建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年9月号〉

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築15年を迎えた国内最大級の東京国際フォーラムが本格的大規模改修

――設備の更新だけでなく高度化と省エネ化も実現

東京都 東京国際フォーラム改修工事


東京国際フォーラムは、1996年(平成8年)に竣工、1997年(平成9年)にオープンし、今年で満15年目を迎えた。敷地面積約27,000u、延床面積約145,000uという大規模建築は、5,000人収容のホールA、1,500人収容のホールCのほか、平土間形式のホール群を含め、さまざまなイベントに対応する施設となっている。さらには展示場、会議室等を持った複合型コンベンションとしての機能も有し、高い運用率で年中無休で全施設が運用されている。
 そこで、舞台設備等の機能維持、その他運用率の高さに起因する劣化更新、さらには、継続運用下での計画的な更新タイミングの立案と調整等の条件をふまえ、2008年(平成20年)に「中期修繕計画」により立案し、年次計画としての現在の改修施工は、昨年の10月に着工、来年の3月に竣工の工期で、工事が進捗している。

建築改修工事
 主に経年劣化による機能低下、美観維持を目的として、外部の塗装工事、サッシュシール材の補修、各所コーティング工事を行う。また内部では、ホールA及びCの舞台について、工期内に1〜2ヶ月程度の休館期間を設け、ヒノキ床材の全面張替え及び塗装を行う(ホールAについては2011年3月に完了)。また、楽屋についてもホール休館と同時期に床、壁、天井仕上げの改修を行う。
さらに、改修施工のタイミングを活用し、利用者の安全性向上のため、各階段へ手摺りの設置、ガラス棟吹抜け部の点字鋲を弱視対応型に変更するなどの改修も併せて行う。

電気設備改修工事
 経年劣化による設備更新として、特に大規模なものは、太陽光発電設備と中央監視設備の更新が挙げられる。太陽光発電設備は、屋上太陽光パネルを更新し、さらなる発電効率の向上を図るとともに、現況の蓄電池を使用した蓄電システムから、経済性の高い商用並列運転型に変更することで、より効率良く自然エネルギーの活用を図る。
 中央監視設備については、システムの老朽化による部品調達や維持管理、信頼性の低下を回避すべく、BACNetを基幹とした汎用システムにより再構築し、さらなる高機能と信頼性、維持管理性の向上を図る。また、システムの更新タイミングを活用し、エネルギー計測機能を強化することで、今後のエネルギー管理に対する情報提供能力を向上させる。
 照明設備は、更新改修に併せ、現在主体光源となっている白熱ランプ及びハロゲンランプを、器具意匠や光学的配光特性はそのままに、LEDもしくはメタルハライド系(CDM)に更新し、電力エネルギー縮減を図る。誘導灯もLED仕様にて更新し、同様に電力エネルギーを縮減する。
 また、ヘッドエンド設備や館内AVネットワークシステムは、時代動向に併せ、デジタル化による機器更新を行う。イベント・コンベンション施設として、さらなる高機能化は、今後の誘致・集客能力を高め、営業的なメリットも高く評価できるものとなる。


▲ホールA ▲プラザ(広場)


空調設備改修工事
 機器運転開始後15年が経過し、その間の稼働率も非常に高く、加えて耐用年数経過、経年劣化による性能低下が懸念され始めていることを受け、全館に数多く設置されている空調機の内、今期はガラス棟系統の空調機について改修を行う。機器の改修にあたっては、単純更新とはせず、効率の非常に高い磁気性モータ(IPMモータ)を採用することで、高効率化による省エネルギー化を図ると共に、CO2排出量削減などの環境性能向上にも寄与する。また、機器冷却用であり、居室ではない電気室系統の空調機についても磁気性モータ(IPMモータ)の導入を目的とした改修を行うことで、さらなる電力エネルギー縮減を図る。
給水衛生設備改修工事
 今期の設備更新として主なものは、太陽熱利用設備と排水再利用設備の改修がある。本施設の給湯設備は中央式給湯設備となっており、その熱源として太陽熱を利用している。今期の改修では、既存の太陽熱利用設備を今以上に効率良く利用できるようにするため、今までの運用実績を基に給湯使用率、太陽熱利用率を見直し、システム全体の改修を行う。さらに蓄熱槽と貯湯槽の容量バランスの再検討、太陽熱系統の配管をリバースリタン方式にするなど、さらなる太陽熱利用率向上を目指し、省エネルギー化を図る。
 また、本施設では排水再利用設備として、雑排水及び厨房排水を便所洗浄水に利用できるよう、現在は「凝集加圧浮上+限外ろ過膜」を導入している。システム運用開始後15年が経過し、近年では経年劣化による臭いの発生、効率低下、それらに伴うメンテナンス費増加が懸念されており、今期においてシステム全体の改修を行う。新システムには、臭いの発生低減、低メンテナンス化を目的とし、「活性汚泥+精密ろ過膜」を導入する。また、システムを「活性汚泥+精密ろ過膜」とすることで、大幅な動力低減となることから、さらなる省エネルギー化にも寄与する。




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