建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年2月号〉

interview

日本最北の大規模な草地型酪農を展開

―― 農業農村整備は農業土木技術者なくては成り立たない

安田建設株式会社 取締役社長 安田 最次氏

安田 最次 やすだ・さいじ
昭和27年12月24日 枝幸郡歌登町生まれ
昭和50年 3月 日本大学商学部 卒業
昭和50年 4月 安田建設株式会社 入社
平成15年 1月 同社 取締役社長 就任
公職
平成15年 5月 稚内建設協会 理事 就任
平成17年 5月 北海道農業建設協会 理事 就任
平成18年 4月 枝幸観光協会 副会長 就任
平成19年 4月 枝幸建設協会 会長 就任
平成19年 5月 枝幸町商工会 理事 就任
平成19年 7月 宗谷地方安全運転管理者 事業主会 副会長 就任
安田建設株式会社
枝幸郡枝幸町幸町57番地5
TEL 0163-62-4111

▲草地整備 枝幸地区 41工区

――宗谷管内の農業の特色について
安田 この地域は、日本の最北に位置しており冷涼な気候風土と広大な大地を活かした酪農を中心とした農業を展開しています。昭和30年代までは馬鈴薯などの畑作を展開していたが、冷害などを転機として集約的酪農地域に指定されました。  現在では、乳量生産は全道の約7%を占める道内有数の酪農地帯となっています。  近年は、個人の飼料畑を一元管理し、大型機械で牧草の肥培管理や収穫作業などを行うことにより「農作業の効率化」と「栄養価が高い良質な粗飼料の確保」を図るTMRセンター方式の取り組みが進んできています。しかし、課題としては、農家戸数の減少や高齢化が進んでおり、大規模化とともに過重な労働となっています。  管内の人口が72,678人に対して、乳用牛は73,160頭とほぼ同数となっております。  最北端農村クロスロード交流会を結成し、チーズ作り、アイスクリーム作り、ファームインなど管内の特色を活かし、「食と農の架け橋」活動を展開している豊富町、浜頓別町、中頓別町、稚内市の元気な農家の方々の存在があります。
――地域農業のために建設会社はどんな役割を担っていますか
安田 宗谷管内は水産業、林業、農業の1次産業が基幹産業であると共に、建設業も公共の福祉や民生の安定を維持させ、地域社会が持続的に発展していく上で非常に重要な役割を果たしています。  地域農業との関わりでは、コントラクターなど直接農家の方を支援する制度がありますが、更に進めていくためには国等の補助がもっと必要であると考えています。  管内は酪農が中心ですから、集乳作業が円滑に行えるように、特に冬季の除雪は気を配りながら各会社は行っています。また、災害時には河川の氾濫などを出来るだけ最小限に抑えるなど迅速な対応を行い、農地の冠水被害などを極力防ぐ努力もしています。  このように建設業界は地域農業の持続的発展の支えとなっているのです。
――農業土木技術集団の重要性などについて
安田 農業土木と公共土木の違いは、不特定多数の人たちに対する利用や防護を行うのが公共土木であるのに対して、農業土木は特定の農家を受益者として畑や道路などを整備するものです。利用者の顔が直接見える公共事業であり、受益者個人からの負担もあります。  このため発注者も受注者も、受益者の声を良く聴くことにより弾力的な整備を行えることができます。言い換えればニーズに適った整備が確実に出来るということです。  一方、個々の意見に基づいて整備を図ることは、地域全体として考えた場合、プラス面とはならない場合があり、地域の発展は地域の整備計画の構想があって成り立つものと思います。したがって、農業地域の計画構想は、農業土木技術者無くしては成り立っていかないと思います。  また、農業水利施設の保全などは今後重要な課題であり、農業土木技術を継承していかなければ将来的に食料の安定確保は困難となっていくでしょう。
――TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の影響についてどう考えますか
安田 今年6月にTPPに関する我が国の方針が出される予定ですが、管内は酪農が中心であり、関税が撤廃されると、@酪農生産額で227億円、肉用牛生産額で6億円の減少A関連産業で321億円B地域経済で604億円と、合計で1,158億円の影響が出ると試算されています。  また、雇用面では9千人に影響が出ます。
――公共予算削減と農村環境の崩壊などについて
安田 平成22年度は公共事業予算が削減され、その中で農業農村整備事業が約40%も削減されました。それにより、農家の営農計画の変更も余儀なくされ、農家経営も大きな打撃を受けました。  予算の削減が続いて行くと、管内では草地の整備を諦めることにより雑草が繁殖し、耕作放棄地の拡大に繋がっていきます。食料自給率を50%まで高めるとの方針を立てながら、一方で農地の荒廃を助長し、自給飼料の確保は困難となっていくのではないかといわれています。  昨年は生物多様性年でしたが、農地が荒廃していくと自然環境の保全も困難となります。例えば、エゾシカは雑草よりも牧草を食べに良好な牧草地に群がります。このことにより近傍に咲く在来植物も食べられ、また繁殖の強い外来種が増え、環境が変化することが十分に考えられます。

会社沿革
昭和27年 1月 枝幸郡歌登町南町に安田組として 個人創業 組長 安田 正
昭和32年 2月 組織変更、安田建設株式会社 取締役社長 安田勝次 就任
昭和55年12月 安田建設株式会社札幌事務所を新設
昭和58年 4月 取締役社長に安田正 就任
昭和59年 4月 枝幸郡枝幸町字幸町685番地に本社移転 枝幸郡歌登町西町120番地に歌登支店新設
昭和63年 5月 札幌事務所を移転、名称を札幌支店に変更
平成 2年 3月 稚内市潮見1丁目9番10号に稚内支店新設
平成 3年 7月 札幌支店名称を札幌本店に変更
平成15年 1月 取締役社長に安田最次 就任


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