建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年8月号〉

寄稿

「ひょうご21世紀県営住宅整備・管理計画」の概要と整備事業内容について



兵庫県 建築住宅局 公営住宅課
課長 槇林 正樹


 兵庫県では平成12年度に策定した「ひょうご21世紀県営住宅整備・管理計画」に基づいて事業を推進してきたところですが、計画期間の前期5年が経過し、公営住宅を取り巻く状況の変化や、現計画を事業化する中では、様々な問題も顕在化してきました。そのため現計画の内容を見直すとともに、新たな課題などへの対応を付加し改訂しました。
 平成12年度における現計画策定して後、我が国は人口減少社会の到来、少子高齢化の一層の進展、環境問題の深刻化、防災・防犯ニーズの高まりなど、より一層重要度を増す社会経済情勢が大きく変化しました。地方分権が進む中、地域や住民、NPOなどの役割も重視されるようになりました。

 それらを背景に、公営住宅制度をめぐる諸制度の改正をはじめ、市場重視・民間重視という方向が打ち出され、公営住宅の役割は、あくまでも市場で対応できないも需要への対応とという役割が示されるなど、県営住宅の供給方針も大きく変化しました。
 そのため、県としては、阪神・淡路大震災の教訓やその後の復旧・復興の歩みを受けて、「参画と協働」によるコミュニティの重視や、「ひょうごの元気」の創出などが重要テーマとなっています。また、県営住宅においては、多様なニーズに対応した、より効率的で効果的な整備・管理の推進が求められるようになっています。

▲西宮真砂高層耐震改修(完成後) ▲中層住棟へのエレベーター設置を行う新型改修事業

 そのため、平成18年に「ひょうご21世紀県営住宅整備・管理計画」を改訂し、計画期間を平成18年から27年までの10カ年として、10年後の県営住宅の目標ストック量を従来の54,900戸より2,000戸減の53,000戸と設定。全体で建替5,500戸、借上げ約400戸、新型改修9,000戸、大規模改修300戸、耐震改修2,100戸、高齢者改善300戸を整備することとしました。
 そして、目標は「現有ストックの有効活用による多様な住宅困窮世帯への住宅供給」、「広域的住宅需要への対応」、「次世代を先導する住宅モデルの提供」、「県域に共通性の高い課題や地域政策への貢献」と設定しました。
 これに基づき、現有ストックの有効活用に向けては、住宅市場において自力で適正な居住水準の住宅を確保できない低所得世帯や、高齢世帯、障害者、外国人、DV被害者、犯罪被害者など、民間住宅では入居制限を受けやすい世帯、また市場では十分に供給されづらいために、公営住宅として求められている子育て世帯や高齢世帯向け住宅の供給に取り組んでいます。
 地域性を考慮した広域的住宅需要に応えるためには、阪神地域、中核都市など県土構造に応じた広域需要に対応し、また広域災害等緊急時に備えて、市町域を越えた緊急住宅を供給しています。
 次世代を先導する住宅モデルの提供に向けては、木造新構法、ストック活用技術、環境配慮、ユニバーサルデザインなどを積極的に導入しています。
 県域に共通性の高い課題や地域政策への貢献に向けては、県産材活用などの県域共通課題や地域活性化などの地域政策に対応することで貢献しています。
 整備においては、効率的・効果的なストックの改善・活用のため、耐震性に問題があり早期の整備を要する住棟は緊急性を勘案し、優先順位をつけて耐震改修又は建替による早期の耐震化を進めています。計画最終年には93%の耐震化率を目指しています。

▲県営尼崎西川第2住宅 完成予想図

 バリアフリー化の推進に向けては、中層住棟へのエレベーター設置をはじめ、玄関、便所、洗面台、浴室などへの手摺設置。段差解消、階段の上り下りに負担を軽減する階段室型エレベーターの設置。給湯器は、浴室と流しと個別に設置していたものを、一つで浴室、流しへの2ヶ所給湯に変更。浴槽はまたぎ高さが低くなるものへ取替え、流し台も低いものに交換。洗面台、流し台等はレバーハンドルに変換する新型改修事業を、今後改修事業の中心として実施しています。このことにより27年度には64%のバリアフリー化率を目指しています。
 居住安定に資する住宅整備を目指し、県の「防犯に配慮した住宅に係る設計指針」(平成18年度作成予定)等に基づき、周囲からの見通しに配慮した配置計画や防犯性に優れた住戸設計としています。シックハウス対策としては、適正な換気設備の設置と揮発性有機化合物の放散が極めて少ない建材を使用することで、化学物質による室内空気汚染の排除を徹底しています。障害者などの住宅困窮ニーズに対応するため、主して建替事業を対象に、車いす利用者向け住宅の整備を行っています。
 次世代を拓くストックの先導的整備を実践するため、木造新構法(j.Pod)のモデル事業を実施しています。県産材を活用した木造住宅新構法(j.Podシステム)を開発し、モデル住宅の整備を行うとともに、一般住宅への普及にも努めることとしています。

▲木造新構法(j.Pod)のモデル実施 ▲屋上緑化等の導入による地球環境に配慮したモデル整備

 また、地域産業の活性化や森林保全を図るため、住戸の内装に県産材を活用した住宅の整備を進めるとともに、一般住宅への普及にも努めています。27年度の浸透率としては、50%を目標としています。
 その他、屋上緑化等の導入による地球環境に配慮したモデル整備を実施しており、環境負荷の低減を図るため、屋上緑化やグラスパーキングの整備をはじめ、太陽光、風力などのクリーンエネルギーを活用し、環境に配慮した団地のモデル整備を行うこととしています。
 コミュニティ形成を促す住宅を実現するため、ミックストコミュニティを実現する型別供給を推進しており、主として建替事業を対象に、型別供給計画に基づき家族数に応じた様々な規模の住戸を整備し、バランスの取れたコミュニティ形成を図ることにしています。
 また、団地外との地域コミュニティ形成を促すため、地域に開かれたコミュニティプラザや広場・公園なども整備しています。特に、大規模団地においては、地域市町関係各課との連携を図りながら、地域需要を踏まえた地域貢献型生活拠点として、福祉施設や生活支援サービス施設の併設を検討しています。


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