建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2010年6月号〉

特集

新宿御苑大温室


ズームアップ  関東地方整備局 新宿御苑大温室
寄     稿  新宿御苑大温室新営その他工事 戸田建設株式会社 東京支店 現場代理人 岡田 崇氏


▲新宿御苑温室 鳥瞰パース





環境配慮型の画期的な大空間を構築

――ペアガラスとクールチューブにより空調負荷の少ない大温室を実現

関東地方整備局 新宿御苑大温室




▲新宿御苑温室 鳥瞰パース
▲主入口 ▲大木戸門脇 ▲通路-1 ▲ブリッジ
▲主温室エリア


プロジェクト概要
 国民公園として広く親しまれている新宿御苑は、既存温室の老朽化による設備の機能低下にともない、近年の社会的ニーズや利用の変化にも対応できなくなってきているため、大温室の建替え計画が進められている。
 大温室には、高温多湿の環境を好む熱帯低地植物や高温乾燥の環境を好むサバンナ・砂漠植物、中温中湿度の環境を好む熱帯山地植物等、生育環境が異なる植物生息している。
 そこで、計画にあたっては、既存温室内外の植物遺産の継承、絶滅のおそれのある植物の保護、都心の公園・緑地内の施設として必要な機能、環境に配慮した施設、21世紀にふさわしい温室の整備を目標とし、特に環境への配慮が整備の重点に置かれている。
 通常の温室施設では、冬場は暖房設備が使用され、夏場はガラスで覆われた空間はかなりの高温となるため、冷房設備や換気設備の導入を行っているが、今回の計画ではペアガラスを採用し、暖房負荷の低減、クールチューブを介した年間温度変動の小さい地中熱の利用、屋根面及び壁面の一部に開閉機構を設けて自然換気の導入を図るなど、地球環境に配慮した温室整備が行われている。


▲鳥瞰


建設場所:東京都新宿区内藤町11
敷地面積:583,061.13u
構造・規模:鉄骨造 平屋建
      建築面積 2,497.75u
      延床面積 2,740.41u
発注者:国土交通省関東地方整備局
設計者:株式会社 日本設計
監理者:国土交通省関東地方整備局東京第一営繕事務所
    株式会社 日本設計
施工者:戸田建設株式会社
工 期:平成21年2月4日から平成23年12月26日(予定)


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現場代理人は施工のプロデューサー

―― モノ造りに想いを込めて ――

新宿御苑大温室新営その他工事 戸田建設株式会社 東京支店 現場代理人 岡田 崇氏


▲作業所全景写真


 今回の工事における大きな特色は、外気を地熱冷却して取り入れるためのクールチューブやペアガラスを屋根全面に採用するなど、温室内の空調負荷を低減する工夫が多く取り入れた設計がなされていること、そして単層ラチスシェル構造という三角フレームを連続させ三次元に力を分配し重量を均等に柱に伝達させる鉄骨、その上に三角形のガラスパネルで構成されたガラスカーテンウォールを外装とする特徴ある構造形式となっていることです。
 当作業所では、これら複雑な形状の特に鉄骨と外装工事について、お客様が求める品質と施工精度を確保することを課題として取り組んできました。
 一般的な建築物とは異なり温室という特殊用途の施設であるため、大スパンの特殊な鉄骨を架構することとなります。溶接作業一つとっても下向き溶接だけではなく、上向き溶接も多くあるため、施工スタッフは経験ある熟練工を確保することも重要となってきます。また外装工事においても、三角形のガラスパネルを組み合わせた複雑な形状をしていますが、当然のことながら施工中の地震などにも耐えうる必要があります。
 そこで私たちは、設計者はもちろん協力会社や当社技術スタッフによる会議を定期的に開催し技術的な検討を行なっていくこととしました。時には実物大の試験体を製作し実験を行なうなど、一歩ずつ技術的な課題をクリアしていく。そういった地道な作業を現在繰り返しています。
 建築の施工に従事する立場の人間としては、こういったさまざまな技術的な課題を解決しながら、施主、設計者、そして利用者の皆様が満足できるモノを造り込んでいく、ここに大きな醍醐味があります。そして現場代理人という職責は、それを実現するために現場の隅々にわたって現状を把握し、それに携わる多くのスタッフをコーディネートしていくプロデューサーであり、またコンダクターという役割を担います。その成果として、長年に渡って世に残っていく構築物を完成させていくことには大きな達成感があり、深い魅力のある仕事だと感じています。我々の業界に入職した若い技術者にもこの大きな感動をぜひとも身を以て経験してほしいと思っています。



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