建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2009年12月号〉

interview

解体現場で骨材再生
パリで開催された国際見本市で環境対策(コスト削減)で高い評価

――NETIS登録の再生クラッシャーラン採用で工事成績評定加点対象に

株式会社 古垣建設 代表取締役 古垣 恒次氏

古垣 恒次 ふるがき・こうじ
昭和28年10月16日生まれ
昭和52年3月 中央工学校土木建設科 卒業
昭和53年4月 株式会社 附田組 入社
昭和58年4月 株式会社 古垣建設 入社
昭和64年4月 同社 代表取締役 就任
株式会社 古垣建設
北海道余市郡余市町入舟町126番地
TEL 0135-22-5578

 北海道後志管内余市町に本社を構える中堅の建設会社から世界的なヒット商品が生まれた。その名も「再生クラッシャーラン製造工」。大阪の機械メーカーとの共同開発。建設重機に取り付けた脱着式のバケットでコンクリート塊や岩石を砂利のように細かく砕き路盤材などに再利用できる秘密兵器だ。昨年8月に建設業等の新分野への進出を後押しする道の「新一村一雇用おこし支援事業」に認定されたほか、国際舞台にもデビュー。今年4月にはパリで開催された国際建設機械見本市に出展し、国交省の新技術情報提供システムNETISにも登録された、株式会社古垣建設の古垣恒次社長に再生クラッシャーラン製造工誕生の秘話を聞いた。

