建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2010年10月号〉

特集・ズームアップ

広島県

広島県 広島中央フライトロード・空港大橋(仮称)

広島県 一般国道487号 (仮称)第2音戸大橋



 広島県内は中国縦貫自動車道、中国横断自動車道、山陽自動車道、瀬戸内自動車道など、主要路線の建設が進んでいるが、中国地方の渋滞損失時間のうち約4割を広島県が占めており、約7割は広島市・福山市・呉市の三大都市に集中している。主要渋滞ポイントは58箇所に及び、それに伴う年間渋滞損失時間は平成18年時点で8,400万人時間/年と試算され、県内産業活動などに多大な影響を及ぼしていた。一方、中山間地域では、過疎化・高齢化が進行し、集落の機能維持が困難になりつつある。このため、合併が進み、行政区域が拡大する中で、緊急車両の通行や生活物資の搬入など、ライフラインとしての道路の役割はさらに重要になっている。そうした課題を解決し、地域の発展を促すべく、道路改良と新規路線の建設が進められている。



▲(仮称)第2音戸大橋  完成予想図





中国地方に我が国最大のアーチ橋を建設

――迅速なアクセス、人・モノの大量輸送に地域振興の重要な役割

広島県 広島中央フライトロード・空港大橋(仮称)

▲空港大橋(仮称)


 広島中央フライトロードは、広島県が計画している地域高規格道路で、山陽自動車道河内インターと広島空港、そして中国横断自動車道尾道松江線とを結ぶ延長30kmの自動車専用道路で、そのうちの河内インター側の約10kmの区間について整備が進められている。
 広島県域の大動脈としての機能だけではなく、中国地方の高速交通体系の一翼を担うことになり、企業誘致や地場産業の振興を促すなど地域活性化に重要な役割を果たすことになる。
 その中でも最大の見所となる(仮称)空港大橋は、広島中央フライトロードの起点側に位置する沼田川渓谷を跨ぐ橋長800m、アーチ支間380mの橋梁で、完成すれば日本で最大のアーチ橋となる。架橋位置は急斜面で、最も高い橋脚は95.6mに及び、自動車の通行する橋面までの高さは、県道から190mの高位置にある橋梁となる。これは基町クレドやMAZUDA Zoom-Zoom スタジアム広島が収まる大きさだ。
 アーチ部上部の架設工法は、アーチ橋としては一般的なケーブルクレーン・斜吊工法だが、使用される仮設備も大規模なものとなる。架橋位置にはJR、県道、沼田川があるため、移動防護工、3重ネットを配置して安全を確保した。
 構造は主構と呼ばれるアーチ本体、造路面直下の補剛桁、それらを結ぶ支柱で構成され、バスケットハンドルのブレースドリブ固定アーチ橋とし、補剛桁を橋脚に固定して剛性を確保している。
 主構は上弦材(1.0×1.6m)、下弦材(1.0×1.5m)で構成され、その間を斜材、鉛直材で繋いでいる。弦材の間隔は中央部で8.0m、基部で19.0mとなる。
 補剛桁は1.9×1.5mの箱桁及び床組みより構成され、造路面となる床版を支持する。支柱TI、T15は1.32×2.22mの箱断面、それ以外は1.0×1.5mの箱断面で、両端部の長い4本(最大長さ80.4m)については、耐風安定性を高めるために隅切断面を採用するほか、TMDが搭載されている。
 耐風設計としては、設計風速は45m/sで、これは風洞実験を実施し、現地の風特性を踏まえた上で、1995年までの広島地区気象官署(広島、呉、福山)データ、架橋地点観測鉄塔における強風記録に基づき、再現期間を150年として、現地風速に換算して算定した。
 ケーブルクレーンは、P3、P4上に建てられた鉄居間にワイヤを張り渡して作られた。スパンは500mで、メインの30t吊4系統と、センターの5t吊1系統から構成されている。主構の形状がバスケットハンドルとなっているため、架設はメイン2系統を用いた相吊によって行われた。
 斜吊架台は橋脚頂部に結合された鋼部材で、1ブロックに前後計4本の斜吊索を定着させた。形状監視システムは、斜吊索の張力、橋脚基部の応力度等を常時監視することで異常を早期に検知するとともに、架設精度の向上を図った。
 移動防護工は架設地点直下のJR、県道への小物の落下を防止するために設置した。アーチ下面の仮設レールにぶら下がり、電動シリンダーを伸縮させて移動。斜吊索は主構を支えるワイヤで7段、合計で112本を使用した。通常よりも大きな張力が発生するため、直径76mmのプレファブ型のケーブルを使用した。斜吊索は、設計上の剛力は約200tに及び、ジャンボジェット機(B747-400(約385t))を2本で吊り下げられるほどのパワーを持つものを使用した。



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音戸の瀬戸を跨ぐ第2のアーチ橋(仮称)第2音戸大橋

広島県 一般国道487号 (仮称)第2音戸大橋

▲(仮称)第2音戸大橋  完成予想図


 昭和36年に開通した音戸大橋は、江能倉橋半島地域と呉地方拠点都市地域の中心都市である呉市を結ぶ重要なアクセスポイントの役割を担っていたが、交通量の増加により、朝夕の通勤時間帯だけではなく、慢性的な交通渋滞が生じている。このため、交通渋滞の緩和及び交通安全の確保と、円滑な緊急活動や災害時の緊急輸送道路の確保に向けて、一般国道487号の警固屋音戸バイパス整備事業が行われており、その中でも最大の見所となる(仮称)第2音戸大橋の建設が進んでいる。
 (仮称)第2音戸大橋は、音戸大橋の北約350mに建設されるもので、この大橋が跨ぐ音戸の瀬戸は海峡幅約200m、水深約5mの狭水道となっている。大潮時の潮流は約4ノットで、1日当りの航行船舶は約600隻を数える。架橋地点の地形は、北東部の休山を経て、音戸につながる北東一南西方向にのびる山地列によって特微づけられます。
 形式は、中路式二ールセンローゼ橋(アーチ支間長280m)と、陸上部のPCコンポ橋から構成される。海峡部では、経済性、施工性はもとより既存の音戸大橋との景観的調和に配慮し、アーチ形式を採用した。
 ただし、アーチリブを箱断面で構成するソリッドリブアーチは、部材数が少なくスレンダーで経済的だが、アーチリブ自身の曲げ剛性が小さく、適度な変形の抑制が非常に重要となる。そこで、アーチ基部を固定し、ケーブルをニールセン構造とすることで全体剛性を高め、適度な変形性能を確保した。これによって、常時荷重に対する構造性と高い耐震性を両立しているのが最大の構造的特徴である。


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