建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2010年3月号〉

寄稿

安全で安心な北海道らしい住まいづくりに向けて

――北海道の公営住宅政策について

北海道建設部住宅局住宅課 課長 石塚 宏氏


 私たちは、平成19年2月に「北海道住生活基本計画」を策定し、安全で安心な北海道らしい住まいづくりを目指した住宅政策を進めています。


■これまでの取組み■
 住宅不足の解消や広さの確保のほか、積雪寒冷という気象条件の中、産学官の連携を図りながら、寒さを防ぎかつ省エネルギーを実現するための断熱性・気密性の向上や暖房・換気などの技術開発、凍害に対する耐久性の高い建材開発を進めてきました。
 また、公営住宅では、室内の段差解消といった高齢化対応のほか、堆雪スペースの確保や雁木の設置など、風雪に配慮した配置計画も取り入れています。
 これらは、民間住宅においても「北方型住宅」として普及推進することにより、性能水準及び住環境の向上を図ってきました。


■住宅政策の方向■
 それらを発展させながら、多様なニーズに対応し、地域事情や課題にきめ細やかに取り組むべく「北海道住生活基本計画」では3つの住宅政策の目標を掲げています。
@「安全で安心な暮らしの創造」
A「北海道らしさの創造」
B「活力ある住宅関連産業の創造」
 この目標を達成するため4つの政策推進方針と、住宅施策の進捗や目標の達成について評価する14項目の成果指標を設定しています。


■具体的な施策展開■
住宅セーフティネットとしての公営住宅の供給
 所得が低い。高齢者である。障がいを持っている。子育て世帯であるなど、様々な理由により住宅に困窮する世帯が増加傾向にあります。
 そのため、既存団地の建替やストック活用を図る改善を中心に、高齢者福祉や子育て支援といった福祉施策などと連携した総合的な住宅施策を進めています。
シルバーハウジング及び子育て支援住宅の整備
 高齢世帯や子育て世帯が安心して暮らせる住まいとして、シルバーハウジングや子育て支援住宅の整備に取り組んでいます。
 シルバーハウジングは、緊急時の通報システムを備えるほか、市町村と連携した生活相談サービス等を行うものです。平成20年度末現在で40団地995戸が建設・管理されており、今後も継続的に整備を予定しています。
 また、平成17年度に「北海道子育て支援住宅推進方針」を策定し、平成19年の根室市の子育て支援道営住宅「であえ〜る明治団地」(69戸のうち子育て支援住宅18戸)の整備を皮切りに、20年度末には全道で4団地48戸の子育て支援住宅が整備されています。道営以外の公営住宅や民間賃貸住宅でも導入されるよう、道営住宅での継続的展開のほか情報提供や技術的支援を行っていきます。
まちなか居住の推進
 道内市町村の中心市街地の多くは、郊外型大規模店の進出による購買力の流出などにより賑わいを失っています。
 そこで、地域の活性化や市街地の再編に寄与するため、道と市町村で「まちなか居住推進会議」を設置し、住宅供給のほか様々な施策との連携や、まちなかの生活利便の優位性を明らかにしながら「まちなか居住」の推進に取り組んでおり、市町村における借り上げ公営住宅など民間活力を活用するほか、道営住宅の再編整備にあたってもまちなか居住に取り組んでいます。
住宅におけるユニバーサルデザインの普及促進
 平成16年4月に道立北方建築総合研究所の協力を得て「北海道公営住宅等安心居住推進方針」を策定し、それ以後に整備した道営住宅は、すべての居住者が安心して生活できるユニバーサルデザインの視点にたった住宅づくりを進めています。平成20年度にはマニュアルを作成し、現在は市町村営住宅でも普及を進めています。


■更なる課題への対応■
 しかし、耐震強度偽装問題以降建築着工は低迷し続けており、今後は公共工事の減少も予想されることから道内の住宅・建築業界は非常に厳しい状況にあります。
 また、道内では高度成長期以降に大量に公営住宅が供給され、建築後35年以上経過した公営住宅は5万戸に迫ります。これらは建て替えの時期を迎えますが、財政状況は逼迫しており更新はなかなかはかどりません。耐久性や居住性を向上させる改善工事による長寿命化と既存ストックの再編整備が必要です。
 このほか、昨年、高齢者住まい法が改正され、高齢者の住まいのあり方が問われており、新たな政権が掲げるCO2排出量の大幅な削減も、住宅をはじめ民生部門の削減が欠かせません。
 さらには、地方分権により、公営住宅の入居収入基準や整備基準が地方公共団体に委任されることが予定されて、多様な住宅困窮者が増加する中、セーフティネットとしての公営住宅のあり方を再考する必要があると言えます。


■おわりに■
 国では、高齢者等が安心して暮らせる住宅セーフティネットの充実、リフォーム・省エネ化の推進、木造住宅の等の振興、住宅・建築物の安全安心の確保、住宅投資の拡大等などに対する施策を平成22年度予算で進めることとしています。
 また、市町村の住宅施策は、住民にもっとも身近な市町村が主体的に進めるべきものと考えますが、各市町村とも財政状況が厳しく、全ての課題、要請への対応が困難な状況も見受けられ、広域的・総合的観点から支援が求められていると言えます。
 平成22年度は北海道住生活基本計画の中間見直しに向けて検討を進める予定としており、これまでの住宅政策を一層充実させていくとともに、増加する新たな課題に対応するために、道民の皆さんや住宅・建築関連産業の皆さん、国や市町村、関係団体等と協働して対応を模索し、安全で安心な北海道らしい住まいづくりの実現に向けて、住宅政策を推進していきます。



札幌市道営住宅改善工事(光星第二団地B) 北広島市道営住宅改善工事 (泉町団地 D1号棟・D2号棟) 釧路市道営住宅改善工事(愛国団地 D11号棟) 旭川道営住宅改善工事(神楽岡ニュータウン団地74R1号棟)

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