建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2010年8月号〉

interview

難易度の高い現場を経験し安全管理のノウハウを修得

―― 公共事業削減の逆風の中で3代目社長に就任

株式会社 谷脇組 取締役社長 谷脇 勝英氏

谷脇 勝英 たにわき・かつひで
昭和47年11月2日生まれ
平成11年 3月 北見工業大学 工学部 土木開発工学科 卒業
平成11年 4月 日産建設株式会社 入社
平成15年 6月 日産建設株式会社 退社
平成15年 7月 株式会社谷脇組 入社
平成22年 5月 株式会社谷脇組 取締役社長就任
工事経歴
平成11年 4月 日産建設 大阪支店土木部
平成11年 9月 近畿地方建設局大和高田バイパス雲梯高架橋下部工事
平成13年 9月 大阪市建設局国道479号 諏訪共同溝立杭築造工事(3-3〜3-5)
平成13年12月 幸陽船渠800tゴライアスクレーン基礎工事
平成15年 6月 京都市水道局上水道安全対策事業 松ヶ崎浄水場最高区配水池改良(土木その2)工事
株式会社 谷脇組
旭川市大雪通4丁目490番地
TEL 0166-23-2233

 道北の建設業界ではユニークな存在として知られる谷脇組は、今年5月に37歳の三代目社長・谷脇勝英氏が就任した。北見工業大学工学部土木開発工学科を卒業後、日産建設に入社し、関西で大規模土木工事の施工を経験してきた。その後、谷脇組に入社。7年目にして社長ポストを引き継いだ。公共事業予算が大幅に削減されるなか、文字どおり荒波に船出した「谷脇丸」の新しい船長になった勝英社長にざっくばらんに抱負などを聞いた。
――まず会社の概要からお聞きします
谷脇 谷脇組を興したのは、谷脇秀会長の父にあたる故・谷脇光則です。昭和10年、現在の谷脇組の前身である運搬業、砂利採取業としての谷脇組を興しました。  その後、昭和26年に建設業の許可を取得、土木、建築業へ業容の拡大を図りつつ、昭和34年に法人化しました。
▲社屋
――今年5月に谷脇組の3代目社長に就任しましたね。昭和47年生まれで、地元旭川でも若手経営者に入りますが、新社長として企業経営の舵取りにどう取り組みますか
谷脇 私は北見工業大学を卒業し、平成11年に日産建設に入社しました。15年に退社した後、谷脇組に入社しました。建設業を志した人間として、いまの厳しい経営環境のなかでいかに生き残っていくか。谷脇組は建設業の元請工事にとどまらず、専門工事業者として下請工事も積極的に受注しています。建設業に関係することは川上、川下に関係なく全て仕事につなげる。受注産業なので元請、下請の割合はその年によって波がありますが、総トータルで建設業に携わって仕事ができれば一番良いと、私なりの決意表明を社員に話しました。  元請、下請のどちらかに片寄ろうという考え方はしておらず、どういう形であれ土木・建築というモノを造る仕事に携えればいいと考えています。飛び切り大きな利益は上げることはできませんが、社員の給料を確保し全社員が旭川で住まいを構えて生活を続けていければ良いと思っています。建設業は構造物を造る醍醐味がある魅力的な産業で、私は大好きです。
――今年で創立50周年を迎えた北見工大在学中には、企業との共同研究に携わったそうですね
谷脇 現在、北見工大の学長を努めておられる鮎田耕一教授のコンクリート工学研究室に所属し、学生から社会人へ移行する貴重な1年間を過ごしました。民間企業との共同研究で企業の方と対等な立場で意見交換し、報告書づくりを経験させてもらいました。  コンクリート構造物は建設業の仕事と切っても切れない関係ですから、鮎田研究室でコンクリートの品質管理、施工管理について学んだことは後々大いに役に立ちました。
――日産建設ではどのような仕事が印象に残っていますか
谷脇 日産建設に入社したのは平成11年。バブルがはじけて就職難の時期でした。  研修が終わって大阪支店の土木部に配属されました。最初の現場は近畿地方建設局(現整備局)発注の高規格道路高架橋下部工事でした。奈良県の現場で日々、連続する橋脚のコンクリートを打っていました。高所作業が多く、朝の6時から夜中の12時まで。太陽の焼き付ける日差しの下、長時間にわたる作業で、水分・塩分の補給が追いつかないくらい過酷でした。  次の現場は、大阪市発注の鋼製地中連続壁、土留支保工11段、深さ30mの巨大な立坑でした。別な現場では労災死亡事故も経験しましたが、1人の人間が亡くなる現場に直面するのはいたたまれませんでした。考えてみればわれわれは日常的に死亡事故と隣り合わせの現場で働いています。他の職種では仕事中に一歩間違えば死亡するというのは考えられませんし、責任の重い仕事だと思います。
▲一般道道富良野上川線 美瑛町 辺別川橋下部工事 ▲旭川道営住宅A-1d
――先般、6月15日に谷脇組と同社労働災害防止協会の安全大会が開かれました。社長として特に訴えたことは
谷脇 安全大会には社員、協力会社ら110人が参加しました。建設現場には、無数の「ヒヤリハット」が存在します。一つ間違えば重大事故に直結する場合もあり、ベテランでも油断や慣れで危険が増大します。ですから、安全確保へ向けた意識向上のための大会で、安全最優先で快適な現場づくりに努めることを確認しました。  日産建設に在籍したのは5年間程度でしたが、都市土木工事現場の安全対策のガイドラインは修得しました。経験できないほど難易度の高い現場を踏んできましたので、リスクマネジメントの面でも自分の財産になっていると思います。
――入社して7年目で社長に就任されましたが、戸惑いや重圧は感じませんでしたか
谷脇 社会人になりたての頃、先輩から「他人を変えるのは簡単ではないが、自分を変えることは今この瞬間からでも出来る」と教えられました。1年前に比べて自分はどこまで成長したかを常に考えるようにしています。積雪寒冷地における冬季施工の経験がなかったので、谷脇組に入社後の2年間は現場の仕事を経験させてもらい、その後、営業部門に移りました。職員はほぼ全員が建設現場に従事しており、積雪前にどこまで施工できるかが採算面のポイントです。  わが社は土木と建築部門とも元請、下請双方の工事を受注しており、直営で安全に対する意識の高い作業員も大勢抱えています。現場の数は大小を合わせるとかなりの数になります。その点、北海道でも数少ない形態の会社だと自負しています。社員の現有勢力は必要最低の体制を維持していますし、将来とも同業他社との合併は念頭にありません。
会社概要
創 業:10年8月1日
資本金:4,000万円
許 可:北海道知事許可 特定 第111号
     土木工事業、建設工事業、とび・土工工事業、鋼構造物工事業、
     水道施設工事業、石工事業、舗装工事業
    北海道知事登録 第262号
     一級建築士事務所
営業所:札幌


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