建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2010年1月号〉
寄稿シリーズ
「土木の最前線から」
〜函館土木現業所・網走土木現業所編
温暖な道南地区で進む災害対策と交通インフラ〜函館土木現業所
●落部漁港地域水産基盤整備工事1工区 松本・菅原・田中 特定建設工事共同企業体 所長 吉成 勝樹氏
●茂辺地インター線 改良工事 1工区 山田・草野 特定建設工事共同企業体 現場代理人 西谷 和洋氏
●磯谷川通常砂防工事1工区 株式会社 折谷組 現場代理人 主任技士 高橋 良司氏
世界遺産の知床を生かしたオホーツク圏のインフラ整備〜網走土木現業所
●小石川広域河川改修工事 安田・山洋・吉井経常建設共同企業体 現場代理人 加藤 憲雄氏
●オホーツク流氷公園整備事業遊戯施設整備工事外 五十嵐・タカハタ経常建設共同企業体 現場代理人 伊藤 優治氏
●大観山公園線 改良工事 岩田地崎・早水・水元 特定建設工事共同企業体 現場代理人 佐藤 俊一氏
●雄武地区(雄武漁港)広域漁港整備工事(特定) 勇・島田・水元特定建設工事共同企業体 現場代理人 柿崎 真氏
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▲小石川広域河川改修工事 落差工生コン打設状況 |
道南圏を所管する函館土木現業所は、災害に強い地域づくりを目指しており、土砂災害対策や安全性の強い交通ネットワークの整備が進められている。主要事業としては、災害対策は磯谷川通常砂防工事などが行われており、高速交通ネットワークでは茂辺地インターチェンジ、産業インフラでは落部漁港の整備が最盛期となっている。
世界遺産の知床を擁するオホーツク圏を所管する網走土木現業所では、安全性に配慮しつつ観光振興を視野に入れたインフラ整備が進められている。大観山公園線の改良や小石川の広域河川改修のほか、産業インフラでは雄武漁港を中心とする雄武地区の広域漁港整備が行われ、また「流水を望み潮騒が聞こえる大いなる風景緑豊かな公園づくり」をテーマにしたオホーツク流氷公園では、遊戯施設の整備も行われている。
落部漁港地域水産基盤整備工事
落部漁港地域水産基盤整備工事1工区 松本・菅原・田中 特定建設工事共同企業体 所長 吉成 勝樹氏
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▲高矢板の打設 |
▲-3m岸壁建設 |
私たちは落部漁港地域水産基盤整備工事1工区の施工を担当しています。これは水産物資源の持統的利用と、良質な水産物を安全で効率的に供給する体制の整備が目的で、陸揚作業や出漁準備作業の待ち時間解消のために、係留施設や作業用地の不足を補うものです。これらを解消し漁獲物の品質向上や品質管理の改善が図られることが期待されているので、その効果が確実に得られるよう確かな施工に心がけて取り組んでいます。
工事概要 |
東護岸 L=15.0m |
上部工(胸壁) L=15.0m |
消波工 L=15.0m |
南護岸 L=75.0m |
基礎工 一式 |
被覆・根固工 L=75.0m |
上部工(胸壁) L=75.0m |
ー3.0m泊地 |
A=19,000u |
V=11,600m3 (純土量) |
撤去工 一式 |
ー3.0m岸壁 L=139.4m |
鋼矢板式本体工 L=139.4m |
上部工 L=130.0m |
裏込・裏埋工 L=137.0m |
付属工 一式 |
用地 A=7,980u |
陸上部盛土 V=11,700m3 |
水中部盛土 V=29,600m3 |
打止工 一式 |
構造物撤去工 一式 |
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茂辺地インター線 改良工事
茂辺地インター線 改良工事 1工区 山田・草野 特定建設工事共同企業体 現場代理人 西谷 和洋氏
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西谷 和洋 にしや・かずひろ |
昭和27年 4月 13日生まれ |
昭和51年 3月 北見工業大学土木工学科 卒業 |
職歴 |
昭和51年 4月 株式会社 山田組 入社 |
平成16年11月 道央圏連絡道路 江別市篠津川北改良工事 |
平成17年 8月 夕張シューパロダム 道道付替下夕張工区外工事 |
平成18年 9月 阿野呂川総合流域防災工事(阿野呂地区)2工区 |
平成19年12月 3・4・102 14号東通 踏切除却工事その3 |
平成20年 7月 石狩川改修工事の内 中村農場築堤河岸保護工事 |
資格 |
昭和55年 5月 衛生管理者 |
昭和57年 3月 1級土木施工管理技士 |
平成16年 2月 指定建設業監理技術者 |
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▲アンカー・PC法枠工 |
当工事は、国道228線と函館・江差自動車道の茂辺地インターチェンジとを連絡する道道茂辺地インター線の工事です。
当工事区間の構成地質は、新第三紀中新世の茂辺地川層(細粒砂岩)より構成され、又基盤岩は海水変動の侵食による谷地形であり、他に地形を第四紀完新世の沖積低地堆積物(礫質土、砂質土、粘性土層)が分布する。
