建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2010年11月号〉

東京都の教育施設




●ズームアップ 東京都 都立大田桜台高等学校(21)改築及び改修工事
●ズームアップ 東京都 都立小金井科学技術高等学校(仮称)21改築工事
●寄     稿 都立小金井科学技術高等学校(仮称)21改築工事
   フジタ・中山・トヨダ 建設共同企業体 小金井科学技術高校作業所 所長 佐々木 雅規氏

▲東京都 都立小金井科学技術高等学校(仮称) 校舎





よりスキルの高い国際的ビジネスマンを養成する進学型商業高

東京都 都立大田桜台高等学校(21)改築及び改修工事

▲外観図

▲鳥瞰図


 東京都立大田桜台高校は、「都立高校改革推進計画」の新たな実施計画に基づき都立市ヶ谷商業高等学校と都立赤坂高校を統合改編し、進学型専門高等学校として旧都立南高等学校の校舎を改築して新設している。
 これは進学型商業高校として分類される新しいタイプの高等学校で、ビジネスに関して必要な基礎的知識、技能を生徒に習得させ、さらに産業、流通構造の変化など、経済社会の変化に主体的に対応し、将来は国際社会で活躍できるスペシャリストとして育成するために大学へ進学して、継続して学習することを前提としている。配置計画としては、この大田地区と豊島地区に設置する計画だ。
 施設の特徴は、敷地の高低差を活かしつつ周辺環境へ配慮した建物配置と断面構成となっている。外観デザインは、磁器質タイルによる落ち着きを与えつつ、正門正面にガラスのカーテンウォールを設けて新キャンパスのイメージを高めている。
 設計方針としては、正門側とグラウンド側を繋ぐ大階段・スロープの設置などを考慮し、周辺環境に配慮した配置と外観デザインとした。また、セットバックした建物配置によって、プライバシー・日影に配慮した建物形状とした。利用用途を考慮したバリアフリー化の推進と建物の安全性確保のため、段差の解消、エレベーター・多機能便所・手摺の設置、手摺等の高さなどに配慮した。省エネにおいては、東京仕様2007を採用し、断熱材の増厚、ペアガラスの採用、屋上緑化の実施のほか、小庇を設置した。また、高効率照明器具の採用、照明回路の細分化、節水型器具の採用及び雨水のトイレでの再利用を実現。建築資材には、地産地消の取り組みとして多摩産材を使用している。
 外壁は主に磁器質タイルとし、落ち着いた色彩を選定。外構については、新設する接道緑化はフェンスを敷地内側に設置し、道路からの景観に配慮した。前面道路沿いにあった緑地帯セットバックし、地域住民が利用できる歩道を設けている。敷地境界沿いの既存樹木は出来る限り残すことにした。
 敷地境界線から5m以上セットバックして圧迫感を抑え、周辺建物に比較的近い部分には開口部を極力少なくし、プライバシーに配慮している。屋根の形状は陸屋根とし、出来る限り建物高さを抑えた。屋上に設ける屋外機械設備は、見えないように目隠しルーバーを設けている。

工事場所:東京都大田区中馬込三丁目11番10号
敷地面積:15,769.53u
建築面積: 2,640.72u
延べ面積: 10,546.48u
構造規模:鉄筋コンクリート造 地下1階地上4階
工  期:平成21年7月〜平成23年2月



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進学を前提とした新しい専門高校

東京都 都立小金井科学技術高等学校(仮称)21改築工事

▲校舎

▲鳥瞰図


 都立小金井科学技術高等学校(仮称)は、多摩地域における理系の中核的進学校という位置づけと目標により2010年に開校された専門高等学校である。普通高校の持つ教育機能に加え、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーを初めとする4つの専門分野の基礎的実験が行える研究設備を備えている。現在は施設の中心である新校舎と新体育館の建設が進められている。
 都教育庁としては、生徒が技術者として生涯にわたり専門性を高めていくために必要な意欲、態度、知識、技能を身につけ、技術革新に主体的に対応できる人材へと育成するため、大学などへ進学し、継続して学習することを前提とした新しいタイプの工業高校として設置する方針。配置計画としては、地域バランスを考慮して、この小金井地区と江東区に設置する。
 新校舎の特色の一つはサイエンスホールで、これは1学年230名を収容できる本格的な講演用ホールとなる。250インチスクリーンを初めとするAV設備と、公開実験なども可能な昇降ステージを備えており、「科学技術アドバイザー」として登録されている学外の先端研究者の活躍の場ともなる施設だ。
 この他、ホールの屋上は庭園として整備され、生徒のくつろぎの空間として提供されるとともに、環境分野の実習の場としても活用されることになる。
 さらに省エネ技術としては、壁面緑化や太陽光発電、複層ガラス・ガラスブロックによる開口部の熱負荷低減、高断熱化、昼光センサーによる照明制御など「省エネ東京仕様2007」に則った環境技術が導入されているのが特筆される特色である。



