建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年3月号〉

寄稿 北海道農政部・農業農村整備特集

平成22年度釧路総合振興局管内農業農村整備事業の概要

釧路総合振興局 産業振興部 農村振興課 課長 梶田 克博


 釧路総合振興局管内は、北海道の東部に位置し、広さは北海道の約7%で茨城県に匹敵する5,997kuを有しています。うち森林面積が約65%、農地が15%(91,500ha)を占め、我が国最大の釧路湿原や摩周湖・阿寒湖の湖沼をはじめ、豊かな自然に恵まれた一次産業が盛んな地域です。


釧路管内の農業の概要
 気候は春から夏にかけて釧路特有の「じり」と呼ばれる霧が発生するため、夏季における日照時間が短く、8月でも平均気温が17.8℃と冷涼で、併せて、年間降水量が1,000mm未満と少ないため、内陸部を除き、水田や畑作物の栽培に適さない状況となっています。
 そのため、農家戸数1,490戸のうち9割が畜産農家で、乳用牛飼養頭数が12万1千頭、年間生乳量は53万tを生産(農家1戸当たりの草地面積は、約60ha、乳用牛飼養頭数は110頭)し、生産農業所得は北海道平均の1.3倍に達するなど、道内でも有数の酪農専業地帯を形成しています。
 生乳出荷量の2割は高速貨物船「ほくれん丸」により毎日関東方面に移出する一方、地元向けの生乳の生産や、アイスクリーム・チーズなどの乳製品加工・販売も盛んに行われています。また、内陸部の畑地では馬鈴薯や甜菜、そばが中心ですが、冷涼な気候を活かして大根やほうれん草、キャベツなどが栽培され、地場野菜として好評を博しています。


農業農村整備事業の概要と課題
 平成22年度の釧路管内の農業農村整備事業は、当初予算事業費ベースで道営事業が21地区901百万円、団体営事業が7地区176百万円、公社営事業が7地区736百万円の合計36地区1,813百万円により、飼料自給率の向上と畜産環境の総合的な整備を進めています。当課所管の道営事業としては、予算の約6割を占める草地整備を中心に農道や排水路、魚道の整備、公共牧場の育成牛舎の増設などの環境整備を行っています。
 酪農経営を取り巻く状況は大変厳しく、担い手農業者の減少や後継者不足による農業従事者の減少と高齢化が着実に進行しており、遊休農地・離農跡地の活用や農業用施設の維持管理、引いては地域社会の維持に深刻な影響が懸念される中、平成19年度に創設された「農地・水・環境保全向上対策」により、弟子屈町の畑地地域と標茶町の酪農専業地帯において農村地域の活性化と農業用施設の保全・管理を目指した取り組みが農業者と地域住民の協働で実施されているところです。
 また、一方、平成22年度に従来の補助制度から交付金制度が導入されるなど予算の仕組みが大きく変わるとともに、戸別所得補償制度の導入に伴う農業農村整備事業予算の大幅削減が行われ、農家の営農計画の見直しと今後の計画的な事業の執行に対する影響が懸念されるところです。


その他の課題
 全道的にエゾシカの急増による農産物・森林被害が大きな問題となっていますが、中でも釧路管内の被害は極めて深刻で、年間全道被害額推計の51億円に対し11億円にまでなっています。エゾシカ食害から農産物を守る対策として一部の農地で鳥獣害防止柵設置を行っていますが、管内全域に広がる草地を囲うことは不可能に近く、また、地方の自治体だけの取り組みでは限界があることからその対策に苦慮しているところです。
 最後に、食糧自給率の向上と持続的な農業・農村の発展のため、地域農家や住民の皆さんとの連携を一層深めるともに、知恵を出し合いながら釧路地域の酪農振興に貢献していきたいと考えています。



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