建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年9月号〉

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植栽帯でフェンスをカバーし閉鎖的イメージを解消

――世田谷区みどりの基本条例」を遙かに凌ぐ豊かな緑化を実現

東京都 世田谷区立 上北沢小学校改築工事


▲鳥瞰イメージ

創立70周年を迎えた世田谷区立上北沢小学校の、耐震化を目的とした全面改築が進められている。計画に当たっては、学校関係者・保護者・近隣住民・区職員で構成された委員会において、3つの基本方針が設定された。
 1つは多様な学習・将来の変化に柔軟に対応できる学習環境づくり、2つは地球環境問題に対応できる自然環境づくり。
そして3つは地域が見守り、地域にひらかれた学校としての地域環境づくりとなっている。
 これらに基づき、校舎の配置は児童や地域住民にとって愛着のある旧校舎のイメージを継承した計画となっている。そこに東門と西門をつなぐ見通しの良いスクールコリドーを設置した。これは児童の通学動線と同時に、来校者にとってもわかりやすく、また不審者対策にもつながるよう、ひとの目による見守りのできる歩行空間として設定されている。
 外観は長大な校舎壁面を、均等スパンの柱によりリズミカルに分節し、垂直ラインを印象付けたうえで各スパンを水平につなぐ要素として、横連窓、庇、ライトシェルフを取り入れた。部分的にカーテンウォールやランダムな窓、ルーバーを取り入れることで変化を持たせ、周囲への圧迫感の軽減を図っている。
 色彩はまちと融和し、小学校らしいあたたかみのある計画とすることで、改築後にも長くまちに溶け込み地域に親しまれるよう配慮されている。
 校舎内部は、見通しの良い長い直線廊下に沿って諸室を配置することで、わかりやすく効率的で公平な学習環境の創出に配慮している。そして、良好な学習環境形成のため、普通教室は全室を南面に配し、教室間の遮音性確保、通風確保にも配慮した。


▲改築後のイメージ


さらに、新校舎の特色の一つは昇降口に面したホールで、昇降口から吹抜となっているホールによって、校内の雰囲気を感じられる学校の顔と位置付けられている。これについては、学校行事での使用など様々なシーンが想定されており、児童の自発的な活動を促す場としても期待される。
 この他、敷地内の既存樹木は、なるべく保存・移植するなど、「世田谷区みどりの基本条例」を上回る計画となっており、住宅地の中にあって、まとまったみどりを創出し周辺の環境向上に寄与することを目指している。環境対策の面では、太陽光発電、ペアガラス、高断熱化、ライトシェルフ、人感センサーによる照明制御などの環境技術を導入し、環境配慮の生きた教材となるよう計画としている。
 今回の改築にともなう大きな変更点は、以前は擁壁や建物で敷地が囲われ、閉鎖的な状態であったのが、今回の計画では、植栽帯によってフェンスを目立たせず、高低差は緑化した法面とするなど、地域にひらかれた印象となるよう配慮されたところだ。さらに敷地周囲には歩道状空地を設けることで、地域の狭隘な道路環境の改善を図っている。
 また、本校のシンボルツリーであるイチョウの移植を行うことで、旧校舎の記憶を継承している。そして、校舎の内装は、児童を主役と捉えて学校の活動や掲示物などが映えるシンプルな計画となっているが、その中に木質系仕上の効果的な採用やイチョウ色をアクセントカラーとして取り入れることで、あたたかみや明るさ、こどもらしさを表現している。




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