建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2010年7月号〉

特集 指久保ダム・第二浜田ダム

水不足の農地に水を補う農業ダムと都市の洪水氾濫を抑える治水ダム

ロックフィル形式の農業用指久保ダム

●寄稿 指久保ダム本体建設工事

  三井住友建設・田中建設・田中組 特定建設工事共同企業体 所長 山口 進氏


 青森県十和田市、八戸市、六戸町、おいらせ町、五戸町からなる指久保地区の農業は、奥入瀬川や後藤川、藤島川を灌漑用水の水源としているが、度重なる水不足に見舞われ、水利調節や灌漑施設の維持管理において、大きな負担となっていた。このため、恒久的な水源対策として、平成24年度の完成を目指して指久保ダムの建設が進められている。


重圧式コンクリートによる第二浜田ダム

●寄稿 第二浜田ダム本体建設工事

  鹿島・五洋・今井 特別共同企業体工事事務所 所長 近藤 正芳氏


 島根県西部に位置する浜田市は、浜田川が中心市街地を流下していることから、洪水が発生した場合の被害は甚大で、昭和58年、63年の二度に渡る豪雨では、既存の浜田ダムの調節機能を越えた降水量となり、想定以上の被害を受けた。特に58年7月の豪雨災害は、24年が経過した今日でも人々の心に傷を残している。このため、浜田ダムの再開発と合わせて、新たに第二浜田ダムが建設されている。



▲第二浜田ダム完成予想図(島根県浜田河川総合開発事務所 提供)





SEAMS-itシステムによる締め固めと土工管理で高品質・省力化を実現

―― 全自動型計測システムによる定水位透水試験で省力化と測定精度を向上

指久保ダム本体建設工事 三井住友建設・田中建設・田中組 特定建設工事共同企業体 所長 山口 進氏

▲指久保ダム 完成予想図


はじめに
 指久保ダムは青森県の南東部に位置し、十和田市の南部を流れる奥入瀬川水系の後藤川上流に建設中の農業用ダムである。
 堤高37.8m、堤頂長200m、総貯水量292万2000m3の中心遮水ゾーン型ロックフィルダムである。

工事経緯
 平成9年度に仮排水トンネルに着工、平成13年度から本体工事に着手し、基礎掘削、監査廊・洪水吐コンクリート打設等を実施し、平成17年度から本格的な盛立工事を開始、平成20年度には本体の盛立を無事、完了している。
 平成22年1月からの試験湛水に向けて工事は佳境を迎えつつある。

ダムの特徴
 本ダムではダムサイト右岸に固結度の低い第四紀層が厚く堆積しており、止水対策工としての「アースブランケット」や「地中連続壁」が設計・施工上の特徴となっている。


省力化・品質向上に向けた取り組み
@SEAMS-it締め固め管理システムの導入
 盛土材(約77万7000m3)の締め固めは、全て転圧回数と撒き出し厚で管理する工法規定方式が採用されている。
 工法規定による場合、重機の運転手の技量に大きく左右される部分が大きいことから、締め固め作業についてはSEAMS-it締め固め管理システムを導入し、盛立作業を進めてきました。
 結果、重機の位置と転圧回数を重機の運転手がリアルタイムに把握することで、盛土を合理的かつ高品質に施工することができました。
A定水位現場透水試験の導入
 ダム機能上重要な、遮水ゾーンの品質確認試験(定水位透水試験)を全自動型計測システムの採用により、計測作業の省力化と測定精度の向上に寄与しました。
BSEAMS-it土工管理システム導入による施工管理の省力化
 測量作業の大幅な省力化が可能となり、出来形管理の省力化に寄与しました。


おわりに
 盛立品質管理や挙動観測の結果、問題となる事項は発生しておらず、当初、設計・施工上の課題となっていた右岸部の湧水処理についてはひとまずの成果が得られたものと考えられる。
 しかし、確実な止水ラインの構築に向けて、未施工の仮排水路トンネル内の閉塞工等も今後、一層の注意を払い施工を進める必要がある。
 間近に迫った試験湛水に向け、確実なダム完成に一層努めたいと考えている。



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SP-TOMと18t固定式ケーブルクレーンで打設時間の制約を解決

――総合評価方式で99件の技術を提案

第二浜田ダム本体建設工事 鹿島・五洋・今井 特別共同企業体工事事務所 所長 近藤 正芳氏

▲図-1 第二浜田ダム完成予想図(島根県浜田河川総合開発事務所 提供)