工期は、平成21年6月9日〜平成22年3月19日の予定です。
主な工事内容は、軟弱地盤対策工法の深層混合攪拌工(CDM工法)N=522本とサーチャージ盛土V=9620m3、法面保護工の逆打工法でのグランドアンカー工N=181本と連続繊維補強土工(ジオファイバー)t=50p A=985uです。
当現場は、住宅地に近接し又自然林の中での施工ですので、動態観測管理により環境への負荷を軽減しつつ、自然と調和した緑を再生すべく環境保全に努めています。
工 事 名:茂辺地インター線改良工事1工区 |
工事内容:工事延長L=522m |
切土V=13,100m3 |
盛土V= 9,620m3 |
地盤改良工 固結工 N=523本 |
法面工 連続繊維補強土 t=50cm、A=985u |
PC法枠工 N=181基 |
アンカー工 N=181本 |
U字側溝L=686m(U-240〜U-600) |
工 期:平成21年6月9日〜平成22年3月19日 |
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磯谷川通常砂防工事
磯谷川通常砂防工事1工区 株式会社 折谷組 現場代理人 主任技士 高橋 良司氏
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高橋 良司 たかはし・りょうじ |
経歴 |
昭和37年 1月15日生まれ |
昭和55年 3月 北海道立上磯高等学校卒業 |
平成14年12月 株式会社折谷組入社 |
平成17年 3月 南茅部大船1急傾斜地工事2工区 |
平成18年 8月 八幡川火山砂防工事2工区 |
平成19年10月 八幡川火山砂防工事 |
平成20年12月 久根別川広域基幹改修工事4工区 |
資格 |
平成 4年 3月 1級土木施工管理技士 |
平成18年11月 監理技術者資格者証交付 |
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▲鋼製スリット組立状況 |
▲現場塗装・防寒養正 |
当工事は、北海道函館土木現業所発注の砂防工事です。
函館市の太平洋側、旧南茅部町の磯谷川で磯谷川1号えん堤の施工をしています。
平成19年10月より工事用道路施工から始まり、磯谷川1号えん堤は平成20年7月から施工し今年で2年目を迎え、施工業者4社で作り上げた砂防えん堤が平成22年3月に完成する予定です。磯谷川1号えん堤は提高11.0m 提長69.0m 貯砂量36,000m3で鋼製スリット2基(H10.0m L=24.0m W=8.0m)を設置します。
鋼製スリットは格子型砂防えん堤で、株式会社神戸製鋼所の製品を使用し組立施工しています。組立後の塗装・コンクリート打設が冬期に向かっての施工になるため、防寒養生囲いで品質管理を十分に行い、基準値以上に施工していきます。
10年程前に磯谷川で大雨が降った時の土石流は、国道橋の桁下まで達し、河口には土砂が堆積し小島が出来たほどの災害だったそうです。旧南茅部町地区は一次産業の漁業が町の支えであり、昆布が全国・全道でも有名であり死活問題に成りかねません。又、河口・国道付近に民家が集中してい るので市民の安全を守るお手伝いをしている実感があります。
当該えん堤は、業者4社で継続しながら施工してきて3月に完成を予定しています。これから冬期に入るので、発注者のご指導を頂きながら無事故での工事完了を目指します。
工 事 名:磯谷川通常砂防工事1工区 |
工事内容:鋼製スリットえん堤 L=45.10m |
本堰堤工:コンクリート V=569m3 |
護床工:巨石張 A=164u |
鋼製スリット組立据付 N=1基 W=66.1t |
コンクリート V=151m3 |
工 期 :H21.7.14〜H22.3.1 |
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小石川広域河川改修工事
小石川広域河川改修工事 安田・山洋・吉井経常建設共同企業体 現場代理人 加藤 憲雄氏
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▲河川掘削状況 |
▲河川掘削・運搬状況 |
私たちは小石川広域河川改修工事の施工を担当していますが、これは過去の降雨などによる河川水氾濫防止のため、新河川切り替えを行う工事です。常呂川水系小石川は、北見市北部に源を発し、北見市街地を流下して常呂川に合流する流域面積12.2ku、流路延長9.9qの1級河川ですが、北見市の市街地部において暗渠となっており、流下能力不足していたために、昭和63年や平成4年などに家屋や農地の浸水被害が頻発しました。
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▲落差工生コン打設状況 |
現況においても、小石川は北見市の中心市街地を流れており、現川成りの河川改修ではなおも市街地に大きな影響を及ぼすことから、上流部で新水路を掘削して市街地部を迂回し常呂川に合流させることが計画されました。
それに基づき、平成6年に事業着手され、平成30年の完成を目標に整備が進められています。整備にあたっては、「豊かな自然とうるおいあふれる水辺のある暮らしを目指して」をテーマに、親水空間の創出、散策路の整備など北見市の街づくりと一体となった整備が目標となっているので、その計画を着実に実現できるよう、私たちは確かな施工を進めています。
