建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年2月号〉

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患者さんに喜ばれる病院、高度医療を提供する「名古屋市立西部医療センター」

―― クオリティライフ21城北構想の中心施設として国内有数の陽子線がん治療施設も併設

クオリティライフ21城北構想 名古屋市立西部医療センター


▲クオリティライフ21城北 全体イメージ 南上空より望む


 名古屋市の志賀公園に隣接する城北地区でクオリティライフ21城北全体構想に基づき、西部医療センターの建設が進んでいる。このクオリティライフ21城北構想は名古屋市が策定したもので、「いきいき」として暮らす市民があふれる21世紀の生活の質の高い都市を支えるため、「保健・医療・福祉の総合的エリア」として志賀公園と一体となったまちづくりを進めるもの。この西部医療センターの他に陽子線がん治療施設、重症心身障害児者施設、健康増進支援施設、交流広場などを整備する計画だ。
 西部医療センターはクオリティライフ21城北全体構想の中核施設となるもので、「つねに患者中心で、患者が安心、納得を得ることができるような、信頼される質の高い医療サービスを提供することにより、『患者に選ばれる病院』をめざし、21世紀の新しい医療を提供する。」という目標を具現化するもので、高機能であると同時に患者の立場に立ったやさしい病院であることを目指している。
 この目標に基づき、計画に当たっては5つの基本方針が設定された。


親しまれる病院(地域環境への配慮)
 クオリティライフ21城北の中核施設として、市民生活に密着した高い医療サービスを提供する、高度でアメニティあふれる医療環境を創出する。周辺住環境への影響に配慮し、建物をセットバック配置するとともに、建物本体もやさしい外観デザインとし、色彩などに配慮している。
 敷地周囲には幅15m程度の緑地帯を確保し、屋上も積極的な緑化を図ることで、新たな緑のオアシスを提供し「地域に親しまれる病院、緑に包まれた病院」とする。敷地境界線上にはフェンスなどは設けず、植栽・遊歩道・広場などにより、地域に開かれ誰もが気軽に利用できる空間とする。
 自然の光、風、緑を積極的に採り入れ、明るくすがすがしい医療空間をつくる。障害者や高齢者を含むすべての人が、利用できるユニバーサルデザインに対応する。


信頼される病院(安全性、高機能性の追求)
 災害時には、災害医療活動拠点として十分な医療機能を発揮できるよう、免震構造によって建築・設備一体の高い耐震性能を確保するとともに、十分な防災・救護設備の確保、安全な避難計画に最大限配慮。
 また、この病院に託される専門医療機能をいかんなく発揮できる建築とするため、機能性を追及した平面ゾーニング・動線処理・余裕と融通性のあるスペースを確保している。
 より高品質な医療サービスを提供する医療情報システム、電子カルテをはじめとするIT化推進に柔軟に対応できる計画としている。


患者の立場に立ったやさしい病院(アメニティの追求)
 患者に安らぎを与え、不安感を和らげるよう明るく清潔感に満ちた、ゆとりある内部空間をつくる。プライバシーに配慮した動線や、各室の構造にも細やかな気配りをもたせ、入院患者が自宅にいるようにくつろげるベッドサイドやデイルーム・食堂のインテリア計画に配慮した。
 低層部屋上をはじめとする屋外空間は、療養・リハビリ・コミュニケーションスペースとして積極的に活用する。


将来の成長・変化に対応する病院(余裕とフレキシビリティの追求)
 将来の模様替え、用途替え、増設に柔軟に対応できる建築手法を採用し、明確な中長期的将来像を見据えたフレキシブル性の高い計画とし、医療設備の急速な変化にも対応できる間仕切りや床構造、床荷重設定とし、設備スペースを確保している。

▲クオリティライフ21城北 施設イメージ図


地球環境に配慮した病院(ライフサイクルコスト及びライフサイクルCO2からの視点)
 省エネルギーと維持管理のしやすさを追求した信頼性の高い建築デザイン、設備システムを導入しており、自然光、通風、熱などの自然エネルギーを積極的に活用し、地球環境への負荷低減を図っている。これによって、初期投資とランニングコストの最適バランスを検討し、ライフサイクルコストとライフサイクルC02を削減する。
 これらの建築計画の方針に基づき、整備に当たっても4つの方針を設定している。
21世紀型の医療サービスの提供
 妊娠・胎児から乳幼児・思春期を経て次世代を生み育てるまでの、過程全般を連続・包括的にみまもる「成育医療」の展開を可能とするよう、専門特化されたゾーンを形成する。
 そのため、小児科や産婦人科の救急医療、周産期医療など救急医療部門を充実し「人にやさしい医療」の展開を可能とする。
 PET検査・化学療法室・内視鏡部門などを充実・一元化し、機能的な消化器腫瘍センターを形成する。周産期医療センター・手術部門・重症病棟を一体化し、急性期医療に特化された「高機能な病院」を整備する。院内のIT化のみならず、他の医療機関とのネットワークも推進し、「つながる医療」をめざす。そして、将来に向けて余裕とフレキシビリティのある施設とし、「成長し続ける病院」をめざす。


明るく快適に過ごすことができる病院
 患者とスタッフ、患者同士、患者と家族や見舞い客との語らいの場として、陽あたりの良い屋上庭園等を整備し、快適な療養環境を確保する。
 病室は高い個室率を確保するとともに、多床室についても個室的感覚を持った室環境をつくり、プライバシーに配慮された快適な病院とする。また、入院患者にとっては、スタッフを「身近」に感じ、「みまもられている」という安心感の得られる病院とする。
 院内構造は、わかりやすい部門構成、動線計画とし、患者にとって利用しやすい病院とする。そして、緑豊かな志賀公園に隣接する立地環境の特性を十分生かし、クオリティライフ21城北の中心施設と位置づける。


地域に開かれた医療の展開
 地域医療連携室などの整備により、地域の病院や診療所との連携を推進し、地域に開かれた病院とする。免震構造によって、災害時の医療活動拠点としての十分な機能を確保し、大地震後にも病院機能を充分維持できる施設とする。安全性の高い防災計画や院内感染防止にも十分配慮した建築・設備計画とする。


成長と変化し続ける病院
 今後の医療制度・社会状況の変化、医療技術革新による変化、社会ニーズ・患者ニーズの変化に、継続的かつ柔軟に対応できる「長寿命な病院」をめざすとともに、環境負荷低減を実現するシステム、構造を積極的に導入する。




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