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都立小金井科学技術高等学校(仮称)21改築工事

フジタ・中山・トヨダ 建設共同企業体 小金井科学技術高校作業所
所長 佐々木 雅規


 工事場所はJR中央線の南側で、武蔵小金井駅から国分寺駅方向に徒歩で10分程度の位置にある敷地で南面が連雀通り(幅員16m)に面しており、連雀通りからのみの搬入動線となっている。
 北面はJR中央線の高架、東面は既存校舎、西側は6m道路(工事車輌通行不可)を挟んで木造民家がある。尚、連雀通りに面して400m以内に市役所・消防署・警察署がある。
 施工内容は、小金井工業高校を改編し、第二の科学技術高校の設置に伴い、改築棟(15,546u)RC造地上5階建体育館、部室棟RC造2階(2,050u)、渡り廊下他4棟(272u)の工事である。主要工事車輌の搬入口は、西南角の連雀通りからのゲート(W=5.4m)しかなく、大型車両の通行は片側となる為、コンクリート打設時等の大型車両の搬出入は綿密な計画が要求される。学校からの制約として中間・期末交差の時期は、大きな騒音を禁止されている。
 工事現況は、改築棟2階立上り躯体工事、体育館棟基礎埋め戻し工事進捗中である。今後の予定としては、改築棟がクリティカルパスとなっており、2010年12月半ば上棟、2011年4月上旬受電、5月上旬に工事完了し、調整・クリーニング後の2011年5月末に概成の日を予定している。
 留意事項としては、改築棟の工事が、内容・物量においてもクリティカル工程となっており、資材搬入路が体育館・部室棟西側で狭い状況である。体育館・部室棟の工事が搬入路を塞ぐことのないように綿密な工事計画が必要である。
 建築工事と設備電気工事とが、互いに弊害になりあわないように、十分な施工図、工程調整の上で工事を進捗させる必要がある。
 さらに、近隣住民の関心も高く、工事においては無災害とともに、近隣住民との約束ごとの励行を全作業員に徹底する事。
 東京都建築工事標準仕様書に沿った施工で高品質が要求されるため、夏季配合のコンクリート強度管理に注意する。
 それらを実現するために、漏水クレーム防止対策の実施とクレーム「ゼロ」→1)構造スリットからの漏水2)構造スリットと防水の取り合い3)カーテンウォール・EXP.Jの納まり検討4)屋上緑化部FRP複合防水の厳密な施工管理を行うつもりである。
 また、仕上げ精度と品質の向上のため、1)躯体建ていれ精度1/750(6mm以内)2)床精度(1スパン9m×7.5m±5mm以内)とした。
 工事計画上の課題と対策としては、搬入路が体育館・部室棟西側の幅員約5mの狭い通路しかない→体育館・部室棟使用重機・ポンプ車等を体育館1階内部に配置して工事を進捗させ、通路を塞がない計画とした。
 また、改築棟の工事中のアプローチとしては西面・南面の2面となり揚重機の作業半径が建物全体を網羅できないので、中庭吹き抜け部に定置式クレーンを配置し、ほぼ全域を網羅したほか、改築棟周囲での揚重機作業を極力減らす計画とした。
 さらに、1階から3階まで2層吹き抜けの中央サイエンスホール(約330u)支保工計画については、サイエンスホール2FLレベル全面に仮スラブを構築し、それを3階梁底の受けに利用し、また3階天井仕上げ時の作業床とする。
 サイエンスホール部3階スラブ型枠はビームにて受け支保工なしとし作業スペースを確保した。




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