建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年7月号〉

寄稿

雄大な自然環境・景観を生かし、地域を支える交通ネットワークの形成

後志総合振興局 副局長 桶田 謙一

桶田 謙一 おけた・けんいち
昭和29年3月30日生まれ 泊村出身
昭和53年1月 札幌土木現業所美唄ダム建設事務所
平成 6年4月 土木部総務課主査(計画)
平成 7年6月 土木部管理課開発推進係長
平成10年4月 網走土木現業所工事契約課主幹
平成12年4月 札幌土木現業所工事契約課主幹
平成14年4月 建設部建設管理局技術管理課主幹
平成17年4月 (財)北海道建設技術センタ−企画研修部長
平成20年4月 建設部建設管理局技術管理課長
平成23年6月 現職


1.はじめに

 冒頭で、東日本大震災及び福島第一原発事故の被害に遭われた方へ心からお見舞い申し上げます。
 後志管内は羊蹄山や積丹ブルーを眼下に望む神威岬など多くの景勝地に恵まれ、また、歴史的遺産を活かした「小樽運河」や豪州などの外国人が多数訪れるスキーリゾートのニセコ地区をかかえ、国内外から年間二千万人以上の観光客が訪れる本道を代表する観光圏となっており、果実をはじめ新鮮な農水産物やおいしい水など多くの食資源にも恵まれ、両者を組み合わせた“しりべしの食と観光”の取組みが盛んに行われております。
 また、管内では「北海道新幹線の札幌延伸」と「黒松内・余市間の北海道横断自動車道着工」という二大プロジェクトの実現に向け検討が進められており、これらが実現することにより、管内の経済と産業の活性化や生活環境の向上が大いに期待されるところです。
 当部では、この後志地域が有する雄大な自然環境を生かし、景観にも配慮しながら事業を推進することをはじめ、検討が進むプロジェクトに的確に対応しながら、安全・安心な暮らしを支えるための交通ネットワークの形成とモビリティの向上や交通安全の確保、自然災害に対する防災対策を推進することで、魅力と活力ある地域づくりを応援し、安全・安心な暮らしに必要な社会基盤整備を効率よく確実に進めてまいります。


2.平成23年度当初予算(道州除く)

 小樽建設管理部の平成23年度公共(補助)事業予算は、76箇所、約92億8千4百万円(対前年度当初比87.4%)となっています。
 事業別では、道路事業は、34箇所、46億8千6百万円(対前年比91.7%)、街路事業は、1箇所、4千5百万円(対前年比6.1%)、河川事業は、15箇所、23億3千2百万円(対前年比87.1%)、砂防関係事業は、17箇所、10億9千6百万円(対前年比87.0%)、漁港関係事業は、9箇所、11億2千6百万円(対前年比134.0%)を予定しておりますが、東日本大震災の復興、復旧のための予算としてこの内5%が保留されています。


3.各事業の概要

<道路事業>
 広域交通ネットワークの形成と地域産業支援のための道路整備として、余市町と赤井川村を結ぶ余市赤井川線の冷水トンネルは昨年貫通し、前後の道路改良と合わせ、早期完成へ向け鋭意取り組んでいるところであり、倶知安町山田地区のニセコ高原比羅夫線(ひらふ坂)では新規に工事着手します。
 また、昨年7月被災した古平神恵内線の廻り淵橋の下部工に着手し、平成24年度には上部工を施工し、完成を目指します。
 北海道横断自動車道余市・小樽間の小樽西ICと小樽環状線のアクセス道路である小樽西インター線の整備も計画的に進めます。
 安全で円滑な冬期交通の確保のため、倶知安ニセコ線、仁木赤井川線などで雪崩対策や拡幅などの整備を推進します。
 歩行者などの安全を守る交通安全施設の整備では、蘭越町の相生蘭越線、ニセコ町のニセコ停車場線など歩道整備を促進します。
 災害に対する安全・安心な通行確保のため、古平神恵内線、小樽定山渓線などで地すべり対策の整備を進めます。

▲余市赤井川線道路改良(冷水トンネル) ▲栄町温泉線交付金交安(路盤工外) ▲倶知安ニセコ線交付金工事(雪崩防止柵)(繰越)


<街路事業>
 岩内町の岩内洞爺線(3・4・3停車場通L=1,370m)が今年度より事業着手となります。


<河川事業>
 洪水被害から人命や財産を守る河川整備として、余市川(余市町)、堀株川(共和町)、尻別川(喜茂別町、ニセコ町、京極町)、朱太川(寿都町、黒松内町)では引き続き、掘削や築堤、護岸等、河川環境の保全に努め整備を進めます。
 小樽市の勝納川では、環境整備事業として、憩いと潤いのある水辺空間の形成を図り周辺景観に配慮した護岸、散策路等の整備を進めます。


▲勝納川改修工事


<ダム事業>
 砂防事業は、土石流対策として整備を進めてきた小樽市の柾里川や寿都町の神社の川が完成の予定であり、新規に小樽市のトヨクラ川や喜茂別町の駅裏沢川に着手するほか、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域の指定などソフト対策を促進します。
 がけ崩れによる土砂災害を防止する急傾斜地崩壊対策事業は、小樽市内において塩谷2丁目1地区の完成を図り、新規に小樽市銭函2丁目2地区及び泊泊村15地区・16地区に着手します。
 地すべり対策事業は、喜茂別町の鈴川(2)地区で引き続き、整備を進めます。
 建設海岸では、引き続き小樽市の銭函海岸で離岸堤など整備し、侵食防止対策を図ります。

▲テンジン川砂防工事


<漁港事業>
 水産物の安定的な供給と漁業活動の安全・安心の向上を図るため、地域水産物供給基盤整備事業により、管内では神恵内村の神恵内漁港、島牧村の厚瀬漁港・軽臼漁港、積丹町の日司漁港の4港で防波堤など施設整備を推進します。

<漁港海岸事業>
 積丹町の美国漁港海岸では環境整備事業により、海岸保全と併せて、緑地広場や駐車場など総合レクリエーション機能の整備を推進します。また、寿都町の美谷漁港海岸では災害防止、軽減のため高潮対策により離岸堤の整備を推進します。



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