建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2010年7月号〉

interview

工事が進む首都高速中央環状品川線

――東京都の建設技術をフル発揮

東京都建設局道路建設部 部長 藤井 寛行氏

藤井 寛行 ふじい・ひろゆき
昭和54年5月 入都
昭和54年6月 建設局第四特定街路建設事務所
昭和61年5月 建設局道路建設部道路橋梁課
昭和63年4月 南多摩新都市開発本部東部区画整理事務所換地課
平成 3年4月 建設局道路建設部計画課
平成 6年4月 下水道局計画部施設計画課(課長補佐)
平成 7年4月 三宅支庁土木課長
平成 9年4月 建設局西多摩建設事務所補修課長
平成10年7月 建設局道路モノレール建設事務所工事課長
平成14年4月 建設局道路建設部関連事業課長
平成15年6月 都市計画局都市基盤部交通企画課長
平成18年7月 都市整備局参事(首都高速道路株h遣)
平成19年8月 東京オリンピック招致本部参事(調整担当)
平成21年4月 東京オリンピック・パラリンピック招致本部新施設建設準備室長
平成21年7月 建設局道路建設部長






――都が進めている首都高速中央環状品川線の工事概要をお聞かせ下さい
藤井 中央環状品川線は、品川区八潮から目黒区青葉台に至る延長約9.4kmの路線で、全長の約9割が地下トンネル式となり、高速湾岸線と中央環状新宿線、高速3号渋谷線とを連絡する路線です。  平成25年度の完成に向けて、東京都と首都高速道路株式会社が共同で整備を進めており、現在8kmの本線シールド工事、4箇所の換気所工事、大井ジャンクション工事、本線シールドとジャンクションの間の大井地区トンネル工事など全区間で工事に着手しています。  この品川線の完成により、約47kmの中央環状線の「リング」が完成し、高速道路全体のネットワークが効率よく機能し、都心環状線などの慢性的な渋滞が緩和されます。また、一般道路の混雑も緩和されることで、沿道環境の改善にも寄与します。  改善効果として、例えば、これまで都心環状線を経由して、新宿から羽田空港までは40分かかっていたものが、中央環状線の完成により20分で行けるようになるなど、拠点間のアクセスが向上されます。3月28日には、3号渋谷線と4号新宿線間の4.3kmが開通しましたが、これにより、速報値として、朝のピーク時における東京線の渋滞長が約22%減少するなどの効果も出ています。  また、環境改善では、品川線の完成により二酸化炭素(CO2)の排出量は年間約9万t削減されるなど、大きな改善効果が期待されています。
▲中央環状品川線 概要図
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――施工における課題や見所はどのようなところでしょう
藤井 トンネルは、併設で2本となりますが、そのうち1本を東京都が施工しています。  品川区大井地区に設けた発進立坑から新宿線との接続部までの区間を目黒川や環状6号線といった公共施設の地下空間を最大限に活用し、用地取得を極力少なくした線形となっています。  本線シールドトンネルの特徴は、セグメント外径12.3mの大断面シールドでは前例のない平均月進量約550mという高速度で、延長約8kmのトンネルを一気に掘進していくものです。  また、本線シールドと大井ジャンクションの間の大井地区トンネル工事では、民間からの技術提案を求める、「技術提案型総合評価方式」によって契約し、国内初の工法として立坑が不要な地上発進・地上到達のシールド工法を採用して、現在施工中です。
▲工法概念図
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▲大井地区トンネル概要
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▲本線シールドマシン
――今回の工事で採用された工法の特徴はどのようなものですか
藤井 これまでは、2〜3km毎に立坑を設けてシールドを掘進することが多かったと思いますが、今回の本線シールド工事では、8kmを一気に掘進するため、長距離施工に耐えるように耐磨耗性の高いビットを使用したり、ビットの高低差配置を行うなどの対策を行っています。また、ビットが飛んでしまった時などに対応できるように、二重ビットや可動式レスキュービットを装備するなどの工夫をしています。  高速掘進に関しては、掘進中にセグメントの組み立てを行う「セグメント掘進同時組立システム」を採用しており、セグメント自体も国内最大寸法となるセグメント幅2.0mを採用し、1リングあたり8分割として、組立て時間の短縮も図っています。  大井地区トンネル工事で採用した地上発進のシールド工法は、環境に配慮するため開削面積の縮小、セグメントの耐久性などについて技術提案を求め採用に至ったものです。  この工法は、地表面上から直接シールドマシンを発進させ、そのままトンネルを掘り進み、地上へ到達するというもので、発進や到達のための立坑が不要になります。  そのため、工期が短縮できるとともに開削部面積および掘削土量を最小限とすることで、環境への負荷を低減させることができます。  元々は、都市部の交通渋滞が発生している交差点において、短期間にアンダーパスを構築するために開発されたもので、当初は矩形のシールドでしたが、今回は円形のシールドとして初めて実際の工事に採用したものです。


▲発進を待つシールドマシン ▲本線シールド発進基地 全景
――工事現場での環境対策としてはどのような取組があげられますか
藤井 約8kmの本線シールド工事では、工事から発生する土砂を隣接する京浜運河を利用し、海上輸送とすることで環境負荷の低減を図っていることも特徴の一つです。  8kmのトンネル1本あたりで約100万m3もの掘削土砂が発生します。  通常のシールド工事では、立坑から発生する土砂はダンプ等の車両で運搬されますが、今回は、この発生土のほとんどを船で運搬する計画としています。ダンプで約18万台分の土砂を海上輸送にしたわけです。  立坑に隣接する京浜運河に仮桟橋を設置し、そこまでベルトコンベアで土砂を運搬して船に積み込んで運搬しています。  また、品川線には4箇所の換気所が設置されますが、換気所工事は、市街地での施工となるため、特に騒音、振動対策に注意しています。  防音ハウスを設置したり、低騒音、低振動の建設機械を用いるなど、周辺環境に十分配慮した施工を行っています。
▲発進立坑〜仮置場 運搬経路
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――今後の東京の道路ネットワーク整備目標についてお聞かせください
藤井 中央環状線、外環道、圏央道の首都圏三環状道路をはじめとする幹線道路ネットワークの整備は、東京の最大の弱点となっている交通渋滞を解消し、東京と日本の持つ可能性や潜在力をさらに引き出すために必要不可欠です。  東京都では、三環状道路のほか、区部の環状方向の道路や多摩部の南北・東西方向の骨格幹線道路などの整備を推進するとともに、開かずの踏切を解消する連続立体交差事業を進めています。  東京の道路整備は、都市の機能や利便性を向上させるだけでなく、日本全体の経済を活性化させ、国際競争力を高めるなど、その効果は全国に及びます。  今後とも、都民・国民の快適性をより一層向上させるために、三環状道路をはじめとする東京の道路整備に全力で取り組んでまいります。

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