建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年1月号〉

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菅生ダムのゲートレス化を実現

兵庫県 菅生ダム堰堤改良事業


▲改良後イメージ図


 菅生ダムは、二級河川夢前川の支川菅生川の上流、兵庫県姫路市夢前町莇野に建設された多目的ダムで、昭和40年9月に菅生川流域で発生した台風23号と24号による洪水被害をきっかけに計画された。当時の菅生川流域は、下流の播磨工業地帯の発展に伴って宅地化が進んでいたこともあり、台風の豪雨によって氾濫し、沿川の住宅や農地などが大きな被害を受けた。
 その反面、流域住民にとっては飲料水などの生活用水や農業用水として貴重な水源だったが、毎年のように水不足に悩まされていた。そこで、「洪水調節」と「流水の正常な機能の維持」を目的に多目的ダムとして、昭和54年に建設された。
 ところが、菅生ダムの集水面積は約9kuと小さいため、周囲の山々から流れ込む川は距離が短く急勾配であるために、降った雨はすぐにダムに流れ込むことになり、そのためひとたび雨が降ると、ダムの水位が急激に上昇するという問題があった。
 しかも、そうした特徴があるにもかかわらず、ダムの水位が上がると、その都度ゲートを細かく操作し、洪水を安全に放流する必要がある。このため、ゲートは常に点検を行い、正常に機能するよう努めてはいるものの、万一の故障などで正しく放流できない場合は、ダムの下流に流れる川の急激な水位上昇につながり、危険な状態になる可能性がある。
 特に、近年はゲリラ豪雨や集中豪雨が多く発生しており、水位上昇が速い菅生ダムでは、ゲートを操作する時間が十分とは言えず、洪水調節などの管理は難しくなる。
 そうした状況に対処するため、菅生ダムのゲートレス化が計画された。これまでは、非常用洪水吐きにはゲート方式(ローラーゲート)を採用していたが、この方式はダムの貯水泣か規定の高さに達すると、ゲートを操作して洪水を放流してダムの高さを抑えることが可能であるため、ダム本体に使用するコンクリート量が抑えられるという経済的メリットがあった。
 しかし、最近は比較的小規模なダムでは「安全なダム管理」をめざし、ゲートの故障等による事故をなくすため、ゲートを取り外す「ゲートレス方式」が主流となっている。菅生ダムもゲートレス化し、ダムの貯水位が洪水時最高水位に達すると、自然に放流できる「自然調節型」のダムとして、再整備に着手した。工事はすでにほぼ完了し、この1月からいよいよ稼働することになる。




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