建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2011年1月号〉

寄稿

十勝管内の農業と基盤整備

――十勝ブランドの基盤づくり

十勝総合振興局産業振興部整備課 課長 坂部 浩明


十勝管内の農業
 十勝管内は、豊富な土地資源とすばらしい自然環境に恵まれ、規模拡大や基盤整備を進めながら、畑作や酪農を中心とした大規模農業経営を展開し、我が国の食料基地として重要な役割を果たしています。管内の耕地面積は約25万haと全道の22%を占め、1戸当たりの耕地面積は約38haで全道平均の約2倍、全国平均の約24倍の規模となっています。畑作は、小麦、豆類、馬鈴薯、てん菜の4品目を主体に、長いもやだいこんなどの根菜類をはじめ、スイートコーンや葉物など多種多様な品目が生産され、長いもやえだ豆、ゆり根は海外へ輸出されています。畜産では21万頭を超える乳牛が飼養され、ホクレン受託乳量は約100万tで全道最大の生産規模となっています。また、肉牛の飼養頭数は約20万頭で全道の4割を占めています。21年産分の十勝管内農協取扱高は、耕種部門が冷湿害の影響を受け、前年比91%と減収したものの、酪農が前年比104%と伸びたことにより、全体では前年並みの2,444億円となっています。
十勝農業の課題
 十勝管内は日本有数の農業地帯として発展してきましたが、一方で、経営規模の拡大に伴う労働力不足や高齢化、後継者不足、また、食の安全・安心に対する消費者の関心の高まり、さらに諸外国との包括的経済連携の推進の動きなど、農業を取り巻く情勢は大きく変化しています。
 また、昨年の十勝の農業は、長雨、低温、日照不足などの異常気象に見舞われ、多くの作物で減収や品質低下の被害が発生し、被害額は全道で最も大きく、168億円に達しました。このような中、暗きょ排水などの整備がされたほ場では被害が軽減される結果となり排水対策の有効性が確認され、今後とも持続的かつ安定的に基盤整備を進める必要があることが再認識されたところです。このため、十勝管内の農業が今後も我が国の食料供給力の確保・向上に寄与するとともに地域経済・生産・生活を支える基幹産業として持続的に発展するためには、農業生産基盤の整備等の推進が不可欠となっています。
農業農村整備事業の実施状況と今後の展開方向
 管内の耕地の約5割が排水不良土壌であることから暗きょ排水などの排水改良を主体に客土や除れきなどの土層改良を畑地帯総合整備事業等により実施し、また全耕地面積の約3割を占める草地については飼料自給率の向上のため草地整備事業等により整備を実施しています。その成果の一つとして、地域のブランドとして確立した「十勝川西長いも」は排水改良等による農地の基盤整備によりJAや市町村の枠を超えた広域的な供給体制で安定生産を実現させた結果、その品質が評価され、生産が拡大するとともに台湾等への輸出も順調に伸びています。
 今後も引き続き安全で高品質な農畜産物の安定生産の基盤となる農地や農業用施設の整備を積極的に推進し十勝産農産物のブランド化の促進を図っていくことが重要と考えています。また、今後の農業農村整備の方向は「建設」から「保全」への転換と言われていることから、限りある予算で農地・施設の機能を維持するために、補修・補強による機能の長寿命化を図る保全型整備に取り組み、今後とも地域の声をよく聴き必要な整備を着実に進めていきたいと考えています。


十勝総合振興局の<平成22年度農業農村整備事業実施概要
道営事業  56地区 56億円 
・畑総事業  34地区
・草地等事業 22地区
団体営事業 16地区 2億円


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