建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2010年4月号〉

特集

コンクリートで安全な県土整備

阪神淡路震災15周年の兵庫県


寄     稿 兵庫県県土整備部 部長 河野 信夫氏
寄     稿 大鉄工業株式会社 土木支店 明石黒橋作業所 所長 梅原 進氏
ズームアップ 千種川水系千種川 床上浸水対策特別緊急事業
ズームアップ 兵庫県立尼崎西高等学校


▲(都)黒橋線街路整備事業 主桁降下状況





元気で安全・安心な兵庫の社会基盤づくり

兵庫県県土整備部 部長 河野 信夫氏




河野 信夫 こうの・のぶお
昭和25年4月25日生まれ 
昭和44年3月 県立大分上野丘高等学校 卒業
昭和49年3月 山口大学工学部土木工学科 卒業
昭和49年4月 土木部道路建設課勤務
平成 3年4月 土木部総務課係長(新宮町都市計画課長)
平成 5年4月 企業庁開発課係長(淡路島国際公園都市整備室)
平成 6年4月 企業庁公園都市整備局淡路島国際公園都市整備課長補佐 兼 整備計画係長
平成 7年4月 企業庁都市整備局新都市整備課長補佐兼整備計画係長
平成10年4月 土木部総務副課長(中町技監)
平成12年4月 県土整備部土木局道路保全課主幹兼道路環境係長
平成14年4月 阪神北県民局県土整備部三田土木事務所長
平成16年4月 県土整備部県土企画局交通政策担当課長
平成18年4月 中播磨県民局県土整備部長兼姫路土木事務所長
平成19年4月 県土整備部土木局長
平成21年4月 県土整備部長


 社会的・経済的な諸機能が高度に集積し、高齢化が進む大都市を直撃した阪神・淡路大震災から15年が経過しました。
 昨年は、台風第9号により県内に大きな被害が発生しましたが、ハイチ大地震、国内でもゲリラ豪雨被害など自然災害が頻発しています。また、近い将来には東南海・南海地震などの発生も予想されています。
 このようななか、平成22年度は、「まもる」「つくる」「つかう」の3つの重点施策を柱に震災や昨年の台風第9号災害等の教訓も踏まえ、元気で安全・安心な兵庫の社会基盤づくりに取り組んでまいります。


まもる
〜頻発する自然災害に対する安全・安心の確保〜

水害対策の推進
 平成21年台風第9号で甚大な被害を受けた佐用川・千種川等において災害復旧助成事業等を推進するとともに、近年多発している局地的豪雨等による災害を未然に防止するため河川改修事業や与布土ダムなどダム事業の推進、都市浸水対策の推進、武庫川水系河川整備計画の策定などに取り組んでまいります。
土砂災害対策の推進
 平成21年台風第9号による被災箇所の緊急対策を実施するとともに、台風第9号等の災害の教訓を踏まえた荒廃林地下流の土砂・流木流出対策、災害時要援護者施設対策として砂防えん堤等の重点的整備を進めてまいります。
東南海・南海地震への備え
 切迫性が高まっている東南海・南海地震の津波対策として、地震の発生後、約60分後に津波の到達が想定されている南あわじ市の福良港において津波からの住民、観光客の安全を確保するため、水門・陸閘等の遠隔自動操作機能に加え、津波情報の提供機能、避難高台機能、平時の防災学習機能を持った津波防災ステーションを今年の夏に供用開始させます。
 また、落石危険箇所や橋梁などの点検を行うとともに緊急輸送道路の橋梁耐震補強や港湾の耐震岸壁の整備など、地震災害時にも救援・復旧活動ができる信頼性の高い交通網を整備してまいります。


