建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2010年6月号〉

連載

連載 公共投資は不要か

〜京都府・和歌山県

 ハイチ大地震で20万人が犠牲になったほか、チリ、インドネシア、中国青海省など世界各地で大地震が発生している。また、アイスランドの噴煙はヨーロッパ各地に広がり、各国の空路が閉ざされて大混乱に陥るなど、大自然の猛威を改めて見せつけられている。地震列島と言われる我が国も、過去に幾多の災害を経験しているが、国内の世論と政策は脱公共事業による福祉優先への潮流となって久しい。災害によって破壊された地域を再建する復興事業や、人々の生活と経済を支える土木インフラ整備、そして地域経済の発展と自立の切っ掛けとなる建築事業によるまちづくりへの公共投資を、不要と言えるほど我が国は全国各地に行き渡ったと言えるのだろうか。地域のまちづくりとインフラ整備を担う全国自治体関係者の見解と取り組みを紹介していく。

京都府


寄稿 京都府建設交通部 部長 安藤 淳氏

和歌山県


ズームアップ 河川課
ズームアップ 和歌山県の主要道路網整備事業






府民とともに進める公共事業で基盤整備(後編)

京都府建設交通部 部長 安藤 淳氏


安藤 淳 あんどう・じゅん
昭和34年3月9日生まれ
昭和58年3月 東京大学大学院卒(土木)
昭和58年4月 建設省採用
平成 7年4月 建設省中国地方建設局鳥取工事事務所長
平成11年4月 建設省道路局地方道課企画専門官
平成13年7月 国土交通省道路局国道防災課道路保全企画官
平成16年4月 国土交通省熊本河川国道事務所長
平成18年7月 国土交通省道路局企画課道路事業分析評価室長
平成20年4月 京都府建設交通部技監
平成21年4月 京都府建設交通部部長


(前号続き)
(3)人・間中心のまちづくりの推進
 公共事業については、環境への影響を事業実施の各段階毎にチェックする『環』の公共事業ガイドラインを全対象工事で実施するなど、環境に優しい公共事業を推進するとともに、過度な自動車利用を抑制し公共交通への利用転換推進や、地域景観・資源を活かしたまちづくりを進めます。
 京都が世界に誇る代表的な河川である鴨川ついては、鴨川府民会議において府民の意見を聴き、河川整備計画の策定や、放置自転車撤去等の条例関連施策を推進し、安心・安全で多くの人々から親しまれる川づくりを進めています。近畿を代表する河川(桂川・宇治川・木津川)が合流する三川合流部においては、国・地元市町と連携し、自然体感型の環境学習や交流活動を支える地域づくりを進めていくこととします。
 このほか、高齢者・子育て世帯・障害者向けの住宅供給の取り組みや、建築物や道路のバリアフリー化を進め、人に優しく住みやすいまちづくりを推進していきます。
(4)公共事業の改革・府民との協働
 京都府では、道路や河川、公園等の社会基盤整備に関する府民理解を深めるとともに、さらなる行政運営の透明性向上を目指し、計画・工事・維持管理の各段階において、ワークショップや工事見学会、清掃活動など、「府民が親しみ参加・参画する公共事業」の取組を継続的に行っています。
 また、公共事業を効率的かつ効果的に進めるため、事業プロセスを検証し更なる選択と集中を図るとともに、入札契約制度の更なる改善や公共事業の品質確保に精力的に取組んでいます。

▲鴨川 ▲美山川ワークショップ
▲畑川ダム工事見学会 ▲大手川清掃活動


おわりに
公共事業に対する批判が厳しく逆風の時代でありますが、本来、公共事業は日本の国土建設を担い、地域力の再生にも欠かせない存在であります。このような時代である今こそ、地に足をつけ、事業計画段階からワークショップなどの府民協働を心掛けることにより、公共事業について府民に理解を深めていただくことが大切です。持続的な事業実施には府民協働こそが原点であり、府民に応援団となってもらえるような取り組みを継続していきたいと考えております。



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63年洪水で30億円の被害

――頻発する渇水に悩まされ続ける県民生活を救う

和歌山県 河川課


▲切目川ダム 完成予想図

 昭和63年9月の洪水は、切目川流域で176戸の家屋が浸水するなど、約30億円の被害をもたらす大災害となった。避難路である国道425号、県道古井西ノ地線、避難場所である切目川小学校のグランドなども冠水し、住民の避難に支障をきたした。
 反面、切目川流域は渇水も頻発しており、渇水時には川の所々が瀬切れとなり、農業用水が不足するなど県民生活に影響が出るとともに、水辺に暮らす魚など生物の生息環境が悪化している。中でも印南町では、水道水源の一部を不安定なため池に依存しているが、近年の生活様式の変化などにより水需要は増加し、夏場などの渇水期に必要な水量の確保が難しくなっている。これらの事情から、本格的な洪水調節と水資源確保のための対策が求められていた。
 そこで県は、地域住民の要望に応え、「二級河川切目川水系河川整備計画」を策定し、その中核施設となる切目川ダムの建設に着手した。施工の基本方針としては、切目川流域に大きな被害をもたらした昭和63年9月洪水と同規模の洪水で再度被害を生じることがないよう、河川改修と切目川ダムの建設を併せて行うことにより、概ね20年に一度の確率で発生する規模の洪水を安全に流下させる考えだ。
 また、河川水の利用は、印南町の水道用水の需要増大に合わせて、切目川ダム建設により確保される水源を有効に活用し、水資源の合理的な利用促進を図る。概ね10年に一度の割合で発生する規模の渇水時においても、流水の正常な機能を維持するために必要な流量を確保し、動植物の保護、流水の清潔の保持及び既得取水の安定化を図る。
 工事は、付帯工事として切目川4号橋、5号橋の各上部工と仮排水トンネル、国道425号及び町道の付替工事などが実施されている。

ダム及び貯水池諸元
ダ ム 形 式:重力式コンクリートダム
ダ ム 高:44.5m
ダ ム 長:127m
集 水 面 積:21.9 ku
湛 水 面 積:約0.3 ku
総貯水容量:3,960,000m3
有効貯水容量:3,410,000m3
洪水調節方式:自然調節方式


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国道424の拡幅、バイパス整備を推進

和歌山県の主要道路網整備事業



 和歌山県内では、国道424号などでバイパスや拡幅工事が行われており、交通利便性と安全性の向上とともに、産業振興と地域発展を後押しするほか、建設投資の波及効果により地域経済を活性化させる投資事業として大きく期待されている。


 一般国道424号は、和歌山県の南北を結ぶ地域間交流を支援する重要な路線だが、日高郡日高川町初湯川から同町熊野川の区間では、幅員狭小と線形不良が連続しており、大型車のすれ違いが困難な区間となっている。
 滝頭拡幅は、このすれ違いが困難な区間の解消を目指しており歩道整備と合わせて、安全・快適な通行が確保される2車線化現道拡幅事業だ。
 この事業は、県長期計画において、高速道路と合わせて県内の一体的発展に寄与する内陸部骨格道路(X軸ネットワーク)として重点整備に位置づけられている。



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