建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年1月号〉

interview

都市と農村が共に共存する地域づくり

――農業基盤情報を蓄積した農業土木技術者の役割

新谷建設株式会社 取締役社長 新谷 龍一郎氏
(旭川商工会議所 会頭、上川農業建設協会 会長)

新谷 龍一郎 しんや・りゅういちろう
昭和27年 1月11日 生まれ
昭和53年 3月 獨協大学法学部法律学科 卒業
昭和53年 4月 新谷建設株式会社 入社
昭和56年 6月 学校法人北工学園理事 就任
昭和56年11月 新谷建設株式会社取締役 就任
昭和57年 2月 社会福祉法人新生会理事 就任
昭和57年 2月 社会福祉法人敬愛会理事 就任
昭和60年 2月 新谷建設株式会社代表取締役専務 就任
昭和60年 5月 株式会社草農興社代表取締役 就任
昭和62年 9月 新谷建設株式会社取締役社長 就任
昭和62年 9月 株式会社草農興社取締役社長 就任
昭和62年 9月 三菱実業株式会社取締役社長 就任
昭和62年 9月 学校法人北工学園理事長 就任
昭和62年 9月 社会福祉法人新生会理事長 就任
昭和62年10月 社会福祉法人敬愛会理事長 就任
昭和63年 1月 株式会社北海道情報開発(現:HJK(株))代表取締役会長 就任
平成 9年 3月 株式会社旭川国際ゴルフ場取締役 就任
平成21年 3月 旭川商工会議所会頭 就任

▲経営体育成基盤整備(面的集積) 名寄東地区31工区

――大都市(旭川市)近郊型農業の特色について
新谷 旭川は、人口35万人を擁する大きな都市として発展しておりますが、周辺には雄大な大雪連峰などの山々が連なり、石狩川をはじめとする多くの河川が流れ、四季が明瞭で自然豊かなまちです。  都市部を囲むように郊外には農業地帯が広がっており、都市と田園そして自然が織りなす魅力的な景観を作り出しております。  都市部では近代的な都市機能の整備が進む一方で、農業は上川盆地に位置することから、肥沃な大地、豊かな水、大きな寒暖差などの自然条件を活かした多様で豊かな農業を育んできております。  旭川市はおおよそ1万2千ヘクタールもの農地を有し、お米は収穫量・作付面積のいずれも道内第2位を占める米どころとなっております。  さらに、都市近郊の立地を活かし、各種野菜の作付けも盛んで品目ごとには少量でも多品目の産地となっており、農業産出額の約4分の1をカバーし、直売所なども各所に設置されております。  旭川の農業は大規模な都市部を囲むようにあり、生産の場と消費が近接していることから、産地直売などの様々な機会を捉えて旭川の農産物の「美味しさ」や「安全・安心」な面を消費者にアピールし理解を深める取り組みなどが行われてきております。  立地を活かして、今後とも生産情報の発信や都市と農村の交流をとおして、都市と農村がともに共存する地域づくりを進めて行くことが期待されます。
――新谷建設として農業農村整備にどう取り組んでいますか
新谷 昭和の40年代には、水源や用水路などの水利施設整備が大規模に進められ、その後、機械化や省力化を図るための圃場整備や規模拡大のため農地開発が進められました。  そして、近年では担い手への農地集積を図るとともに、ほ場の大区画化や暗渠排水、水利施設などの整備が進められております。  当社は昭和25年の設立以来、各種の建設工事を施工してきましたが、農業農村整備については各時代の要請に沿う用水路の建設や改修・圃場整備などの工事を永らく施工させていただき、多くのノウハウを蓄積して地域の要望に応えられるよう努力してきました。  平成17年度から昨年度まで最近5ヵ年間の施工状況についてみますと、国営及び道営農業農村整備事業ともにそれぞれ年平均3工区程度で、事業種目として主に「かんがい排水事業での用水路工」、「経営体育成基盤整備事業での区画整理工、用水路工」などを施工しております。  農業農村整備は一般の公共事業と違い、多くの場合、農家の土地や財産に対して直接的に工事を行うものですから、整備を行う趣旨などをよく分かっている人でないと農業農村整備の仕事は上手く行きません。農業農村の整備について経験と知識が必要なものであるとともに、地域の営農についても気配りが必要と思っております。
――地域農業に対して建設会社はどんな役割を果たしていますか
新谷 農業土木では、農地の開発・改良や農業用施設の新設・改良など、自然を相手に環境と調和した整備とその保全管理、さらに農村環境の整備などが実施されてきておりますが、特に農地や農業用施設の工事は、単に施工するだけではなく整備後の利用、効率、管理などまで含めて農家や土地改良区などの施設管理団体との調整を図りつつ進めることが必要であります。  地域の建設会社では長年の間、農業農村整備事業に携わって来て、地域の自然条件を把握し、地域農業の営みを理解し、地域農業の基盤状況について多くの情報を蓄積しており、そのような環境の中で多くの農業土木技術者の経験と知識が育まれて来ております。  地域農業が持続的に発展して行くためには、その基礎となる基盤の整備や保全管理を適期に進めて行くことが重要であり、その整備や保全管理に対して、地域の状況を理解し農業土木の経験と知識を活かして関わって行くことがより望ましく、地域の建設会社とその農業土木技術者が果たす役割はその辺りにあるものと思います。  さらに、災害時の緊急対応や迅速な災害復旧については、地域状況や施設概要を把握し、迅速に人員や機械を手配出来る地域の建設会社の役割は重要であると思っております。
――上川農業建設協会の会長として感じている課題をお聞かせ下さい
新谷 平成22年度の予算では、公共事業予算が大幅な減額となり、とりわけ農業農村整備予算は大きな影響を受けました。  農地の整備は、その施工時期などが地域の営農計画と密接に関係しあっており、急激で大幅な予算の削減は地域農業にも大きな混乱を与えるものです。  このような混乱と整備進度の遅れは、農家に戸惑いと不安をもたらし、農家自身の整備意欲の低下にも繋がるものと危惧されます。  地域の農業農村に整備の停滞が引き起こされるなど、将来に渡って地域農業の活力をそぐ可能性があります。  地域農業に深刻な影響が及んで、農村の地域社会が荒廃し、その存続すら危うくなるようなことがあってはならないものであり、長期的な視点に立ってインフラ整備を考えるべきと思います。  また、同時に建設業にも大きな影響が出て来ているものと感じています。地方においては地域経済に占める建設業の影響は大きく、企業の経営環境の悪化が地域全体の経済に大きな影響を与えかねません。雇用問題のみならず、日常生活や防災面での支障も懸念されるところです。
――TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の影響をどう見ていますか
新谷 TPPによる北海道農業への影響と言うものが道によって試算されておりますが、農業への影響が甚大であり、地域経済にも大きな影響があるものとされております。  旭川市は、北海道第2の都市として発展してきておりますが、市の経済において農業は基幹産業であり、波及する他の産業分野への影響も含めてみると大変大きな位置を占めるものであります。  旭川においても、農業への影響から地域経済への大きなダメージになりかねないと危惧しております。  今後は、道内の各団体とも連携を保ちながら、反対の立場で対応をして行きたいと考えております。

会社概要
創  立:昭和2年
設  立:昭和25年
事業内容:道路新設改良・河川改修・隧道・橋梁・舗装・
林業土木・農業土木・鉄道工事・ダム ・上下水道・その他土木工事全般・建築全般
資 本 金:40,000,000円
建設業登録:
 国土交通大臣許可 特-18第406号
 1級建築士事務所 北海道知事登(上)第174号

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