建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年9月号〉

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相模鉄道とJR貨物線を結ぶ神奈川東部方面線鉄道が着工

――都市鉄道等利便増進法第一号に指定された国内初の事例に

神奈川県 【特集】神奈川東部方面線鉄道

▲相鉄・JR直通線及び相鉄・東急直通線路線図 ▲相鉄・JR直通線の平面図

神奈川県内で、相模鉄道本線西谷駅から東日本旅客鉄道東海道貨物線横浜羽沢駅付近までの区間を連絡する神奈川東部方面線鉄道が建設されている。この路線は、神奈川東部方面線の機能の一部として機能することになる。
 この整備によって、横浜市西部と神奈川県央部、さらに東京都心部を結ぶ広域鉄道ネットワークが形成されるとともに、横浜駅や東日本旅客鉄道東海道線等の既設路線の混雑緩和や、乗換回数の減少、地域の活性化等に寄与することが期待されている。
 これは平成17年8月に施行された『都市鉄道等利便増進法』に基づく新たな鉄道整備手法で、都市鉄道の既存ストックを有効活用しつつ都市鉄道ネットワークの機能を高度化する事業。相鉄・JR直通線は、これを適用した最初のケースで、整備構想・営業構想、速達性向上計画、環境影響評価、都市計画手続き、工事施行認可を経て、平成22年3月に着工した。
 特に事業計画におけるポイントは、速達性向上による時間短縮と交通結節機能の高度化で、「都市鉄道等利便増進法」では、速達性向上計画と、交通結節機能高度化計画が柱となっている。
 そのため、路線間の接続が不十分で乗換に迂回が必要な場合、連絡線の整備などによって乗車時間の短縮を図り、乗客の負担を軽減することとしており、相鉄・JR直通線は「速達性向上計画」について、平成18年に国土交通大臣の認定を受けた。
 そして、事業者については、相鉄本線西谷駅とJR東海道貨物線横浜羽沢駅付近間に新設される約3qの連絡線を、鉄道・運輸機構が整備・保有し、相模鉄道がこれを運用する体制となる。
 なお、連絡線整備のうち相鉄本線西谷駅接続部分の工事と速達性向上の一環として整備する相鉄本線瀬谷駅下り待避線の新設、相鉄本線内の信号設備改修工事は鉄道・運輸機構から相模鉄道に委託して工事を進めている。
 また、JR東海道貨物線に接続するJR貨物の横浜羽沢駅付近の工事については、JR東日本に施行委託する予定となっている。



相模鉄道とJR貨物線を結ぶ神奈川東部方面線鉄道が着工

――都市鉄道等利便増進法第一号に指定された国内初の事例に

神奈川県 【特集】神奈川東部方面線鉄道

この路線では、貨物駅と市道の間に新駅として羽沢駅(仮称)が設置される。JR貨物線や交通量の多い市道環状2号線への影響を抑えるためで、路線の大部分が地下式構造となる西谷~羽沢駅間から、地表構造である東海道貨物線と連絡するため、軌道階は地下2階に設定された。この新駅によって、周辺の住宅や横浜国立大学等へのアクセスは大幅に向上することが期待される。予想乗降客数は、開業時は一日につき約1.0万人、相鉄・東急直通線開業時には約1.6万人と想定されている。
 駅の基本構造は、相対式2面2線が採用され、コンコースとなる地上部には建築上屋を設置し、ホームが設置される地下部分は、主に2層3径間の箱型構造の半地下駅である。
 開削工法により施工される駅の端部は、西谷駅から羽沢駅(仮称)間のトンネルをシールド機で掘削するための作業用立坑として利用する計画としている。
 西谷駅から羽沢駅(仮称)間に設ける西谷トンネルの施工区域は、地表部分に民家が密集した市街地であり、トンネルの途中では国道16号線、河川の分水路トンネルや電力会社の大型管路等と交差する条件下での施工になるが、トンネルを設ける深さの地質は比較的良質な上総層内であることから、近接構造物への影響、地質、地下水等から施工時の周辺環境の安全を第一に経済性を含めて総合的に判断した結果、シールド機械を用いて覆工コンクリートを現場で打設するトンネル掘削工法であるSENSが採用された。
 SENSは、近年東北新幹線で開発された新技術によるもので、密閉型シールド機械により切羽の安定を図りながら、シールド機による掘進と並行して掘削が完了した後方にコンクリートを打設して覆工する工法で、市街地のトンネルに採用するのは初めてのケースであるとのことである。
 トンネルの設計・施工にあたっては、市街地での環境を考慮して、コンクリートの性能向上や施工上の課題を回避した上で、地上の施設や交差する構造物への影響に十分配慮した施工計画を策定し施工するとのことである。


▲羽沢駅(仮称)の計画図


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