建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年9月号〉

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環境教育のできる学校へと変身

――地域住民の声を設計に反映

東京都 世田谷区立 烏山北小学校改築工事


▲完成イメージ(ピロティ) ▲鳥瞰イメージ

世田谷区立烏山北小学校の改築工事は、区の「新たな学校施設整備基本方針」に基づき、耐震化を実現する改築事業である。平成21年度末に耐震性能を持つ仮設校舎に移転後、既存校舎を解体し新校舎を建設している。区では、学校施設の標準仕様化を推進しており、計画的・効率的な校舎の改築を進めており、この事業もそれに基づいて行われているものである。新校舎は、平成18年7月に策定された「標準設計指針・標準仕様書」に基づき設計、施工されている。
 設計に当たっては、基本方針としては4つの項目が掲げられた。まず、1つ目は「特色ある教育に対応した学校づくり」として少人数教育や特別支援教育など、多様な教育活動に柔軟に対応できる施設づくりである。そして、2つ目は「環境にやさしい学校づくり」として芝生の校庭を整備し、「青がし」などの既存樹木を保存し自然エネルギーの利用など環境にやさしい施設づくりである。さらに、3つ目は「地域とともに育てる学校づくり」として学びや出会いを通して、児童、保護者、地域が交流し、学校が地域の拠点となる施設づくりである。最後に、「安全・安心の学校づくり」として、防犯や安全性に優れた施設整備、災害時の地域の防災拠点として必要な整備となっている。


▲運動場側から見た改築イメージ


 配置計画については、烏山北小学校の特徴である敷地南側の芝生校庭を一時撤去して、一部は校庭として利用できるスペースを確保しつつ仮設校舎を建築し、新校舎を敷地北側の既存校舎を解体後に新築している。新校舎の建設後は仮設校舎を解体し、芝生校庭を再整備する。
 新校舎の平面形状については、並行する2棟を中央コア(渡り廊下・階段等)で繋ぐ「H型」とし、中庭や前庭・ピロティを校舎と複合的に配置し、内外部をつなぐ回遊性と連続性のある多目的な学習・生活空間を生み出す計画とした。また、校舎面積の増加にともない校庭が狭くなることを考慮し、校舎の屋上に運動場や芝生緑地、菜園の整備等を行い、児童の活動の場を極力確保した。
 周辺地域への配慮としては、基本構想時からアンケート調査や住民説明会を行い、児童や保護者、地域住民の意見を取り入れながら検討が進められた。特に周辺は低層住宅が多いため、建物高さを抑え、隣地境界線からの壁面を後退させたほか、狭い前面道路には地域住民が利用できる歩道の確保や植栽などを行い、周辺への圧迫感や日照、通風などの影響を極力抑え、街並みに調和するよう配慮している。
 環境対策としては、屋上緑化による熱負荷低減の他、太陽光発電、南面教室の逆梁構造とライトシェルフによる自然光の最大限の活用、雨水貯留槽による中水利用等、環境学習の場としても役立つ配慮がされている。




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