つくる
〜活力ある兵庫の基盤整備〜

多元・多重の基幹交通網の整備
 県土の骨格を形成し、多様な交流を支え活力ある兵庫の社会基盤として、12月には鳥取豊岡宮津自動車道余部道路が供用を開始します。引き続き、北近畿豊岡自動車道の事業促進など環日本海地域の人・物・情報の交流を強化する広域連携ネットワークの形成など県内外との交流の活性化を図る道路整備、さらに、新名神高速道路の事業促進や名神湾岸連絡線、播磨臨海地域道路、大阪湾岸道路西伸部の早期事業化など関西都市圏域高速道路網のミッシングリンクの解消を図る道路整備を進めてまいります。
 また、安全でクリーンな公共交通機関である鉄道網の強化として、山陰本線の安全性・定時制を確保するため、現在、事業中の余部橋梁架け替え工事について今秋に新橋梁の供用を開始します。
 さらに、物流・産業拠点として相応しい港湾機能の強化を図るため、姫路港、尼崎西宮芦屋港等の整備を推進してまいります。
くらしと交流を支える道路網の整備
 地域の交流を支える道路網として都市計画道路尼崎宝塚線等の南北道路や国道372号社バイパス等の整備を図ってまいります。
 また、市町合併後の新しいまちづくりを支援するため、新・旧市町の中心部を結ぶ道路の整備、県民に最も身近な生活道路のうち日々の生活に支障をきたしているすれ違い困難箇所や渋滞交差点の解消、歩道の連続性確保などを推進してまいります。
都市の基盤整備の推進
 阪神・淡路大震災からの創造的復興のシンボルロードとして大阪府境から尼崎市、西宮市、芦屋市及び神戸市長田区に至る全長約29.6kmで整備を進めていた都市計画道路「山手幹線」が今年秋に全線開通します。
 また、都市交通の円滑化と踏切事故や渋滞の解消を図るため阪神鳴尾駅付近等3カ所で連続立体交差事業を推進してまいります。
 さらに、瀬戸内海をはじめとする公共水域の水質保全、生活環境の高度化を図り、良好な水環境の創造を目指して武庫川上流流域下水道等の整備を推進してまいります。


つかう
〜生活の質を高める社会基盤整備の再構築〜

安全・快適な道路空間の整備
 通勤、通学、買物等の日常生活において、徒歩、自転車、車椅子など誰もが安全で、気持ちよくスムーズに移動できるよう、歩道、自転車道の整備を計画的に推進するとともに、渋滞交差点や開かずの踏切などボトルネック部の対策を重点的に進めるなど、快適な移動環境の実現にも取り組んでまいります。
公共交通の利便性向上
 神戸電鉄の車両ATS装置の更新や重レール化など輸送高度化による鉄道の安全性確保に取り組むほか、JR姫新線の高速化に併せた増便社会実験やJR山陰本線・播但線輸送改善事業などの利便性向上を推進してまいります。
 また、住民の最も身近な公共交通機関として重要な役割を果たしている生活交通バスを維持確保するため、路線バスやコミュニティバスの運営支援を行ってまいります。
 さらに、関西の航空需要を最大化する航空ネットワークを構築できる関西3空港の一元管理の実施に向けた取組を推進します。
計画的・効率的な維持更新の実施
 今後増大する老朽施設の補修や更新を的確に進めるため、橋梁や排水機場等の長寿命化計画を策定し、計画的に更新、修繕工事を行うなどアセットマネジメントの考えを取り入れ社会基盤施設の適正な維持管理を推進してまいります。
 最後に、平成22年度の政府予算案では公共事業関係費の伸びが85%と大幅に削減されるなど公共事業にとって厳しい環境になっておりますが、限られた財源の中で必要な事業への選択と集中により、兵庫県が直面する課題をしっかりと捉え、県民本位、生活重視、現場主義を基本として、元気で安全・安心な兵庫の社会基盤づくりを推進してまいります。



