建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2010年3月号〉
interview
自然環境に配慮した土木設計の提案
――十勝川に生息する天然記念物のオオワシ・オジロワシの魅力を伝える
アークコーポレーション 株式会社 代表取締役 伊豆倉 米郎氏
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伊豆倉 米郎 いずくら・よねお |
昭和37年11月25日 生まれ |
昭和60年 3月 日本大学 理工学部土木工学科 卒業 |
昭和60年 4月 地崎道路株式会社入社 |
昭和63年 3月 同社 退社 |
昭和63年 4月 株式会社伊豆倉組 入社 |
平成 3年11月 同社 常務取締役 就任 |
平成 5年 8月 アークコーポレーション株式会社 代表取締役 就任 |
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アークコーポレーション株式会社 帯広市東6条南7丁目20番地 TEL 0155-23-0660 |
建設会社の新分野進出を後押しする北海道の、建設業等経営革新の認定企業に選定された帯広市のアークコーポレーション株式会社を訪ねた。公共事業の調査、設計やそれに付随する広報、ソフト関連事業がアーク社の事業の柱となっている。近年の公共事業の縮減に伴い、事業の柱を再構築するために打ち出した新分野はネイチャーガイド事業。十勝におけるネイチャーガイド事業の多くは十勝地方北部がフィールドになっているが、十勝中央部や南部にも注目すべき自然資源に恵まれており、これらをネイチャーガイドツアーとして商品化し、十勝観光の活性化の一翼を担っている。
- ――アークコーポレーション社は、どのような経過で設立しましたか
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伊豆倉 国の環境大綱が大きく変わり、野生動物等の生態系を重視する多自然型工法が公共事業の主流になりつつあったので、伊豆倉組の別会社として平成5年に立ち上げました。大学の研究室等で生物を研究していた若手を2人採用してスタートしました。植物、鳥類等の生態系調査、自然環境に配慮した土木設計及びデザイン、環境アセスメント及びモニタリング調査、ビオトープ設計、環境教育活動等を事業の柱としています。
スタッフは自然保護団体で活動していた人材もいて、行政サイドから見れば一種の過激派かもしれませんが、かなりのスキルを持っています。開発局の多自然型川づくり事業を伊豆倉組が積極的に受注し、アーク社が伊豆倉組のシンクタンクとして生態系調査、設計を担当しますが、設計内容の変更を提案したこともあります。
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▲流水ビオトープ 施工直後 ▲流水ビオトープ 現況 |
- ――設立当初の状況は
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伊豆倉 官庁の指名入札に参加資格がなかったので、当初の3年間は赤字続きでした。人件費等で年間2,000万円の経費がかかりますから、伊豆倉組の下請だけではなかなか賄えませんでした。
- ――軌道に乗り始めたのは
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伊豆倉 設立から3、4年後だったと思いますが、開発局が十勝川流域全体の空間利用に関する調査をお手伝いしたのが契機となり、平成11年に建設コンサルタント業として登録し、翌12年には測量業者登録を行い、今日に至っています。
平成9年の河川法改正に伴い、従来の治水、利水のほかに環境が加わったのが転機となり、わが社のような建設コンサルタント業務の必要性が高まってきたのです。河川工事等の構想・計画段階で生態系等の自然環境調査を行い、保全対象の生物を明確にした上で、多様な生物が生息する自然環境を保全・創出する施工計画を提案します。また、施工後には追跡調査を実施し、その成果も生かして新たな工法の提案を行います。
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▲十勝川タンチョウ |
- ――これまでの代表的な施工は
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伊豆倉 多自然型工法が採用された下頃辺川護岸工事は、伊豆倉組としても初めての経験でした。工事は平成4年から8年まで続き、河を蛇行させて中州や浅瀬を造り、開発局の優良工事施工業者表彰を受賞しました。鳥や魚、植物の数は従来の矢板護岸より明らかに多くなり、自然景観も良くなったのです。
すでに10数年にわたり環境調査のデータを蓄積しており、環境保全の視点に立って具体的な施工方法を提案できるのが最大の強みになっています。シンクタンク機能と実際の施工の機能をどう融合させて、良いものを造るかが私の役目だと思っています。
十勝川の下流にはタンチョウが飛来しますが、川が結氷すると越冬できません。しかし、最近では冬でも十勝川で見かけるようになってきたため、越冬できる方法はないか、いろいろと模索しているところです。
- ――観光分野にも参入しますね
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伊豆倉 公共事業が削減されれば、アーク社の環境調査の受注も連動して減少します。そこで、自然環境に関するノウハウ、データを生かすためにも観光の分野も視野に入れた取り組みを検討した結果、十勝支庁に経営革新補助金を申請しました。
20年度からガイド商品企画等の担当者1名を配置、21年度は十勝ネイチャーセンターとの共同開催でワシ観察クルーズやバードウオッチングツアーを行い、旅行代理店やマスコミの関心を集めました。
また、昨年12月には十勝川温泉観光協会と連携し、十勝川に生息する天然記念物のオオワシとオジロワシの魅力を伝える「十勝川ワシフェスタ」を千代田新水路付近で開催、わが社はボランティアでガイドを派遣しました。
十勝川下流域は渡り鳥の中継地です。当社の社員が日本野鳥の会十勝支部の役員になっていることもあって5年前からエコツアーを開催したところ、参加者は沖縄や東京からも来ました。こんなにニーズがあるなら、一つの産業になると感じました。
今年も引き続き新規商品の開発と販促活動を継続し、既存体験型観光事業者との共同実施やガイドの派遣を行うとともに、自社主催商品の直接販売により利益率の向上を図っていきます。23年6月期の売上高は600万円、24年6月期は900万円を見込んでいます。
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▲十勝川ワシクルーズ |
▲オオワシ |
会社概要 |
創 業:平成5年8月2日 |
建設コンサルタント登録:建21第6428号 |
測量業者登録:第(3)-23557号 |
資 本 金:1千万円 |
主要取引先:北海道開発局、北海道 |
東京営業所: |
東京都北区東十条2丁目3番7号 ハイツデイライト505 |
TEL 03-5390-3254 |
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