80日間)として設定した。
 外部改修については、外壁改修範囲は平成21年度建築改修工事範囲外の全てとしている。施工内容としては、西日対策として直射日光を低減する遮光ルーバーを設置。外部建具上には、壁面を伝った雨水から建具の腐食を防ぐため、金属製の小庇を設置する。
 外構については、舗装部タイルや石の更新、池からの漏水改修、連絡ブリッジ化粧改修等を行う。
 内部改修計画としては、高層棟は基本的に各会議室等の床、カーペットの貼り替え、壁:特殊塩ビシートの貼り替え、天井清掃程度としている。ただし、天井清掃については、全てパウダーコーティングとする。
 その他、国際会議場・客席の書記台の改修、スライディングウォールの消音化等を行う。
 低層棟においては、レセプションホールの電動可動間仕切りを撤去し、手動の可動間仕切りに更新するほか、床、カーペットについても、全面撤去更新とする。
 その他の共用部においては、サービス用廊下やエレベータ附室は、床、壁の仕上げ更新するともに、仕上げの耐久性をあげ、改修サイクルをのばすために、壁材については一部、化粧珪酸カルシウム板で補強するなど施設の現状を勘案した。
 トイレは現状の暗いイメージを解消するとともに、清掃しやすいよう、壁材を化粧硬質セメント板とするほか、利用者のアメニティ向上に配慮し、洗浄便座を設置するともに、可能な範囲でユニバーサルデザインを導入することとしている。


▲改修以前の外観 ▲西展示棟の工事外観 ▲東展示棟の工事外観

 主要設備の主な更新のポイントは、中央監視設備、自動制御設備機器、電力監視設備の更新と照明器具更新、照明制御設備更新、会議場、レセプションホール等の舞台照明、音響、映像、同時通訳機器の更新、そしてテレビ共聴設備の地上波デジタル対応更新である。
 中央監視設備、自動制御設備、電力監視設備の更新による変更点は、通信方式として標準方式(オープンネットワーク)のBACnetを使用する事により、自動制御設備や電力監視設備、照明制御設備等の各サブシステムと高速な通信が可能になる。これにより、現状よりも操作時の応答速度が速い使いやすいシステムになる。中央監視機能と施設情報管理機能を統合し構築する事により、仕様端末の兼用化を可能とし、設置スペースの削減を図り、又システムを単純化する事により維持管理費の削減を図る。監視端末に表示される建築平面図上の部屋名の変更を、防災センターの人員で対応可能とし、テナント交代時の画面更新費用の削減を図る。展示ホール・会議室等の照明用電力、昇降機用電力量や展示ホール空調機の内インバータ制御機器の電力量の計測機器を増設し、きめ細やかな使用電力量監視や分析を行う。施設情報管理では、CO2削減量算出の支援機能を有する。
 照明器具の更新による更新内容は、既存FL蛍光灯をHf蛍光灯へ更新し、ダウンライト系照明器具はLED照明器具への変更、スーパー柱ライトアップ照明や東展示場屋外車路部分の放電灯投光器をLED照明器具へ更新。誘導灯を長時間型LED誘導灯へ更新。そして、昼光センサーの増強、各展示ホール内照明器具点滅の細分化等により、照明用電力は540kW削減される
 会議場、レセプションホール等の舞台照明、音響、映像、同時通訳機器については、AV設備や調光設備の老朽化に伴う更新を行う。同時通訳対応室は、国際会議場、レセプションホール、6階中会議室。赤外線方式による良好な音質のシステムとする。国際会議場、レセプションホール、6階中会議室のシステムを統一し、使い勝手を向上する。赤外線レシーバーをレンタル対応とする事により、受け渡し業務の簡素化及び維持管理費を削減する。移動型システムの導入により、システムを簡素化し維持管理費を削減する。
 映像設備については、国際会議場では、プロジェクターの性能アップに伴い、現状の背面投影方式を中止し、利用者の要望に応えやすい前面投影方式にて更新する。舞台照明設備は、各会議室の照明器具の調光装置及び国際会議場、レセプションホール、中会議室の演出用スポットライト類の更新を行う。劣化した機器を全面的に更新し、信頼性を上げる。持込機器を制御するための信号配線設備を新設し、持込機器利用の対応範囲を広げる。音響設備は劣化した機器を全面的に更新し、信頼性を上げる。メインスピーカの配置の見直しとノイズ対策を行い、聞きやすい音環境に更新する。
 また、2011年の地上波デジタル放送への完全移行及びそれに伴う臨海地域のケーブルテレビ放送のサービス中止に対応するため、テレビ共聴設備を地上波デジタル放送対応の設備に更新する。
 この他、空調用熱源ポンプの高効率モーターへの更新、入場者計測用センサー設備の更新等の設備更新も行われている。



▲国際会議場 ▲西展示棟内トイレ
▲東展示棟内部工事状況 ▲会議棟 中会議室



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