施工延長 L=475m |
掘削工 L=545m V=25,200m3 |
護岸工 L=184m A=1,232u |
落差工 1基 |
管渠工 1基 |
舗装・路盤工 1式 |
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オホーツク流氷公園工事概要
オホーツク流氷公園整備事業遊戯施設整備工事外 五十嵐・タカハタ経常建設共同企業体 現場代理人 伊藤 優治氏
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▲あおぞら交流館(公園管理事務所・多目的ホール) 外観 |
はじめに
北海道立オホーツク流氷公園は全道で11番目の道立の広域公園で、オホーツク圏の紋別市に位置します。「試みて進化する広域公園〜流氷を望み潮騒が聞こえる大いなる風景 緑豊かな手づくり公園」をコンセプトに平成14年度から事業を開始、平成21年11月15日に一部開園し、平成25年度に全面開園を予定しています。みんなでつくり、まもり、そだて、みんなが愛着をもてる公園を目標に掲げ、設計段階から計画づくりに住民が参加、ワークショップを開催するなど地域密着型、住民参加型の公園として新たな試みをもった公園です。
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▲ジャンプ山全景 |
▲竪穴式遊具(完成予想図) |
工事概要
当現場の主体工事は大型屋外遊具2基で、「ジャンプ山」はトランポリンを山型にしたような遊具で表面を覆う膜の中に地中より空気を送風して膨らまし、その上を飛んだり跳ねたり滑ったりする人気のある遊具です。「竪穴式コンビネーション遊具」は紋別にあるオムサロ遺跡に関連し竪穴式住居をイメージした複合遊具で、ネットのジャングルジム、ハンモック、遠くの声を集めるパラボラ遊具など学びながら楽しく遊ぶ園内一の大きな遊具です。両遊具施設とも平成22年8月に開園予定です。
おわりに
自身初めての公園工事であり、多様な工種と特殊な品質特性、複雑な遊具形状や遊具の安全基準など数多くの要求事項・配慮事項・協議事項に対し、発注者の指導やメーカーの助言、及び協力会社の力を借りて現在に至ります。「子供たちが安全に楽しめる遊具をつくる」と言う基本理念を柱に現在も現場作業は進行中です。今回、道立公園の整備事業という数少ない機会に携わることができたが、土木技術者としての知識・経験以上に発注者の要求事項の意味と役割を踏まえた上での現場施工、技術提案力が必要だと強く思います。
大観山公園線 改良工事
大観山公園線 改良工事 岩田地崎・早水・水元 特定建設工事共同企業体 現場代理人 佐藤 俊一氏
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▲法面施工 |
私たちは大観山公園線改良工事の施工を担当しています。宅地化が進む網走市潮見地区と網走市街を結ぶ道道中園網走停車場線は、近年は渋滞が著しいため、本路線の未開削区間である錦町から潮見までのL=1,970m区間を整備し、全線供用を図ることにより、道道中園網走停車場線の交通緩和と歩行者の安全を確保するのが目的です。事業期間は、平成15年度から平成23年度までの予定で、着実な施工に心がけています。
道路土工 V=26.930m3、植生工 A=6.300u |
工事延長 L=263.4m、幅員 W=6.0+3.5m |
PC法枠工(プレキャスト受圧版)、 アンカー工(PC鋼より線) |
補強土壁工 A=44u、 排水工(U型側溝工・雨水桝・集水桝・導水管) |
地下水排除工 L=285m、 鋼橋現場塗装工 A=325u |
橋面防水工・橋面舗装工(新光橋・西山橋) 1式 |
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雄武地区(雄武漁港)広域漁港整備工事(特定)
雄武地区(雄武漁港)広域漁港整備工事(特定) 勇・島田・水元特定建設工事共同企業体 現場代理人 柿崎 真氏
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▲西護岸上部工事 |
▲泊地浚渫工事 |
私たちは雄武地区(雄武漁港)広域漁港整備の工事を施工しています。雄武漁港は昭和27年に第2種漁港として指定されて以来、ホタテ桁曳き網漁業、サケ・マス定置網漁業、ケガニ篭漁業などを営む地域沿岸漁業の漁業基地となってきました。
ところが、最近は漁港内作業用地が不足し、ホタテ養殖作業と一般漁業作業が競合して生産効率が低下していることから、岸壁、作業用地を整備して改善することになりました。この施工によって作業スペースが確保され、作業効率が改善し、作業安全性も改善されるほか、港内における効率的な物流の確保と、漁港背後に整備中のHACCP対応の加工施設などとの連携による衛生管理体制の確立などが期待されているので、私たちも計画に忠実な施工を心がけています。
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