建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2010年4月号〉

interview

木製収納式防雪柵の開発で注目

――82歳のアイディア社長「まだ10年はやれる」

株式会社 アサヒ建設コンサルタント 代表取締役社長 桜庭 慶一氏

桜庭 慶一 さくらば・けいいち
昭和 2年 8月25日生まれ
昭和20年 3月 樺太庁真岡中学校(5年制) 卒業
昭和22年 4月 金沢工業専門学校 中退
昭和24年 9月 橋本建設工業梶@入社
昭和43年11月 アサヒ砕石梶@取締役 就任(昭和62年6月 退任)
昭和49年10月 潟Aサヒ建設コンサルタント 代表取締役社長 就任 (現在に至る)
昭和61年 5月 橋本建設工業梶@取締役 就任(昭和65年6月 退任)
昭和56年 5月 アサヒ道路梶@取締役 就任(昭和65年6月 退任)
公職
昭和53年 旭川建設コンサルタント協会 会長(平成10年 退任)
平成62年 北土調査設計事業協同組合 理事長(平成18年 退任)
平成 6年 (社)全国樺太連盟 旭川支部 支部長(現在に至る)
平成10年 旭川測量設計協会 会長(平成14年 退任)
平成10年 (社)日本測量協会 理事(平成14年 退任)
平成12年 (社)日本補償コンサルタント北海道支部 監事(現在に至る)
平成20年 (社)北測協(現在に至る)
株式会社 アサヒ建設コンサルタント
本社/旭川市8条通15丁目左4号
TEL 0166-23-4526

 アサヒ建設コンサルタントの桜庭慶一社長は、昭和2年8月生まれの82歳。現在、北海道測量設計業協会副会長等の要職を務め、長年にわたって業界の発展に尽くした功績が認められ、09年度の北海道産業貢献賞に輝いた。最近も収納式防雪柵を開発するなど80歳を越えてもなおアイデア社長としての衰えは見られない。「あと10年は大丈夫」と意気軒ミな桜庭社長に伺った。