はじめに
 浜田川は島根県の西部に位置し、その源を雲城山に発し途中多くの支川を合わせ浜田市の市街地を貫流して日本海に注ぐ、河川延長20km、流域面積62kuの二級河川である。この浜田川には昭和38年に完成した浜田ダムがあるが、この完成後も浜田市街地は数度の大きな洪水被害を受けている。このため、第二浜田ダムが既設浜田ダムの再開発とあわせて洪水調節を主たる目的として建設されている。形式は重力式コンクリートダムであり、浜田川の河口から約6kmに位置している。  本工事は、堤高97.8m、堤体積約33万m3の第二浜田ダム本体と右岸側の鞍部に建設される堤高27.8m、堤体積約3万6千m3の鞍部ダムを構築するものである。(図-1)
 ダムサイトの地形は、非常に急峻でV字谷を呈しており、両岸の平均勾配は45°以上の急勾配である。また、大部分の基礎岩盤は、古第三紀の浜田層群と呼ばれる安山岩質火山礫凝灰岩からなっており、表土は非常に薄く、CM、CH級の岩盤が一部には露頭している。また、右岸側から鞍部ダムサイトにかけては、デイサイト質凝灰岩が主体であり、比較的深部までCL級の岩盤が存在している。
 当工事は標準型総合評価方式により平成20年8月に公告され、平成21年3月に本契約に至っている。この際、技術提案評価項目としてダムコンクリートの品質・耐久性の向上等の6項目が指定されており、計99件の技術提案を行なった。

▲写真-1 下流より本体ダム方向を望む ▲写真-2 左岸より右岸天端を望む ▲写真-3 鞍部ダム基礎掘削施工状況


工事経過
 平成21年5月にダムサイトの伐採工事から着手した後、9月に起工式を行なった。また、12月には別件工事で施工された堤外仮排水トンネルへ浜田川本川を転流したが、これに先立ち仮排水トンネルのプラグ区間の基礎処理を行なっている。平成22年からは鞍部ダム基礎掘削、ダム用仮設備の設置等を行なっており、現在は本体ダムの基礎掘削にも着手している。
 8月には鞍部ダムのコンクリート打設を開始し、今年度中に完了する予定である。また、本体ダムは平成23年10月から打設を行ない、平成25年11月までの26ヶ月で完了する工程である。なお試験湛水は平成27年10月に開始する予定である。

▲図-2 基礎掘削時パース


工事の主な特徴
(1)購入骨材の使用
 第二浜田ダムの堤体積は鞍部ダムを含めると36万m3以上となるが、使用するコンクリート骨材は全量購入する。供給量が多いため、粗骨材はG1からG4の4種類を種別に3箇所の既存砕石工場から、細骨材は1工場から調達する。当工事ではダムの水密性、耐久性を向上させるために、購入骨材の品質確保と適切なコンクリート配合による綿密なコンクリート製造・打設計画を立案している。
(2)作業時間帯の制約
 ダムサイトは浜田市街地と山間地の境界部に位置しており、上流貯水池側には全く民家はないが、下流側には多くの民家が接近して点在している。このため作業時間帯が制約されており、コンクリートの打設作業時間は7:00から21:00とされている。従って夏期におけるコンクリートの温度上昇防止対策には万全を期す必要がある。このためコンクリート製造設備において骨材のプレクーリングを実施するなど、温度ひび割れに対する対策を計画している。また、公道を使用する資機材の搬出入は9:00から17:00とされている。特に、右岸側下流の市道カネヤバラ線は主たる資機材搬入路であるにもかかわらず、1車線が主体である。このため部分的な拡幅を実施した他、適切な交通誘導員の配置や定期的な道路清掃の実施等を行なっている。また購入骨材の運搬量を平準化するために、鞍部ダム打設完了から本体ダム打設開始までの8ヶ月の打設休止期間中に、鞍部ダム下流ヤードに約10万m3の粗骨材を仮置する計画としている。 (3)本体ダム基礎地盤の薄層掘削
 本体ダム基礎掘削は非常に急峻な地形を薄層掘削するよう設計されており、一部人力掘削を余儀なくされる他、小型機械による施工範囲も広い。このため、掘削時にも2本の荷役設備を配置し、小型機械や資材の搬出入を行なう。(図-2) (4)本体打設設備にSP-TOMと18t固定式ケーブルクレーンを併用
 標準案では本体ダムのコンクリート主運搬打設設備は20t固定式ケーブルクレーンであった。これに対し、コンクリート運搬設備を2系統化し、打設能力を上げる技術提案を行なっている。具体的には、嘉瀬川ダム、湯西川ダム等で実績のあるSP-TOMと18t固定式ケーブルクレーンの2設備である。(図-3)これにより許容時間帯内に打設が完了できないリスクを減少させ品質確保を図る計画としている。

▲図-3コンクリート打設時パース


おわりに
 現在、右岸天端の仮設備設置工事がほぼ完了し、ようやくダム現場の様相が整いつつある。ここには展望台設備も置かれ、さらに増える見学者にもダム工事の全容をわかり易くお伝えできるようになると確信している。
 今後も関連工事との調整を図りながらゼロ災で第二浜田ダムを完成するよう鋭意努力をしていく。


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