――会社の生い立ちからお聞きします
古垣 父(古垣寅吉)が昭和47年に余市町で創業しました。父は北海道庁の技術職員でした。わたしが生まれた昭和28年、移籍先の北海道開発局(北海道開発法が制定され、昭和26年7月1日に道から局への移動人事発令)を辞め、両親の面倒を見るために余市町に戻り、余市町役場に入りました。建設課の課長補佐で退職し、現在の古垣建設を立ち上げました。  長年公務員だったのが民間企業を興したわけですから、何かと気苦労が多かったと思います。昔気質の父ですから。確か私が高校3年の時だったと思います。  私は余市高校から専門学校の中央工学校土木建設科に進み、卒業後は札幌市の測量会社に1年、土木会社に5年お世話になり、58年に古垣建設に入り、64年に父の跡を継ぎました。
――当時は公共事業の発注量が多かった時代では
古垣 いい時代でした。私は社長兼技術職として、現場を飛び回っていました。会社を経営している実感は持てました。経営に何の不安もありませんでした。  今は1ヵ月先すら読めません。公共事業の受注額は、元請としてはかつての半分以下まで落ち込んでいます。
――厳しい時代ですが、会社として重点的に取り組んでいることは
古垣 36人の社員の雇用を守ることです。給料は下げない、リストラもしない。その代わり何でも事業として取り込もうという方針でいます。いままで経験したことのない仕事でもやってもらう。それが可能な会社の規模ということもあり、6年前からその方針で臨んでいます。
――そのひとつが「暮らしのパートナー」事業ですね
古垣 暮らしのパートナーは各種代行サービスです。庭の手入れからお墓の清掃、旅行時のペットの世話、ハチの駆除等のサポートを行います。少しずつ地元に浸透しており、数千円から1、2万円程度も含め、年間100件程度のご注文があります。  私は社員の意識改革が狙いです。公共事業だけでは経営が成り立たないので、地元に必要とされる企業にならないとやっていけません。お墓までの山道を背負ってほしいとか自宅2階の窓ガラスを拭いてほしいとか、高齢化を実感させられることがあります。
▲パリで開かれた国際建設機械見本市「INTERMAT2009」
▲再生クラッシャーラン製造工(脱着式)アタッチメント前面 ▲古宇川神恵内村道単改修工事 H21.9 小樽土木現業所発注
――大阪の機械メーカー「ウエダ産業」と共同開発した「再生クラッシャーラン製造工」が建設業界等で注目を集めています。 コンクリート塊を解体工事現場で路盤材に再生する破砕バケット。昨年8月、新分野への進出を後押しする道の「新一村一雇用おこし支援事業」にも認定されています。国交省の新技術情報提供システムNETISに登録されたほか、今年4月にはパリで開催された国際建設機械見本市にも出展し、目覚しい活躍ぶりです。この「再生クラッシャーラン製造工」の誕生した経緯は
古垣 コストダウンが最大の目的です。例えば民間ビル等の解体工事の見積りを出しても、いつも価格で負けていました。中間処理施設を抱えている他社に勝てるにはどうしたらいいか考えた結果、コンクリート塊は産業廃棄物として出さないで現場で再利用しようという発想です。  1号期を試作したのが今から2年3か月前で、現在は、5号機まであります。0.7m3級バックホーの先にバケットクラッシャー(骨材製造アタッチメント)を取り付けることで骨材製造機械に早変わりします。バケット内の鋼鉄製の破砕刃が動き、コンクリート塊や大きな岩石を2cmから9cmに砕くことができます。バケット口の大きさは縦55cm、横70cm。1時間あたり10tから20tの破砕能力があります。
▲2009建設リサイクル技術発表会・技術展示会(優秀3展に選出された)
――国際見本市での反響は
古垣 反響はすごかったです。破砕力、振動、騒音等の性能面では世界のトップクラスと自負しています。約150社から見積りの依頼がありましたが、何しろ円高の影響もあって価格面で折り合いのつかないケースもありました。当面は国内でもっと普及させることに力を入れていきます。道内ではリースを中心に公共工事や民間の解体現場で採用され、苫小牧港や十勝支庁農業農村整備事業等で活躍しており、期待どおりの成果を上げています。これからはリースの件数を増やしていきたいものです。  10月27日に札幌コンベンションセンターで開催された「2009建設リサイクル技術発表会・展示会」では、優秀展示に選ばれ、11月2日から6日まで開発局が入居している札幌第一合同庁舎ロビーで製品紹介のパネル展示がありました。関係機関のご協力を得て、バケットクラッシャーの認知度を高めたいと思っています。取扱い件数はこの1年で3倍ほど伸びています。
――どんな現場に最も適していますか
古垣 一定の用地を確保できる河川とか港湾が適しています。
――道は「北海道建設産業支援プラン」を策定し、「活力ある建設業の再生」に向けて建設業の経営の改革を支援する事業を推進しており、古垣建設の取り組みを新分野進出のモデル事業として評価しているようです
古垣 先般も後志支庁の21年度建設業等新分野進出ステップアップ・ゼミナールが、余市町の破砕アタッチメント施工現場で開催され、破砕アタッチメントのリース事業などについて講師として説明する機会がありました。
――地球温暖化防止対策として温室効果ガス排出量の削減が大きな課題になっています。官需の減少と民需の新設から維持・補修へのシフトに対し、建設産業の貢献が期待されていますが、再生クラッシャーラン製造工で環境対策に風穴を開けたといえるのでは
古垣 余市に住んでいても地球の温暖化をひしひしと感じています。河川が凍ることもなくなり、最近では特産物のブドウの棚を降雪前に地面に降ろすこともめっきり減りました。コンクリート塊は建設副産物として、道路の路盤材や基礎材などの再生骨材になる有効な資源であることを皆さんに訴えていきたい。新素材の調達コストに比べても安価で、コンクリート塊を中間処理場に運搬して処理する必要もありませんから、トラック輸送時の二酸化炭素排出量が三分の一程度に抑えられます。これからの建築物は新しく整備するよりも既存施設の改築、建て替えが主流になるでしょうから、そのたびにコンクリート塊を産業廃棄物として処理するのであれば膨大なコストがかかります。

会社概要
設立:昭和48年4月24日
業種:土木、とび・土工、舗装、建築、管、造園
建設業許可:北海道知事許可(特-19)後 第00210号〈土木、とび・土工、舗装、建築〉
        北海道知事許可(般-19)後 第00210号〈管、造園〉
資 本 金: 20,000,000円
従業員数:36人(役員3人、技術系32人、事務系2人)
主要取引官庁及び当社の格付:国土交通省  一般土木工事 D
                     北海道建設部 一般土木工事 C
                     余市町      土木工事    A


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