建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年3月号〉

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幅広いビジネス実務教育と資格取得によって就職氷河期を強く生き抜く人材を育成

―― 石和高校と山梨園芸高校を統合して900人規模のマンモス校に再編

山梨県教育委員会 笛吹高等学校


▲笛吹高等学校 パース


 山梨県立笛吹高等学校の校舎がこの3月に竣工した。この高校は山梨県教育委員会が策定した前構想である平成8年の「高等学校整備新構想」に基づき、石和高等学校と山梨園芸高等学校を統合したもので、生徒数が900人に上る県内でも最大のマンモス校となった。
 新体制としてスタートした同校では、教育目標を「自己の可能性を信じ、何ごとにも主体的にチャレンジする生徒の育成」と「広い視野を持ち地域社会の形成すすんで参画できる生徒の育成」としており、このため教育方針と学校運営に当たっては、個を生かし、未来を拓く自立した生徒の育成、個を高めて互いに切磋琢磨できる環境づくり、学校・家庭・地域が一体となった学校運営を進めていくことを基本方針としている。
 この理念に基づき、普通科、食品化学科、果樹園芸科、総合学科の4科が設定された。普通科は大学進学志望者を対象としており、英語、数学、国語など、全生徒が共通に学ぶ普通科目で構成される。指導に当たっては、個人の学力に応じた少人数指導が行われ、英語検定や漢字検定、数学検定の資格取得が可能だ。
 食品化学科は、農業情報処理、食品製造、食品化学、ワイン製造、微生物基礎、課題研究といった、食品に関する専門科目を中心に学科構成され、食品関係の基礎知識や技術の習得に向けて指導する。食品加工、栄養分析などの学習を通じ、関連産業のスペシャリストとしての育成を目指す。したがって、このコースで取得できる資格は公害防止管理者(水質)、情報処理技能検定、プレゼンテーション検定、2級小規模ボイラー技士、危険物取扱責任者、毒物劇物取扱者など、より専門的なものとなる。
 果樹園芸科は、野菜、草花、農業経済、果樹T・U・V、果樹産業論、植物バイオテクノロジー、生物活用、グリーンライフといった、果樹栽培や園芸に関する専門科目を中心に学科構成。果樹栽培や園芸に関する基礎知識と技術だけでなく、農業経営についての知識、技術を習得する。取得可能な資格は、日本農業技術検定、情報処理検定、フラワー装飾検定3級、大型特殊自動車(限定)、危険物取扱者など、農業実務に役立つものとなる。
 総合学科は普通科と専門科を合わせた幅広い選択科目から、自分で科目を選択できるシステムとなっており、選択分野は「環境・緑地系列」、「情報・観光系列」、「国際文化系列」、「人間科学系列」の4つに大分されている。
 「環境・緑地系列」は、自然環境について考え、住みやすい生活環境を創造する産業を担う人材育成を目指しており、このため教科は環境科学基礎、緑地環境、測量、職業ライセンス、造園技術、ものづくり、ガーデニングといった、環境インフラや環境ビジネスなどの産業分野に比重が置かれ、資格もガス溶接技能講習(溶接)、アーク溶接特別教育、トレース技能検定、建築CAD3〜4級、危険物取扱者、森林インストラクターなどが取得可能だ。
 「情報・観光系列」は、情報、観光、流通などの現状や、歴史、文化を学び、地域産業を担う人材育成を目指している。このため、教科は情報処理、簿記、商品と流通、山梨の観光、商業技術、ビジネス基礎といった流通、商業経済と観光関連ビジネスに直結した科目構成で、資格は情報処理(ワープロ)検定、国内旅行業務取扱管理者、簿記、英語検定、秘書技術検定、初級システムアドミニストレータなど、企業実務に役立つものとなっている。
 「国際文化系列」は、語学、歴史などを通じて豊かな国際感覚や語学力を習得し、世界を舞台に幅広く活躍できる国際人の養成を目指す。このため、教科は世界史、日本史、現代文、総合英語表現、数学演習などで構成され、英語検定や漢字検定などの基礎教養に対応している。
 「人間科学系列」は、さらに生活福祉コースとスポーツ科学コースに分かれ、生活福祉コースは介護、福祉分野の人材を育成し、スポーツ科学コースは、各種スポーツのインストラクターなどの人材を育成する。このため、教科はスポーツT・U・V、運動生理学、家庭看護福祉、生活産業基礎、フードデザイン、社会福祉基礎、リビングデザイン、発達と保育などで構成され、資格は英語検定、漢字検定、家庭科食物調理技術検定、家庭科被服製作技術検定、家庭科保育技術検定が取得可能だ。
 このように、実践的な実務教育と資格取得によって、戦後最大の厳しい不況による就職難の時代に対応し、生徒達が生き抜いていく力を養成するための教育内容となっており、このため指導に当たっては、学力の定着とともに、生涯にわたって主体的に学習出来る能力の育成に重点が置かれ、ガイダンス機能を充実し、生徒の適正に応じた進路指導を実施する。
 一方、人間教育においては、規範意識の醸成に努め、多様な課外活動の場を提供し、良好な人間関係の中で互いに認め合い、自己を高めていく力を育成し、キャリア教育を通じて社会人としての勤労観、職業観を育成する方針だ。
 建設に当たっては、平成20年度に地質調査、設計を行い、21年度に既存校舎の解体の後、新校舎の建設に着工した。
 規模・構造は、校舎棟は鉄筋コンクリート造4階建て、延べ床面積11,053u、屋内運動場は、鉄筋コンクリート造2階建て、延べ床面積2,549u。
 整備にあたっては、4科の生徒の学習に支障のないよう効率的に移動できる教室配置とするとともに、生徒のコミュニケーションの場となるよう中庭を整備。
 また、校舎内の段差を解消し、エレベーターや身障者トイレを設置するなど身障者にも配慮した施設とし、笛吹川の清流のもと、盆地を巡る連山と農村風景とが相まった恵まれた自然環境に配慮した、調和のある施設となるよう計画されている。



山梨県の営繕事業 笛吹高校の施工に貢献します
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