建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年7月号〉

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高度浄水処理機能を持った新石川浄水場

――調整池上部の多目的広場と埋立護岸に親水空間を創出し地域に開放

沖縄県企業局 新石川浄水場

▲新石川浄水場完成予想図

▲位置図

石川浄水場は、昭和42年に琉球水道公社によって建設され、50年に拡張工事を行い、施設能力150,000m3/日の基幹浄水場として整備され、沖縄本島の給水量の約30%を担ってきた。しかし、建設後30数年が経過し、コンクリートの劣化や設備の老朽化が進み、浄水場の運転に影響を及ぼす故障が増えてきていた。将来の水需要の増加に対応するには、修繕だけでなく供給能力をさらに向上させることが求められるが、現石川浄水場の敷地(4.38ha)は、うるま市の中学校や住宅地に隣接していることから、既存施設の拡張は不可能となっていた。
 このため、現在の石川浄水場をうるま市石川東恩納地先の埋立地内(13ha原水調整池も含む)に移転し、新石川浄水場として拡張移転することにした。そこで関連施設として、浄水場建設地内には原水調整池、うるま市内に高区浄水調整池、低区浄水調整池も建設に着手している。
 この原水調整池・浄水調整池は水質事故、災害による断水などの影響を抑え、夏場の急激な水需要の増加に対応するなど、安定供給のための施設となる。その他、那覇市上間調整池に至る46kmの管路整備も進められており、これらが完成すれば日量165,600m3(既設:150,000m3/日)の供給能力を持つことになる。これによって、うるま市をはじめ金武町、恩納村以南の15市町村に対し、水の安定供給が確保出来るものと期待される。
 水質確保のため、高度浄水処理施設の追加整備も行っている。現在の石川浄水場では、塩素消毒によって生ずるトリハロメタン対策として、中間塩素処理方式などの低減策を行っているが、今後は水源水質の変動により、トリハロメタン濃度の上昇も予想されることから、新石川浄水場についても、より安全でおいしい水を供給するため、トリハロメタン対策に有効なオゾン処理や粒状活性炭処理などの高度浄水処理施設を導入することにした。

▲護岸先端部完成予想図(左:飛沫防止用の緩衝緑地、右:金武湾の眺望)

これらの基本計画に基づき、施設設計に当たっては「安心して飲めるおいしい水の供給」、「渇水や地震などの自然災害に強い施設」、「供給の安定化・耐震化」、「供給水のコスト削減を追求した施設」、「周辺環境に調和した親しまれる施設景観」、「公共施設としての有効利用が可能な施設」「水道事業の広報活動に利用できる施設」などを基本方針として設定した。
 この方針にしたがい、用地の有効活用と親水性空間の形成に向けて、浄水池と原水調整池の上部は多目的広場として覆土を行い、埋立護岸の一部は水辺の広場として緩傾斜護岸形式で整備し、地域住民や県民に開放する。また、環境に優しいクリーンエネルギーの導入可能性についても検討を行い、導水管の水圧を利用した小水力発電設備を整備している。
 工事は現在、低区浄水調整池の建設が進められている。新石川浄水場の送水区域を、沖縄市以北の市町村を給水系統とする高区系と、主に南部地域を給水系統とする低区系に分け、安定供給、エネルギー効率を考慮して両区系にそれぞれ個別に整備している。
 これに合わせて連絡管についても、送水系統に建設する高区系と低区系の両浄水調整池と、新石川浄水場及び既設送水管とを結ぶ形で整備されている。

▲傾斜護岸完成予想図(海とふれあえる親水護岸)



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