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高度な技術を要した曲線桁の降下作業

(都)黒橋線街路整備事業

大鉄工業株式会社 土木支店 明石黒橋作業所 所長 梅原 進氏


▲主桁降下状況


 私たちは、黒橋線街路整備事業に基づき、JR山陽本線や山陽電鉄の路線を跨ぐ権現橋の架け替え工事を施工しています。この工事では、橋・架設桁の設置、鉄道上部主桁組立・縦取り、架設桁引き戻し・撤去、鉄道上部主桁降下、残主桁・歩道斜路設置が行われます。橋梁形式は2径間連続鋼床版4主箱桁で、A1-P1間を第1桁、P1-A2間を第2桁として径間ごとに架設しました。
 うちIR山陽本線と山陽電鉄本線の線路上に架ける第1桁の平面線形は、曲線半径60mという急カーブの上に、勾配も8.794%と急であるため、工法として「架設桁上縦取り架設+ワイヤークランプ装置による主桁降下架設」を採用しました。
 これに基づき、線路上空に架設桁をレベルで送り出し、施工ヤードの架設桁上で主桁を組み立て、前部台車・後部台車の2点支持による自走台車で主桁の縦取りを行いました。そして、A1橋台・P1橋脚部に組み立てた門型ベント設備と仮受設備により、門型ベント設備からの吊支持と桁下からの仮受支持の2つの支持方法で主桁を支持し、架設桁を引き戻しました。第1桁の架設完了後に、第2桁をトラッククレーンベルトで架設しました。
 この作業の中でも、特に山場となる見所は橋桁の架設で、主桁は架設位置の上部から橋脚への降下量が多く、しかも縦断勾配によりA1・P1側で降下量が異なるため、回転させながらの降下となりました。したがって、降下中に吊点位置が移動するので、フレキシブルに対応できるワイヤークランプ装置を導入しました。
 第2桁については、先に架設した第1桁の仕口形状に合わせて上げ越し架設を行い、トラッククレーンベルト架設で施工しました。完了後にA2橋台部でジャッキダウンし、連続桁形状となるモーメント連結で施工しました。
 主桁重量は585tで、主桁縦取り量は44.3mという規模ですから、荷重管理が重要なポイントです。曲線桁のアンバランスにより、台車受点荷重が各ポイントで異なることから、荷重変動のバラツキによって主桁、架設桁、台車などに過大な応力がかからないよう配慮することが安全管理において重要で、しかも営業路線の線路6線が閉鎖するのは夜間の30分間ですから、その間に無事に終了させなければなりません。
 そこで前後2つの台車の受点部に配置した油圧ジャッキストロークにより、各移動ステップごとの設計反力に対して設定した管理目標値内へ自動修正制御するため、「荷重管理・制御システム」を導入しました。



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上郡地区住民の暮らしに安全と安心を

――16年台風で482戸が床上浸水

千種川水系千種川 床上浸水対策特別緊急事業


▲千種川 空撮
▲被災写真 ▲平常時の隈見橋の様子


 千種川は中国山地の分水嶺江波峠を水源に、途中で岩木川、鞍居川、安室川などと合流して播磨灘に至る2級河川だが、流域面積は4市2町にまたがる754kuで、法定河川延長は約72kmに及ぶ大規模河川だ。それだけに洪水発生時の被害は甚大で、昭和51年の洪水では、上郡地区で浸水家屋が4,300戸に及んだ。そのため、県は河口から21kmを全体区間として昭和54年から改修事業を実施してきた。
 しかし、平成16年9月の台風21号による洪水では、改修途中だった上郡地区で流下能力900m3/sを上回る推定通過流量2,200m3/sの出水があり、これによって床上浸水160戸、床下浸水322戸と482戸が浸水、浸水面積は125haに及んだ。
 さらに、この地区では平成10年にも浸水被害が発生していることから、3,200m区間を対象に床上浸水対策特別緊急事業として、整備計画流量2,300m3/sを目標に集中的な河川改修に着手した。
 計画では、河床掘削と築堤や嵩上げ、引堤を設置し、それに伴い橋梁・大持井堰・樋門の改築を行なっている。これによって、16年の台風21号に匹敵する台風が再び通過しても、氾濫を起こさすことのない川づくりを目指している。


事業区間:上郡町竹万〜大枝新
事業延長:3,200m
総事業費:139億円
事業期間:平成18年度〜22年度
主な改築構造物:上郡橋・隈見橋・新田橋・大持井堰
そ の 他:上郡中学校移転



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環境配慮型の学校づくり

――住宅地と調和したデザイン

兵庫県立尼崎西高等学校


▲兵庫県立尼崎西高等学校 パース


 兵庫県立尼崎西高等学校は、第1期建築工事として校舎棟などの施工が進められている。この学校の設計に当たっては、武庫川の豊かな自然環境と、中低層住宅地としての機能を損なわないよう、施設の配置・規模・高さについて配慮されている。
 また、同校では特色選抜のうち「ゆめサイエンス」、「地球環境学」などの教科において、地球環境や温暖化問題に取り組んでおり、太陽光発電、建物緑化、雨水再利用などを直接的に学ぶことが出来る環境に配慮した施設づくりを目指している。
 一方、指定避難場所及び大火災避難場所に指定されており、地域住民によく把握されるように周辺環境に配慮しつつ、ランドマークとなりうるデザインとする。


工事概要
設置年度完成予定:平成24年3月
建設場所:尼崎市大島2丁目34番1号
地域地区:第1種中高層住居専用地域、第2極高度地区
敷地面積:31,907u
工事期間
 全体:平成21年7月〜平成24年3月(予定)
 1期:平成21年7月〜平成22年9月
 2期:平成22年9月〜平成23年12月
 3期:平成23年8月〜平成24年3月



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