建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年3月号〉

寄稿 北海道農政部・農業農村整備特集

平成22年度日高振興局管内農業農村整備事業概要

日高振興局 産業振興部 農村振興課 課長 成田 貞徳


地勢
 日高振興局管内は、北海道中央南部に位置し、太平洋に面した長方形の地域であります。面積は、4,811.97kmで北海道の面積の5.8%を占めています。
 豊富な森林資源に恵まれた地域である一方、面積の8割以上が山林で占められているため平野部が少なく、海岸線に沿って走る国道に対する交通依存度が高いことと相まって、実際以上に細長い地域という印象を受けます。

日高管内の農業
 管内の農業は、軽種馬の生産をはじめ稲作、畑作、酪農、畜産が行われています。
 なかでも軽種馬の生産については、戦後本州・九州における生産が縮小していく中、一大生産地としての地位と役割を担ってきており、世界でも例をみないほどの集積された生産拠点となっています。  畑作では、平取町を中心として生産されているトマトや新冠町のピーマンが全道一の生産を誇っているほか、新ひだか町のミニトマトなどの特産品があります。
 平取町では、著名人のトマト大使委嘱による広報活動などで一層のブランド力向上を図り、トマトジュース・ケチャップ・ゼリー・アイスクリーム等高付加価値商品の開発にも積極的です。
 また、稲作においては、各地域毎に独自ブランドによる販売を手がけており、馬産地にちなんだ「万馬券」「馬舞米(うまいべ)」、義経伝説にちなんだ「判官伝説」といったユニークな名称が目を引きます。
 畜産においては、平取牛・三石牛といった優れた和牛の生産が行われている一方、希少な短角牛を守りファームインや食育活動などを通じ情報発信を続けている方がおられます。
 このように、狭い平地や不便な交通といった決して恵まれているとはいえない条件の中、各分野とも様々な着想と工夫で活動されているバイタリティーあふれる農業者の多い地域であります。

農業農村整備事業の概要と現状
 平成22年度の農業農村整備事業は当初予算で道営が11地区831百万円、団体営が4地区36百万円となっております。
 道営事業の実施内容は、新冠町で公共牧場の整備(草地整備事業)、平取町・日高町・新冠町で土地改良(中山間地域総合整備事業/暗渠、客土、除礫等)、新ひだか町・新冠町で農道整備(広域営農団地農道整備事業・一般農道整備事業)、日高町で農道の保全工事(基幹農道整備事業)、新冠町・平取町で地すべり防止対策事業、日高町で海岸保全施設整備事業を行っています。
 このうち平成22年度に新規着手した道営草地整備事業(公共牧場中核型)「元神部地区」は、新冠町の町有牧野の整備を行うもので、全牧野面積の7割近い223.3haの草地整備を行うものです。町ではこれまで、自力で草地整備を進めてきましたが、牧区の再編と併せて、草地の整備を大々的に実施し、地域の乳牛や肉牛の育成牛等を安定して預かると同時に地域への牧草の提供も検討されています。
 本事業では草地整備と併せて、その母牛の資質(体高、霜降り具合など6項目)を評価し、その母牛に対する父牛の選定、あるいは、よりよい母牛を選抜していくことを目的に、肉用牛の肥育施設等も整備されます。
 この施設の完成により町営牧野において、農業者から仔牛を預かり、肥育・出荷する体制が整います。
 また、昨年度、冷湿害に対する暗渠排水の効果が改めて評価されましたが、国の予算削減により本年度に実施が見込めなくなった農地等を対象に道単独事業として「緊急農地排水対策事業」が創設されました。
 この事業は、管内でも団体営として実施されています。
 先ほどもふれましたが、管内の交通環境は必ずしも良好とはいえず、農産品や軽種馬の輸送において日高自動車道延伸に対する期待が非常に大きい中、農業農村整備事業としても農道の整備・維持保全を通して地域の物流に貢献するとともに、農業農村整備事業の本務であります土地改良を通じて、がんばる農業者の方々をサポートさせていただきたいと考えております。



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