――アサヒ建設コンサルタントの設立の経緯は
桜庭 昭和43年に橋本建設工業の専務だった吉田茂が社長、橋本脩二が会長となり、私も含め4、5人が取締役に就任して創業しました。以前から取り組んでいた測量業務よりも設計業務にシフトして営業活動を展開しましたが、思うように受注できず、一時は解散話まで出たぐらいです。
 49年の8月に、吉田社長が稚内へ出張中に急逝したため、私が急きょ跡を継ぎました。橋本建設に在籍していた当時は営業部門も担当していたので、その頃の人脈を通じて受注を伸ばし、2、3年で社長就任時にあった400万円の借金をすべて返済しました。
――いま建設コンサルタント業界は、まさに「冬の時代」です
桜庭 現在、社員は76名で、平均年齢は35.0歳です。技術士12名、RCCM 43名、一級土木施工管理技士31名等技術者数は道内の建設コンサルタント業界でもトップクラスと思っています。
 新規採用は3年前から抑制しており、今後はワークシェアリングや給与水準の見直しで対応せざるを得ません。
――社長のプロフィールを伺いたい
桜庭 私は昭和2年8月25日に生まれ、旧樺太の真岡中学を卒業しました。その後、金沢高専に進み、応用科学を学びましたが、戦後中退し、24年に橋本建設工業に入社し、翌年には現場代理人を務めて、土木工事の施工に携わってきました。
 その後、本社土木係長、課長、常務取締役に昇進、最後は専務を拝命しました。暫くは両社を兼務していたものです。
――長年の経験の中でも、印象に残っている現場は
桜庭 振り返って思い起こすと、橋本建設時代の確か昭和32年に帯広開発建設部から明きょと暗きょの2,200万円の工事を受注しました。コンクリートの呑吐口を設置するにあたり、型枠を外すまでに一箇所で10日間の工期が必要です。この時、国内で初めてプレキャスト工法を採用し、掘削し基礎を作って据え付けるだけにしましたが、後で考えたらパテントを申請すれば良かったと思ったものでした。
 また、敷幅30cm、法8分、深さ1.2m、延長4〜5kmの明きょ工事で、どこでも同じ形を維持できるアタッチメントを設計して、バックフォーに取り付けました。これによって人力作業の10倍から20倍も作業効率がアップし、現場経費は契約金額の半分位で済みました。ところが、後で発注者からは人力設計を機械で行うのは「おかしい」と、叱責されました。土木機械のない時代でしたから、画期的なことだったとは思います。これが、一番思い出深い現場ですね。
 歌登では、橋梁工事を受注しました。丸型のピアに丸形の張り出し部の設計で、大工さんが型枠を作るのに困ってしまい、数学が得意だった私が投影法で丸型の型枠を大工さんに造ってもらったところ、ピッタリでした。
 また、稚内開発建設部発注の橋梁業務で、延長は約100mぐらいでしたが、深い川向いに機材を渡すのに発注者は保安林を解除してもらい、仮道を造成して車による運搬を考えていたようですが、保安林の解除は容易なことではなかったのです。これでは今年や来年の仕事にならない。
 そこで私が、ロープを渡し、仮のクレーンを作り、それで本式のケーブルクレーンで建て、機材運搬を提案し解決しました。保安林は原形復帰ですから、役所の担当者も喜んでくれました。いまなら評価点は95点ぐらいもらえたでしょう。
――現場を熟知している人がコンサルの会社にいる強みが発揮されたのですね
桜庭 その他にも、川のピスケット砂利はコンクリートや敷砂利には使えないので、当時は生コン用や敷砂利をすべて遠別から搬入していました。しかし、採算面を考えて、付近の川から硬い玉石を馬車で集め、大きなクラッシャーで砕石して下地とし、表面の5cmだけを遠別産の砂利にして合理化したこともあります。また、レールで手製のタワーを造り、バケットで上げてシュートで向こう岸に搬送し、労力の節減に努めました。
 現場代理人として、いかに早く、安く、いいものを造るかに専念していました。そのためには、当たり前の考えでは駄目です。当社では毎月2回技術検討会を開催して取り組んでいますが、いまでも私がアドバイスすることがあります。
――なかなか第一線を退いて悠々自適とはいきませんね
桜庭 今の若い人は、いろいろと計算でき、マニュアル人間になっています。もっと自由な発想をすべきです。施工性への配慮や計画が足りないような気がします。どうすれば施工が上手くできるかを考えて設計することが最も重要です。
▲収納式木製防雪柵 ▲収納式木製防雪柵 収納時
――独自に開発された収納式木製防雪柵は好評のようです
桜庭 私のパテント数は、主に建設関連で11ヶあります。今回木製防雪柵について、一般的に木は腐るといわれていますが、実際に腐るのは地際20〜30cmの範囲で、キノコの菌等が原因ですから、それさえ防護すれば良いのです。
 そこで、下部が腐らないようにし、木製でも50mの風速でも耐えるように設計しました。木と木との間にジベルを挟み、ボルトで締め付けて、木同士が摩擦しないようにしています。本来、木材の耐用年数は長く、100年位は十分に使用できるものです。金属を腐食させる潮風にも強く、木は逆に潮風に当たると強くなるそうです。防雪柵に必要な機能を備えていながら、費用は鋼製以下で、金属製による景観悪化、Co2の発生も少ない。逆に、山間部で鋼製の防雪柵を見ると本当に興ざめしますね。
 木製であれば、間伐材の活用で現場近くの製材工場による地産地消の推進にも結び付きます。雪の季節が終わると土台に収納することで、高さが3.6mから1.2mに縮みます。エコポイントも得られるので安くなります。
 2月18、19日に開催された「ゆきみらい2010 in青森」に出展しましたが、 「奇想天外」と評判になりました。現在は、試作品を鷹栖町の鋼製防雪柵の隣に設置し、実証試験のデータを改良に反映したいと考えています。

会社概要
創  業:昭和43年2月1日
資 本 金:2,000万円
営業種目:
 建設コンサルタント
  (道路部門・農業土木部門・鋼構造及びコンクリート部門・建設環境部門
   河川、砂防及び海岸、海洋部門・下水道部門)
 補償コンサルタント(土地調査部門・物件部門・事業損失部門)
 環境証明業(騒音・振動)、地質調査業、測量業、1級建築士事務所、
 コンクリート診断、空測図化、建設業
認  証:ISO 9001/JSAQ 767
     ISO 14001/JSAE 1188


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