建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年8月号〉

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南本牧ふ頭に新たな廃棄物最終処分場を造成

――長期にわたり快適な市民生活を保証

横浜市港湾局 南本牧ふ頭第5ブロック廃棄物最終処分場

▲完成予想図 ▲南本牧ふ頭 位置図

横浜市では、市民・事業者・行政が一体となってごみの減量・リサイクルを推進しており、埋立処分量の削減に努めているが、焼却工場から搬入された焼却灰などを埋立処分するため、南本牧ふ頭に第5ブロック廃棄物最終処分場の達成を進めている。
 横浜市一般廃棄物処理基本計画「ヨコハマ3R夢(スリム)プラン」(平成22〜37年度)を策定し、徹底したごみの減量・リサイクルを進める一方、現在供用中の南本牧廃棄物最終処分場(第2ブロック)を有効活用することで、平成29年度までは、廃棄物の埋立処分が可能となる見込みだが、29年度以降もさらに快適な市民生活が維持できるよう、南本牧ふ頭第5ブロック内に新しい処分場を整備している。

▲第5ブロック処分場 全体図

最終処分場の外周は遮水護岸で囲み、廃棄物を投入する区画から外部に水が漏出しない構造としている。
 この遮水護岸の構造は、廃棄物を投入する水域と、周囲を遮断する「本体部分」と、それを支えるための「基礎部分」とに分類される。「本体部分」は「鋼板セルタイプ」と「ケーソンタイプ」の2種類の構造形式で整備を行う。
 鋼板セルタイプは、遮水護岸の外側を建設発生土で先行して埋立てる区間に用いられ、片方から大きな力が加わっても、その圧力に耐えられるようになっている。
 ケーソンタイプは、「均等埋立て」を行う区域に用いられ、この「均等埋立て」は、遮水護岸内側への廃棄物の投入に合わせて、外側の建設発生土を埋立てることで、遮水護岸に片側から大きな力が加わらないように工夫されている。
 このように「均等埋立て」を行うことにより、スリムな構造とすることができ、建設費の縮減を図っている。
 最終処分場に埋め立てられる焼却灰については、従来と同様に運搬途中や埋立作業中に灰が飛散しないよう、焼却工場の中で、焼却灰は水に湿らせた後に、集じん灰はセメントで固形化処理した後に処分地に運搬する。
 また、処分場内の余水については、排水処理施設により処理・浄化し、周辺環境に影響を与えないレベルに処理した後、場外に排出するとともに、周辺海域の環境調査を定期的に実施するなど、周辺地域の環境保全に配慮し、適正な管理に努めることとしている。

▲遮水護岸断面図(鋼板セルタイプ) ▲遮水護岸断面図(ケーソンタイプ)



【寄稿】南本牧ふ頭第5ブロックにおける深層混合処理

南本牧ふ頭第5ブロック廃棄物最終処分場(仮称)建設工事(その11・地盤改良工)
五洋・東洋建設共同企業体 渡邊 雅哉



今回ご紹介する南本牧ふ頭第5ブロック廃棄物最終処分場(仮称)建設工事(その11・地盤改良工)は、総延長約1.7kmの護岸(遮水護岸)の一部、延長約200m範囲の深層混合処理工法(以下,CDM)による地盤改良工事を請け負っている。ケーソン・鋼管セルの本体部分の基礎となる基礎部分においては、CDMによる地盤改良を行い水面下の軟弱土砂の遮水性を確保するとともに、護岸の滑り防止、沈下量の抑制及び地盤支持力の増加を目的としている。
 第5ブロック処分場の元々の在来地盤高(水深)は,YP-30.0m〜-35.0m程度であった。その上に港湾および河川より発生した浚渫土および建設発生土をYP-8.0m程度まで埋立を行った。層厚約20m以上の埋立土と基盤層(土丹層)までの在来粘性土が、CDMにて改良する対象土となる。CDMは、在来する軟弱地盤を改良するのが主の目的で開発され、開発されてから約30年間の間で、海上における海面下の埋立土を地盤改良することは稀であった。埋立土は、様々な土質が混在することが予想されたため、事前調査で試料採取を行い、事前配合試験を実施し、その結果に基づき改良土の配合設定を行う。また、施工後にチェックボーリングを実施し改良地盤の品質確認を行う。

▲深層混合処理船 ▲改良杭先端(写真は海水吐出状況)

CDM対象土の埋立土は、平均30m間隔でボーリング調査を行い土質の確認を行っている。土質の物性調査の結果を用いて深度方向に3層に分類を行い、層毎に設計強度に対する配合(セメント添加量)を設定している。なお、在来地盤の粘性土に関しても同様に3層に分類を行い配合の設定をしている。その結果、1本の改良体を造成するため地層を6層に分類した。全ての層で配合量が異なれば最大6種類の異なるセメント添加量となり、土質に合わせて合理的な配合管理となる。なお、土質のばらつぎが多い埋立土層などを1点のボーリング調査結果で平面的に全てをカバーすることは、危険側に推移する恐れがあるため、隣接ブロックの結果を考慮して、安全側になるよう土質毎のセメント添加量を決定している。
 埋立土の地盤改良以外の特徴として当工事では、材令91日による強度評価を採用している。セメントなどを使用するコンクリート等の強度を評価する材令は,28日を目標とする事例が多い。しかし、セメント系地盤改良工事のCDM等では、10年以上経過した改良体でも強度発現が継続することが報告され、近年、材令91日で強度評価をする事例が増えてきている。当工事においても、CDM設計強度の必要な時期がCDM完了後2年後となるため、材令91日で強度評価する設計としている。ただし、工程の関係上,事前調査(室内配合試験)から本施工(CDM打設)まで91日以下の短期間しかない場合は、σ91の結果を待たずに施工することになる。その際は、材令28日で材令91日までの強度増加を見越した評価を行い、本施工を開始しσ91の結果を得た時点で施工途中にσ91による配合の見直しを行う。
 CDMでは大量の固化材を使用するが、当工事では高炉セメントB種を採用している。高炉セメントB種は、普通ポルトランドセメントより初期強度の遅いセメントではあるが、材令91日での強度評価を採用することで十分に強度発現の確認が可能となり、省資源化、省エネルギーで地球温暖化対策に貢献できる。
 今後、CDM船による施工が繁忙期を迎える。限られた海域の中、他工事および作業船・材料供給船の輻輳作業が増えていく上で、安全施工を徹底し、無事故無災害で無事竣工を迎えられるよう努力する所存です。

処分場の概要
【処分場の種類】管理型処分場
【処分場面積】約16.4ha(遮水護岸内側)
【受入廃棄物】一般廃棄物、産業廃棄物
【受入期間】埋め立て開始から概ね50年
【遮水護岸延長】約1,700m
【開設予定時期】平成29年度を目指している


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